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髪が伸びるのが早そうな名前

「うおぉおおお!殺せー!ノブナカぁあああ!!近代兵器の力を見せろぉおおおお!!!」


「カーァ、カッカッカッ!儂に勝つなど人の身では1000年早いわ!」


今俺がやっているのは幻想歴史アクションRPG「ノブナカの野望」。

戦国時代にタイムスリップした主人公が日本制覇を目論むゲームだ。


舞台が戦国時代の日本なのにドラゴンや戦車まで登場し、レベルの概念があるのに戦闘はアクションゲーム、


その上対戦も可能という詰め込みすぎて壊れた伝説のクソゲーだ。

俺はこのゲームをアシュ〇マンのような笑い声をあげるチビ助とやっていた。


始めは同じ世界からきたキョウカとやろうとしたのだが、ヤダ!の一言で一蹴されたので、興味を示し日本語を理解しているチビ助とやる事にしたのだ。


このゲームの酷いところは基本国盗りゲームなのに、攻め入るとボスを倒すまでに最大3ステージのアクションゲームを行い、その後ボスとの格闘対戦に入るというわけの分からないゲームシステムにある。


おまけにその3ステージの課金による自由度の高さが酷く、ボス戦に行くまでに相手の心をへし折るには十分な仕様となっている。

そして、このゲームでは主人公はRPGの要素でレベルアップできる。

当然これは相手も同じでアクションゲームをクリアしても、とんでもない強さのボスが待ち構えているのである。


ただ、アクションゲームの苦手な人への救済措置としてゲームを有利に進める特殊兵器をMPを使い召喚出来る。


今、俺はチビ助の領土に攻め入ったのだが、いきなり落ちゲーのテロリスが始まり、主人公が押しつぶされそうになったのを特殊兵器のガトリングガンで粉砕しているところだ。


「くそっ!どうすりゃ、クリア出来るんだ!」


落ちてくるブロックのスピードと数が増えてくる。


「だ、だめだぁああああ!!!ぎゃああああああ!!!俺のLv99ノブナカがぁあああ!!」


「クックックッ、弱者の癖に儂に逆らうからじゃ。」


くそー、流石3年連続で伝説のクソゲーに選ばれただけはある。

最大レベルにまであげたノブナカがあんなにあっけなく死ぬとは・・・。


鬼畜仕様のオートセーブが始まった。

一週間かけてコツコツレベルを上げたのに一瞬でパーだ。


「どうじゃ。参ったか?」


「参るわけねーだろ!休憩だ!休憩!」


「勝手に休憩しとけ。儂も勝手にやっとるぞ。」


夢中でゲームに興じるチビ助以外はボードゲームが最近お気に入りだ。

一番人気はリバーシーだが子供組だけ特殊ルールが採用されている。

双子の場合はどこにでもコマを置けるだけだが、座敷童の場合はそれプラス好きなコマを2つひっくり返せるのだ。

これにより、リバーシーの王者は不動で座敷童となっている。

それ以外の勝率は1位はリアだが2番手は意外な事にミーシャだ。

長考するといい手を打つので地頭は悪く無いのだろう。



俺は大部屋の昼寝ポイントに来てスライムを枕に昼寝する事にした。

普通は夜寝るとHPが回復するのだが、我が家では夜寝ても回復するどころか俺のHPが削れる事が多い。

大体3割の損傷率なので、昼寝で効率よく回復するのだ。


俺が寝ているとスライム達が集まって体の下に潜り込みウォーターベッドの様になってくれる。

ありがとう、だが、ポイズンスライム!

貴様は俺の顔に近づくんじゃねえ!


この階層は昼寝用に室温20度で微風が吹くように設定してある。

春の陽気のような感触にウトウトしていたら、いきなり口の中に何かを入れられた。


「ン!ガァ!」


驚き目を見開くと苦笑するリアと仁王立ちの座敷童。


「飴です。食べても大丈夫ですよ。」


リアに言われて口の中を探る。

甘い、確かに飴玉のようだ。


「座敷童ちゃんが寝ているご主人様に飴を食べさせちゃったんです。」


「そうか・・・ありがとな。」


座敷童の頭を撫でると共に観察すると右手に飴玉を握りしめている。

左手を見ると小さい手がベトベトだ。


「・・・名前・・・皆で相談して付けてやってくれ。無いと不便だろ・・・。」


「はい!じゃあ皆で相談して決めますね。よかったね。名前もらえるって。」


リアが座敷童をあやす様に抱っこして横に退くと、その後ろに双子が並んでいた。


「食。」


「飴。」


2人で右手を顔にむかって突き出してくる。

持っているのは飴玉だ。

ぐいぐい押し付けられる圧力に負け口に含むと、薄い胸を張って直立不動だ。

なんだ、触れってことか?

ロリコンじゃ無いんで普通に嫌なんだが・・・。


「褒めてもらいたいんですよ。」


リアからフォローが入った。

危なかった。

人として命ごと終わる可能性があったぞ。


「ありがとう。」


頭を撫でると、どことなく満足そうな気配を出す。


「リア達は何してんだ?」


「お散歩ですかね。ずっと部屋にいるとこの子達も退屈でしょうし。」


最近あまり遭遇しないと思ったら、リアの調教部屋に入り浸ってるのか。


「薬。」


「魔乳。」


「ん。」


こいつら時々人を不安にさせる言葉吐くよな。

俺が無反応でいるとリアが笑いながら助け船をだしてくれた。


「え・・・と・・・胸を大きくする薬を作りたいみたいなんですよね。」


「そんな薬あるのか?」


「あ~無いですね・・・。」


ついにあらぬ妄想に取りつかれたか。

双子達が魔乳につられて裏切らないか気をつけなくては・・・。

だが、これで諦めるまでは大人しくなるはずだ。


「頑張れよ。」


双子の頭を撫でて激励する。

応援するのは無料だ。

それが無理だと分っていてもな。



「お主等何をしておる。儂に言ってみろ!」


現在迷宮で一番の危険人物がやってきた。

やたら機嫌がいいな。


「ゲームはどうした?諦めたか?」


「ふん!お主と一緒にするでないわ!あと数カ国は残してるが、もはや儂の勝利は間違いない。」


そっくり返って笑うチビ助を見て思う。

知らないんだな・・・。

最後の1カ国になると制圧した他国が次々と裏切り始める事を・・・。

そのため、クリア不可のクソゲーと言われてるのを・・・。

伝説にまでなったクソゲーは伊達じゃない!


「そうか、頑張れよ。ところで家賃寄こせ。」


「な、なんじゃ藪から棒に。」


「家賃が駄目なら飯代寄こせ。」


「・・・なるほどの~・・・儂に負けたのがそんなに悔しいか。」


ピロピロ踊りだして俺を煽るチビ助にイラッとする。


「いいから何か寄こせ!」


「ふん!ならばこれをくれてやろう!」


懐をゴソゴソ探って取り出した紙をひらひらと地面に落とした。


「拾うがよい。」


「この、クソチビー!!!」


キレて追いかけ回したが捕まえる事は出来なかった。

いや、正確にいうとブチ切れてチビ助を追い回す俺がキョウカに捕まった。

そして、恒例の正座が始まる。

キョウカの説教をくらう俺のまわりでミーシャは笑い転げ、シスとリアは苦笑し、双子とアリスは無表情のジト目で見て、チビ助はキョウカの後ろに隠れて笑っていた。


その後、リアが座敷童の名前を決めるという事を言いだし、話をそらしてくれたので俺は解放された。


「あんた、次はこのくらいじゃ済まないからね!」


痺れた足でヨロヨロ立ち上がる俺にキョウカの恐ろしい一言が突き刺さる。


「ご主人様、これを・・・。」


リアが何か渡して来た。

チビ助が落とした紙切れだ。

なんだ、こりゃ?

金銀のピカピカした感じの映画のチケットみたいな紙で訳の分からないミミズのような文字?がのたくっている。


「名前決まったわよ~!」


はや!井戸端会議が始まって1分も経ってないぞ!


「名前はお菊!今日からこの子はお菊ちゃんよ!」


「それって皿屋敷の幽霊の名前か?」


「お菊人形のお菊よ!ほんと馬鹿なんだから!」


お菊人形も髪が伸びるホラーなやつじゃなかったけ。

なんか髪が伸びるの早そうな名前だな。

だが、本人も日本人形みたいだしいいだろう。

後の問題はこの紙切れだ。


「おい!チビ助!この紙切れはなんだ?」


「ふふん!無知とは罪じゃな。それは至高のガチャチケットじゃ!それを使えば儂らが捕まえた英霊の魂のコピー人形が手に入るのじゃ。」


「英霊のコピー人形ってなんだ?」


「英霊とは太古の昔から歴史に名を刻みし者達じゃ。儂等はそれをいくつか捕まえてある。

コピーはコピーじゃ。本物の魂を宿すわけにはいかんから、コピーした魂を特殊なゴーレムに宿しているのじゃ。」


「強いのか?」


「当たり前じゃ!すんごく強いぞ!」


う~ん、歴史に名を刻みしってのが気になるな。

伝説レベルの殺人鬼とか出てこないだろうな。


「俺のいう事ちゃんと聞くのか?」


「お主の迷宮じゃからの。聞くに決まっておる。」


「初めに言っておくが伝説レベルの殺人鬼とか狂った科学者が出てきたら、お前を追放するからな。」


「何故じゃ?何が出ようが戦力アップは間違いないのじゃ!横暴じゃ!」


騒ぐチビ助を無視してキョウカとミーシャを呼ぶ。


「あんた、なにすんのよ。」


「これから特殊なガチャを引く、おかしなのが出てきたら合図するから消し飛ばしてくれ。」


「おもしれー!あたいがやってやんよ!」


2人を後ろに控えさせガチャを起動させる。

チケットの使い方が分らなかったが、持っていると消えて英雄ガチャと表示されたガチャになった。

英雄と表示するなら殺人鬼とか入れとくなよ!

見ていると勝手にガチャが動き出し、カプセルを輩出した。

出てきたカプセルは虹色だ。


割れて煙が出るかと思ったらポンッという音と共にそれが実体化した。

銀色に輝くツルリとした人型で手に日本刀を持っている。


マズイ!辻斬りの類じゃないだろうな。

俺が後ろに下がろうとすると、その人型は刀を置き正座し深々と頭を下げた。


「おい!なんだ、こいつは!」


声を張り上げると鑑定しろとチビ助が声をかけてくる。

忘れてたわけじゃ無いぜ。

久々の鑑定だ!



名前:真里谷円四郎

種族:ミスリルゴーレム

職業:刀神Lv1

年齢:0

称号:極めしモノ

HP:62000

MP:28000

スキル:身体能力向上、回避、当身Lv4

固有スキル:状態異常無効、真刀術

特殊スキル:不敗




なんだ、こいつ・・・色々おかしいぞ。

種族がゴーレムなのに職業が神ってどういうことだ。

名前からして日本人だが、このキラキラネームみたいな名前って・・・。

あれっ?こいつって架空の人物か?

そもそも、なんでこいつだけ漢字なんだ。


スキルは6つしかないが1つおかしいのがある。

不敗って・・・。


「お、おかしなスキルをもってるぞ。これって・・・。」


「だから、鑑定すれば良いのじゃ。」


チビ助からの叱責が飛んでくる。

やめろ、俺が残念な子みたいじゃねーか。



不敗

・1対1の戦いになると、相手の攻撃を全て無効に出来る。

・1対1の戦いになると、攻撃に必中効果がつく。

・絶対切断能力をもつ。


うわーっ・・・酷い、幼稚園児が考えたようなスキルだ。


「うえっ!なによこれ!」


どうやらキョウカも鑑定したようだ。

ミーシャが不思議そうに首を傾げている。


「おい!チビ助!こいつ架空の人物だろ!何故魂を持ってるんだ!」


「馬鹿を言うな。お主が知らぬだけで、ちゃんと元は生きた人間じゃ!」


この名前でか・・・。

苦労してそうだな・・・。


「よし!立て!え~と、マ・リ・ヤ・エン・シロウ・・でいいのか?長いから今日からお前の事をエンと呼ぶぞ。」


刀を手に立ち上がった姿は何となく武士っぽい。

こうして我が迷宮の仲間に武士っぽいゴーレムが加わった。



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