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倒れるときは前のめり

「あんた、こんな本持ってた?」


キョウカが俺の部屋の本棚に刺さっていた本を抜き取り聞いて来た。

その本の題名は「金属材料の本」。


「ああ、ゴーレム作る時に買ったんだ。」


エロ本が見付かった子供のようにドキドキしながら言い訳を返す。

昨日買ったばかりの本をいきなり見付けるとは目聡い奴だ。


「まさかとは思うけど、また作ろうとしてないよね?」


「馬鹿な事を。本棚あるんだから多少埋めといたほうが格好がつくだろ。お前こそ俺のこと監視してるのかよ。」


「あんたが一番執着したのがゴーレム作りだからよ。その他の事はどうでもいいって放っておくのに、あれだけはやたら熱心だったでしょ。」


「俺は無実だ!」


ジト目で睨むキョウカに背をむけ答える。


「最近、部屋から出てこない事が多いけど何してるの?むっ!その枕の下からはみ出してるの何?」


そう言うが早いか俺には止められないスピードで手が出てきた。


「み、見るなー!」


力ずくで奪われた本には「嫁が喜ぶプレゼント&サプライズ特集号」と書かれていた。

とたんにニヨニヨし出すキョウカ。


「えーっ!旦那様ったらやっさし~!」


今にも踊りだしそうなテンションでそんな事を言いだした。


「うるせー!出てけ!俺は寝るから、しばらく入ってくるな!」


雑誌を取り上げキョウカの背を押し部屋から追い出す。

キョウカも抵抗せず機嫌よさそうに出て行った。

追いだしに成功した俺は部屋の鍵をかけ耳を澄ませる。

扉の向こうでは嫁達の声が聞こえるが、喜んでいる感じの声色だ。



・・・馬鹿め!それはブラフだ!


俺は床下にある秘密通路を開き、その中に身を躍らせる。

俺の部屋から約500メートルある秘密の通路を歩き出す。

その先に作り出した俺のロボの格納庫に向けて。


キョウカからゴーレム作成の禁止を告げられた俺は秘密裏に自分の部屋からつながるこの大部屋を作っていたのだ。

疑われた時用にダミーの理由まで作りあげ徹底的に秘匿した。


バレないようにプレゼントも選択済みだ。

キョウカにはブランドバック、シスには5000DPした雷帝の剣、

リアには錬金術のスキルスクロールと道具一式、ミーシャにはアダマンタイト製の手甲、そして全員に真珠のネックレス。

バックは流行り廃りがあるため直前に購入する予定だが、その他は購入済みでこれを嫁達の我慢が切れるギリギリで渡す。

何気にキョウカへのプレゼントが一番安上がりだが、原因を作りだしたのあいつだ。


俺が秘密の格納庫を作った動機はさておき俺はここでロボの製作を進めていた。


次の開発コンセプトは小型軽量ハイパワーだ。

小型化というのは技術の進歩において非情に役に立つ事柄だ。

何故なら大きい物は作れても小さい物は作れないという事は有っても、小さい物が作れるなら大きい物も作れるからだ。

大は小を兼ねると言うが、技術力に限って言えば真逆なのだ。

そのため、今回も実験機としての様相が強いかもしれない。


これまでの研究により既に移動方法は確立出来ている。

前回は飛行魔法の付与で無理矢理、飛行能力を持たせたのだが重すぎて失敗だった。

これを重力魔法と転移魔法、飛行魔法の並立により成し遂げたのだ、

そのため今ではUFOのような鋭角的で出鱈目な飛行も可能となった。


機体の方は小型化のため胴体部分がほぼ操縦席となり装甲が薄くなって危険度が増したが、

いざという時は転移魔法による脱出装置と凶悪な自爆装置で対応する。

死なばもろとも、それが我が家の家訓だ。


そして問題はその武装だ。

小型軽量ハイパワーは巨大な質量兵器を振り回すためのものでは無く、あくまで速度重視の戦い方が出来る様にするためだ。

いわば、真のリアル系ロボだ。

そのため、心情的には役に立たずとも剣を持たせたかったが、妥協を許さず射撃系武器を搭載する事にした。

だが、如何せん小型機のため固定武装の搭載場所が無い。

大型機なら骨組みを削って場所を取る事ができたが、こいつには削れる個所が無い。

装甲ですらマジックシールドと結界を付与する事により防御力を上げたが、実質プロトタイプと比べると紙装甲だ。

外付けのビームライフルモドキを持たせるのが精一杯なのだ。

あまりにも武装が無いので、急遽頭部のデザインを変更し4つ目にして上段2つの目からは広範囲で石化魔法を放出する事にした。

こうして2体目のプロトタイプ(呼称2号機)が完成した。

俺の中で何かが違うと訴えかけるものがいるが、どこをどうすればいいか分からない。

出来てしまった物は仕方ないのでこれを格納庫に飾り、まずは休息と最近ソワソワし始めた嫁達の対応をする事にした。






プレゼントは準備したが何の理由で渡せばよいか分からないという最大の難問が残っていた。

結婚1周年もまだ先だし、誕生日等も知らん。

雑誌を見ても渡す理由まではフォローされていない。

逆に理由なしで渡すとその後も理由なしでも渡す事になり注意が必要だと書かれていた。




理由など知った事か!

倒れるときは前のめり、が我が家の家訓だ!

俺はなけなしの頭で考えた案を実行する事にした。


「皆に渡したい物があるんだが・・・。」


ある夜、嫁達が部屋に集まった際に切りだした。


「な~に、旦那様?」


キョウカは気持ち悪いくらい機嫌がいい。

既に飛んでいて理由を説明する必要等なさそうに見える。


「キョウカにはこれだ。」


事前に用意したプレゼントを渡していく。

皆が俺の渡したプレゼントに歓声をあげていく。

いいぞ!このまま誤魔化せそうだ。

・・・そう思っていた時期が俺にもありました。


「でも、一体どうしたんです?何か良い事があったんですか?」


母性溢れるリアが首をかしげ素朴な疑問を口にだした。


「フッ、理由はこれだ!」


俺は追加で購入した足首まである毛皮のロングコートを取り出す。


「俺からのプレゼントを受けとったからには、これを着てもらおう。・・・むろん裸の上に!」


力強く宣言する俺を呆れた顔で見つめる嫁達。

次の瞬間、ゆでだこの様に赤くなっていった。


「馬鹿だ、馬鹿だとは思ってたけど、そこまで馬鹿だとは・・・。」


いや、戦略という観点から見たら俺は誰にも負けんぞ。

今回も逃げきって見せる。


「ご、ご主人様が望むならわ、私は来てもいいが、これだと胸が収まりきらないのでは・・・。」


「そ、そこがいいんじゃないか。ほら、キョウカも格好いいぞ。」


「あんた、そのためにプレゼント用意してたの?」


「わ、悪いか!黙って着ろ!」


「はぁ~、・・・今日だけ部屋の中限定よ。」


「こ、これ私だと胸が全然隠れないんですが・・・。」


「ああ、わざとワンサイズ小さいのだから。」


「あたいのは隠れるぜ!」


「ミーシャさん、騙されてます。半分以上、隠れていないんだから一緒ですよ。」


この夜は俺のHPが減るほど消耗したがロボからは完全に目がそれた。

変態だと思われた俺の尊厳と引き換えに・・・。

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