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永遠の秘密兵器

3ヶ月後


平和を満喫していた俺達はある日衝撃的な物をみた。

侵入者アラームが久々に鳴り響き、物見遊山でコアルームに集まりスクリーンを起動させた時、そいつがいた。

ツルツルの頭にムキムキの体の見事な逆三角形、装備はブーメランパンツ1枚とリングシューズのみ、

体はオイルを塗ったようにテカリ、バッチリ化粧をした男が・・・・。


一目見て分かった。

関わってはいけないものだと。

恐らく伝説級の高レベルの変態だ。


小部屋に入った途端ポージングして微動だにしない。

凄い嫌がらせだ。

想像して欲しい、家の玄関前で最高レベルの変態がサイドトライセップスでポージングしている所を。

そして、それを止める術が無い時の事を。


小部屋を覗いた瞬間に引き返したゴルドを責める事は出来ない。

誰でも逃げる。

俺なら二度と近づかない。


勇者かもと思いキョウカに聞くと無言で激しく首を振られた。

よくよく考えたら勇者ならゴルドは逃げないだろう。

とすると人型のモンスターなのか?


様子見のため放置したが、奴は次の日も同じ場所にたたずんでいた。

にっこり笑顔のままなのが不気味だ。

もしかしてあの化粧は戦いの化粧とかなのだろうか。

スイカでも一飲み出来そうな口に血のように赤い口紅が付いており、その周りをヤスリのような髭が覆っている。

レンガのような鼻に光でも吸い込みそうな鼻の穴が2つあり、かすかに動いている。

毛虫のような太い眉毛にギラギラと輝くぎょろ目があり隈取のように縁取りがされ、針金のようなまつ毛が溶接されたように飛び出している。

そして顔は暗黒舞踏のように白く塗られ、岩でも砕きそうな顎がそれをまとめている。

異形・・・まごうことなき異形だ。


こうして、俺達はこの化け物対策をする羽目になった


「急にどうしたのかしら?もしかして解放する気になったの?」


ミーシャにアリスを連れてきてもらい面通しをする事にした。

万が一黒幕が別にいて、アリス奪還のための刺客だった場合を考慮したのだ。

残念だが奴が刺客なら、あの化け物が2度とうちのダンジョンに来ない事を条件にアリスを解放するつもりだ。


「えっ!なにあれ?ゴーレム?違う、呼吸している。新種のモンスターかしら?」


これだけ激しく反応するようではアリスの仲間ではないようだ。


「Aプランはボツ、これからBプランにうつる。」


「えっ?」


「アリス、お前の初仕事だ。小部屋に転送してやるから、あの化け物を排除してこい。」


「えっ!冗談でしょ!」


あの化け物を排除してくれたなら解放してもいいとまで言ったのだが、アリスは頑なに拒んだ。

あの化け物と一緒の部屋に行くなら死ぬとまで言い張って。

しかたが無くアリスはアドバイザーとした。

俺等だけで、あんな化け物を相手にしたくないためだ。


どんな化け物でも生きている以上はエネルギーの摂取が必要なはずだ。

扉を開かないようにして閉じ込めてしまえば半年ほどで死ぬのではないか。

しかし、ダイオウグソクムシのように平気な場合もある。

もしかしてクマムシのように真空状態でも生き延びるかもしれない。

人類とは別系統の進化を遂げたような化け物に俺達は困り果てた。


最終手段としてはプロトタイプゴーレムロボを1階層に寝そべったまま転送し、

BC兵器の散布により生命体の根絶を図るしかない。

ちなみに搭乗者はアンデットの竜牙兵だ。


取りえず戦闘能力を測る意味でも1階層のG軍団でひとあてしてみる事にした。

1グループ10億匹が小部屋に殺到する。

G軍団が鉄砲水のように部屋に流れ込むが、あの化け物から一定の距離を保って近づかない。

あの最強勇者すら葬った勇猛果敢で無敵のG達がだ。

しばらくするとひっくり返り痙攣したように足を動かす。

殺虫剤をかけられた時の動きだ。

慌てて確認するも死亡はしていなかった。

どうやら一定時間同じ部屋にいると気絶するようだ。

別の1部隊を向かわせ回収させる。


対応策が見付からずその日を終える。

次の日の朝に変化があった。

奴がポージングを変えたのだ。

サイドトライセップスからフロントダブルバイセップスへ。

嫁達から悲鳴があがり、思わず目を背ける。

左右の胸を交互にピクピク動かし威嚇している。

ぐっ!

とっさに映像を切り敵の精神攻撃をそらす。

一刻の猶予も無い、荒い息を整え化物の対策に乗り出す事にした。


最強軍団のGが通用しない以上、別の手を考えるしかない。

虫であるGが近づかないという事は本能レベルでも意志のある生命体では奴に近づく事もままならないという事だ。

ならば意志無き攻撃である罠しかない。

奴を観察しどのような攻撃が効くかを考える。

性別があるとしたら男だろう。

呼吸しているようなので生物。

微動だにしない理由は分からないが狙いを付けるには格好の的だ。


小部屋に弓矢の罠を作る。

四方の壁に静かにセットされる。

目の前で空間が歪み罠が構築されても微動だにしない。

奴に考える能力はあるのだろうか。


「目よ!目を狙いなさい!」


キョウカの恐ろしい指摘に前面の壁の狙いが目に集中する。

バン!という音と共に矢が発射され化け物に突き刺さる。

かに見えた・・・無傷、まさかの無傷である。

嫌な予感はしていたが、流石に目は刺さるだろうと思っていたのだが・・・。


「あいつ瞬きで矢をはじき返したぞ。」


とんでも動体視力のミーシャが素晴らしい解説をしてくれた。

瞼で矢をはじき返すのは信じられないが、少なくとも防御したという事は目に攻撃は通じるということだ。


・・・・・いい手を思いついた。


「前面の壁から奴の目に向けて連射しろ!」


前面から矢が降注ぐが瞼を閉じてガッチリガードしている。


「そのまま続けろ!続いてココナッツクラッシュの用意!威力は最大まで上げろ!この攻撃で壊れてもいい!準備整い次第発射!」


次の瞬間、化物の股間を強烈な勢いで何かが殴り飛ばした。

それが最終兵器ココナッツクラッシュ!

プロレス技のではない!

罰ゲームで使われる器具を殺人可能なレベルにまで強化した逸品だ。

化物が一瞬宙に浮き目を見開く。

それを好機ととらえ全方位から矢が襲い掛かりハリネズミのようにした、

やはり全身の力を入れていないと防御は出来ないようだった。

しかし、あの化け物はまだ生きている。

力なく横たわっているが、まだ胸が上下しているのだ。

なんという生命力だ。


「今だ!アリス!とどめをさしてこい!」


「絶対いやよ!」


この女全然役に立ってない。


「くそ!なら、これでとどめだ!」


奴の床下に落とし穴を作成し落下させ、溶けた鉛を流し込み急速冷却で固めた。

とりあえず見えなくなったため皆が安堵のため息をつく。


「し、死んだのよね?」


ビシッ!アリスの声に答えるように固まった鉛にヒビが入った。

鉛の塊がせりあがってくる。


「クソが!天井の位置を高さ10センチに変更!」


天井の位置を10センチに変更するとそこに当たり出てこれない。


ドン!ドン!、ドン!ドン!と不気味な音が鳴り響く。


「どうするのよ、あれ・・・。」


皆が不安そうだ。

俺も不安だ。


「だ、ダンジョンバトルを挑まれたら、あいつを相手ダンジョンに誘導しよう。」


皆が引き攣る顔を見せるがそれまでに死ぬ可能性もあるし、少なくとも誘導出来たら相手になすりつける事が出来る。


「そ、それはいくら何でも酷すぎない・・・。」


酷すぎない。

俺が不幸になるなら、皆も不幸になるべきだ。


「なら、アリスが面倒みろ。」


「ごめんなさい、私が馬鹿でした。」


土下座して頭を下げるアリス。

そんなに嫌か?

・・・・まぁ、確かに嫌だな。


こうしてあの化け物は開かずの間となった小部屋に封印される事になった。

来たる日の解放を夢見て今日も開かずの間からは激しく音が鳴り響いている。

願わくば永遠の秘密兵器でありますように・・・。

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