俺のロボ
次の日
「アリスの事はどうするの?」
「放置で!キョウカは飯やその他の面倒をみてやってくれ。あと話でもして狡賢さを学んでこい。お前に足りないのはそれだ。」
「うっ、わ、わかったわ。」
キョウカにアリスの世話を丸投げし、俺は大部屋の横に更に大部屋を作る。
そして高さを50メートルにカスタマイズ。
何故、こんな部屋を作ったかというと、俺は昨日閃いたのだ。
ことの発端は召喚リストを眺めていた時だ。
「ゴーレム」その定番モンスターに目が留まった。
そして、想像したロボットのようなゴーレムを。
無骨な人形のような物では無く、洗練されたデザインのゴーレムを。
俺は男の夢を実現するため、すぐに行動を起こしDPストアを開いた。
思った通り、スキルスクロールにメイクゴーレムという物があった。
更にスキルへ経験値を与えるスキルオーブという物を10個と一緒に購入。
俺はメイクゴーレムLv5のスキルを手に入れた。
ついて来た双子と座敷童が見守る中、まずは実験として粘土を購入しそれでゴーレムを作る事にした。
1トンほどの粘土の塊に魔力を通し、人型にする・・・。
かなり難しい。
左右の手足の長さが違うがとりあえず出来た。
「う、動いてみろ。」
俺が命令を下すと不格好ながら動き出す。
猿とか昆虫の動きみたいだ。
あまりの不気味さに座敷童が双子の後ろに隠れる。
双子は無表情なジト目で見つめているだけだ。
「よし!走ってみろ!」
次は走らせる。
懸命に俺の命令を実行するゴーレム。
だが手足の長さが違うし、バランスも狂っている。
盛大にこけて転がり手足の細い部分でちぎれた。
頭を振ってメイクゴーレムを解除し粘土に戻す。
これで、左右対称じゃ無いと動きが悪くなる事が分かった。
3度もやればそれなりに人の形に近づいてくる。
何とか走る事が出来る様になった。
次はもう少し激しい動き、剣激等が出来るかどうかだ。
シスを呼びクレイゴーレムと模擬戦をしてもらう。
もちろんシスには手加減してもらいながらだ。
手加減してもらっても動きが悪い。
瞬発力的なものが無く動き出しが遅いし、一瞬止まってから動き出すのだ。
戦闘を止めてどこが悪いか考える。
やはりバランスなのか?
さっぱり分からない。
シスに立っていてもらい、シスの体を見ながらゴーレムを作り直してみる。
「ご主人様、み、見られてるとなんか恥ずかしいです。」
シスが赤くなり恥ずかしがったが強引に頼み込んだ。
裸じゃあるまいし別にいいだろう。
シスを元につくったら女型ゴーレムになった。
あまり考えず見たまま作ったため、胸部装甲が凄いことになっている。
双子が魔乳、魔乳とはやし立てる中、シスと女型ゴーレムの戦闘が始まる。
結果はゴーレムがバランスを崩し倒れ、起き上がれなかった。
正に魔乳だ。
シスはこれだけのハンデのもと戦っていたのだ。
顔を赤くしたシスが逃げてしまったので暗礁に乗り上げてしまった。
壊してもう一度普通に作ってみる。
先ほどよりはスムーズに動くが動き出しが遅い。
関節のところを確認すると謎理論で、曲がるとその分部の厚みが薄くなる。
昼食を取りに戻り皆と一緒にご飯を食べる。
今日は中華が食べたかったので、炒飯と餃子と麻婆茄子とから揚げを準備した。
全て大皿に入れておいて好きな物を好きなだけ食べるようにしたのだ。
「なんで麻婆茄子なの?」
「俺は麻婆茄子の方が好きなんだ。」
何がメジャーか理解しているキョウカからツッコミが入ったが、好きな物は好きなのだ。
デザートは中華らしく杏仁豆腐。
何気にこの世界では初めて食べる。
リアが杏仁豆腐を気に入り何回もお替りしていた。
「あんた、そう言えば何してるの?」
杏仁豆腐を頬張りながらキョウカが聞いて来た。
「ロボを作ってる。」
「・・・・男って本当にそういうの好きよね。」
俺がそう返すとジト目で睨みながら呆れたように返された。
お前がロボに興味が無いように、俺はバックや装飾品に興味が無いのだ。
これ以上ここにいると邪魔が入るかもしれないと思い、皆が夢中で食べている間に俺は席を立った。
大部屋に戻り、次は鉄でゴーレムを作ってみる事にした。
鉄を1トン出すと粘土と比べ量が少ない。
10トン出して取りえずこれを使う事にした。
鉄に魔力を通す。
粘土の時は楽だったのに中々魔力が通らない。
ようやく準備が整うと荒い息を整え人型にする。
「ぐっ!きつい・・・きつすぎだろ・・・。」
渾身の力で作り出したが脳が痛い。
人型ののっぺりしたゴーレムだが間違いなくアイアンゴーレムだ。
動くように命じるとドスドス音を立てて動く、重いせいか粘土より安定している気がする。
だが、動き出しが遅く、一瞬のためが必要なのは同じだ。
次に実験のため蛇のようなゴーレムを作ってみた。
蛇型だが関節は1つのイメージで作る。
電柱みたいなものが出来た。
「動け!」
イメージした関節部分が曲がる伸びるを繰り返す。
う~ん、・・・気色悪い。
止まれと動けを交互にタイミングをずらして繰り返す。
一か所だけならスムーズに動き出す気がする。
実験すると関節が10ヵ所を超えると途端に動きが悪くなるようだ。
これって処理能力の問題じゃねーのか。
俺の目では10ヵ所を超えると遅くなって見えるが本当はどうか、動体視力が一番あると思われるミーシャに見てもらった。
「う~ん、5ヵ所までならあたいにも一緒に見えるな。それ以上だと動きがぎこちない感じがするよ。」
ミーシャの動体視力は俺など歯牙にもかけないものだ。
彼女がそうだと言えばそうなのだろう。
処理能力の問題上ゴーレムの動きは鈍いのだ。
動かすところが多すぎると制御しきれなくなるのだろう。
違うかもしれんが、これを一つの仮説として取り入れよう。
説明出来ずとも使えるものは使うのだ。
全身麻酔も理論が分らず使っているのだ、このくらい屁でも無いはずだ。
関節が5ヵ所までなら問題なく動く、ならば各パーツごとに分けて作ればどうだろうか。
イメージは合体ロボだ。
また鉄を10トン購入し魔力を通す。
目の前がクラクラしてきたところをリアに捕まり家に戻された。
夕飯の準備が出来たらしい。
くそ!明日こそは・・・俺のロボを・・・。
次の日
関節が5つある電柱のような蛇モドキを2本作る。
これを交互に滑らかに動かせたらパーツ毎に作ってもロボとして動けるはずだ。
まずは単純に端と端をつなげてみた。
右の電柱蛇から動き出し動き終わると左が動き出した。
・・・若干というより普通にタイムラグがあるな・・・
もう一度やる。
気色悪い動きだが、やはりつないだ部分で遅れが出てくる。
何度かやるとつないだ部分が壊れてしまった。
つないだ部分はゴーレムじゃないからか?
今度は電柱蛇と電柱蛇をゴーレムで作ったキャップのような物でつないだ。
気色悪さに拍車がかかったが今度は割とスムーズに動く。
大きさを抑えて右手だけを作ってみる。
指は全て1本1本がゴーレムそれを手の平ゴーレムにゴーレムキャップで接続し手首から上の合体ゴーレムを作る。
「よし!チョキをだせ!」
手の平はパーだ。
「グーにしろ!」
拳を握りしめる。
「パーにしろ!」
指を開いてパーになる。
「チョキにしろ!」
微動だにしない。
グーとパーは認識出来た。
全部の指を開くか閉じるだと出来るのか。
自分が指と認識してないのか?
いや、指と認識してるからグーやパーには反応するんだ。
って事は自分がどの指かを認識してないのか。
だから、自分への命令だと思っていなくて動かない。
これも仮定だがそう思うしかない。
そうすると制御する方法が必要になる。
・
・
・
・
・
思いつかない。
頭をかかえて転げまわっているところを呼びに来たミーシャに捕まった。
あれから数日がすぎ、ついに解決策が見つかった。
結論からいうとゴーレムに全てを任せるとどうしてもタイムラグや動作の機敏性が失われる。
そのため、その部分を補う人間でいう脳レベルの処理能力をもつ何かが必要なのだ。
これは現在思いつくものが無い。
そこで、各ゴーレムパーツにイメージで指示を飛ばす事が出来る、所謂、人でいうところの神経を張り巡らした。
誰かがこの神経ゴーレムを触りながらイメージを流すと神経ゴーレムはそのイメージを各端末のパーツゴーレム伝える。
これで素早い動きが可能になるが、当初の予定であった完全自立型では無く搭乗型のロボットになってしまった。
現在は実験用に作った右腕のゴーレムに神経ゴーレムで指示を送る実験をしている。
動くのは確認出来たので、例えば自分では出来ない指の動きが出来るかとか人間では不可能な関節の動き、武器を搭載した場合使えるのか等の実験である。
右腕付け根までしかないがスムーズに動き、なんの問題も無いし手首を一回転させる事も出来た。
神経ゴーレムのせいで気色悪さが一段上がったがそこは実検機体と割り切ろう
これのいいところはイメージだけで動いてくれるので操作に練習が必要無いところだ。
全身を作った場合どうなるのか分からないが右腕だけなら何の問題も無い。
更に数日が過ぎ両手両足と動体部分が出来た。
胴体部分に乗り込み操作するのだが実験機としての様相が強いため今は頭部も胴体部装甲も無い。
平たく言えば椅子に手足が付いているようなものだ。
バランスを取るのが難しいため、ヨチヨチ歩き状態だが特に問題があるようには感じない。
運動性能は慣れれば上がってくるだろう。
そろそろ次の段階に進む事にした。
俺はゲームでも説明書を読まずに進めるタイプなので気が付かなかったが、ゴーレムを作る際に魔力を通す物質はその物質の持つ潜在能力により必要な魔力が違うという事だ。
簡単に言えば粘土より鉄が、鉄よりミスリルが魔力が多く必要になる。
単純に硬さという点でもあるのだが、能力を付与出来る鉱物となるとその数値が跳ね上がる。
現状俺のレベルはバトルを終えて72と上がっているが魔力は7200と心許ない。
そのため、魔力増大系のスキルをつけて対応する事にした。
DPストアで購入したスキルは深淵なる魔力とMP増大。
MP増大はLv5でMPが32倍になるスキルだ。
そして、深淵なる魔力はLv5でレベル×5倍の倍率のスキルなのだ。
このレベルというのがスキルレベルならたいしとことは無いのだが、俺自身のレベルなのがみそだ。
現在で72×5で360倍になり、更に32倍になるため、11520倍。
これで俺のMPは8200万を超える。
更に付与魔法をLv5で取得。
これで万全の体制となった。
2週間後
まだ完成では無いが俺のゴーレム型ロボットが形になった。
武装と装甲が無いむき身の状態だが乗って動かす事が可能な人型だ。
全長が18メートルと見た目も堂々としている。
使用金属はヒヒイロカネといわれる聖剣、神剣の類に使われる金属で恐ろしく硬く、恐ろしく高い(DPが)
このおかげで砂糖吸収を徹夜で行った。
その硬いヒヒイロカネをゴーレムにして剛力のスキルのみを付与し続けた。
これにより冗談のようなハイパワーで硬い骨組みが完成し、それに神経ゴーレムとして魔力伝達にすぐれたミスリルを使用。
赤っぽい体にミスリルの銀のごとき筋が張り巡らされた、気味が悪い外見になっている。
女性陣には不評だったが、これに装甲をつければ見た目も変わるはずだ。
俺が上機嫌で夕飯時に祝杯をあげているとキョウカがそろそろアリスをどうするのか決めろと言い出した。
確かにかなり放置していたので、明日の昼食後に会うことにした。
次の日
朝からヒヒイロカネで装甲を作り始め下半身部分がようやく形になって来た。
上半身部分を先にしなかったのは転倒防止のため、先に下半身を重くしたのだ。
その後、待機場所のハンガー等も必要だという事で作り始めたのだが、途中でキョウカに捕まり昼食になってしまった。
そして昼食後は約束のアリスとの面談だ。
この時点で面倒になっていた俺は渋ったのだがキョウカに引きずられ連れていかれた。
「久しぶりだな。」
「そうね。随分会ってなかったけど、なにしてたの?」
「俺のロボを作ってた。」
「ロボ?」
「大きなおもちゃよ。」
キョウカが茶々を入れる。
やはり男の夢は女には分らない。
「それで、どうするの?」
「今のところは幽閉一択かな。お前が黒幕みたいだし。」
「何故、そう思うのかしら?」
「お前捕まえたら襲撃無くなったじゃん。違う可能性もあるけど、それでもお前は人質として優秀だって証明されてるしな。」
「何故、人質として優秀なの?」
「襲撃が無いからだよ。お前の言う通り黒幕が居たとしたら襲撃され無いのはお前がいるお陰だろ。下手に襲撃してお前を殺させたくないって見るのが妥当な線だな。」
「貴方、どうゆう頭してるの?」
「で、どうする?」
「10億DPと不可侵条約、それで私を解放しなさい。」
「えっ!無理!10億DPって俺の迷宮の1階層の守護者達に使ったDPの10分の1だぜ。そんな端金で何がしたいんだよ。」
「あんた、そんなに召喚してたの?」
キョウカ、お前は黙れ。
「解放条件を言いなさい。」
「だから無いって。お前は信用出来ないし、俺の望みは静かな暮らしだ。お前がここにいる限りはそれが保証されるなら幽閉しとくに決まってるだろ。」
「・・・・・・・・・。」
「それらを加味して、俺が解放してもいいって思える条件を考えるのがお前の仕事だ。分かったかな?」
「・・・・・・・・・。」
「じゃあ、キョウカ、そいつは幽閉って事で。」
大部屋に戻り作成中だったハンガーを作り終え、胴体部分の装甲を施したところで夕飯の時間になった。
あとは腕部と頭部に装甲をつけ高機動を可能にするスラスターの装備と武装だけだ。
長い道のりだったがようやく終わりが見えてきた。
次の日
装甲を作り終わり、武装の準備に取り掛かる。
もう一つの男の夢、ファ〇ネルをどうにかしたいが、これを実現するのが難しい。
重い金属を浮かせ素早く動かし攻撃機能を持たせるなら素直にぶつけたほうが手っ取り早いし手足の必要が無くなる。
まずはロボと言えば剣だろうという事で剣を装備させる事にした。
ビームサーベルモドキを作ろうと思ったが使用中のMP消費が激しいのと魔法防御を展開されるだけで弱体化する。
素直に質量兵器としての巨大剣を作り出した。
次にバルカン砲を補助武器として額につける。
こめかみに2門つけたかったが、作りあげた装置の大きさからそれは断念した。
このバルカンは土魔法で石のつぶてを高速連射するもので主に雑魚用の武装だ。
背面に飛行するためのスラスターじみたものを付けたいが同時にロマン武器である巨大砲もつけたい。
飛行用のスラスターは何よりてこずった。
重すぎて浮くには浮くが亀の歩みなのだ。
これは今後の課題としてとりあえずは姿勢制御用と割り切る。
巨大砲は割と簡単で使い捨てだが極大魔法を付与しそれらしく作り、使用後はパージするようにした。
当初はリアル系だったのが段々とスーパー系になっていく。
背面から光の翼モドキが出る様にして抵抗してみる。
ナノマシンの散布は出来ないのでBC兵器散布で対生物用として死をまき散らかす事にした。
なにかが違うと俺の中の本能が呼びかけてくるが、どうすればいいか分からない。
夕食時にとりあえずプロトタイプが完成したことをつげると。
「なんにつかうの?」
ともっともらしい問いかけが返ってきた。
これだから女は浪漫を理解しないのだ。
意味など無くても意義はある。
それがロボットだ。
俺の熱弁はスルーされ、ロボット作りの禁止を言い渡された。
この世界も理不尽で満ちている。




