戦後処理
次の日
「で、アリスの事どうする気よ。」
「しばく!」
「ちょっと、話聞くんじゃないの?」
「あいつは怪しい。なにか隠してる。」
「なら話を聞いてからでしょ。」
「ボコってからな。」
捕虜の扱いについて朝からキョウカともめている。
今更ながら捕虜になどせず始末しておけば良かったと後悔した。
捕虜の使い道はあるが、今回のアリスの場合は情報収集の一点に尽きる。
但し、それは素直に情報を吐けばという条件がつく。
あの女には違和感がある。
そもそも、臆病な奴が86階層のダンジョン等を作れるのだろうか。
キョウカがギャンギャン喚いて俺の考えを中断させるため折れた。
まるで駄々をこねる子供のような奴だ。
双子と座敷童の世話をシスとリアに頼み俺とミーシャと自称お目付け役のキョウカの3人でアリスの元にむかう。
向かった先は俺がシスとリアを捕まえた際に使った収容所だ。
その鉄格子の奥にアリスの部屋が作られていた。
刑務所よりはるかに住みやすそうなところからミーシャがアリスを連れてくる。
尋問の開始だ。
薄暗い部屋の机の対面に彼女を座らせ、ミーシャがその後ろに立つ。
俺は卓上ライトをアリスの顔に当て叫ぶ。
「ネタはあがってんだ!さっさと吐け!」
そして、俺の後頭部を襲うキョウカの光り張り手。
言ってみたい台詞No,いくつか分からないがを言ってみただけなのに。
「じゃ、まずは名前と年齢とダンジョンマスターになって何年かを教えてくれ。」
「は、はい。・・・名前はアリスです。・・年齢は20才。・・・ダンジョンマスター歴は4年くらいです。・・・」
「そうか、4年か・・・。それで、4年間で何してた?」
「えっと・・・戦うのが怖くて引きこもっていました。1年くらい前にバトルで負けて他のダンジョンマスターの配下に・・・。う、う、う、ごめんなさい。・・・」
ウルウルした目で見つめられキョウカは辛かったわねとポツリと小声でもらしている。
「じゃあ、俺のダンジョンにバトルを挑んだ動機は?」
「あ、あの・・・、私、無理矢理戦うように命令されたんです。嫌だったけど逆らえなくて・・・。」
「ダンジョンコアを掌握されると相手のダンジョンマスターに逆らえなくなるのか?」
「そ、そうなんです。それで無理矢理・・・。」
キョウカは女の敵ねと憤り、ミーシャは飽きてきている。
「さて、じゃあ質問だが4年・・いや、3年は引き籠っていたんだよな。よく86階層も作るDP溜められたな。どうやって溜めたんだ?」
「えっ!す、少しづつ溜めました。」
「ふ~ん。そうなんだ凄いね。ところで最初の3年でバトルって何回こなしたの?」
「えっ!じゅ、10回くらい申し込まれました。」
「何度、戦った?」
「えっと・・・・1回だけです。」
「つまり、それで負けて従属させられたんだな。」
「そ、そうです。」
「話を整理すると3年引き籠りながら10回ほどバトルを申し込まれ、1回だけ戦ったら負けて従属させられた。合ってる?」
「そ、そうです。」
「なぁ、バトル拒否った場合のペナルティって知ってるよな?」
「し、知ってます。10万DPの支払いですよね。」
「少なくとも9回ペナくらってるんだよな。つまり90万DPの支払い。」
「・・・・。」
「階層追加は最低1000DPだけど、お前のダンジョンって最後の1階層以外全部迷路タイプだろ。5000×85で425000DP。」
「それを4年で割ると1日2700DP以上稼いでる事になるよな。実際はお前のダンジョンって各階層にモンスターいたから更に倍くらいか?」
「・・・・・・・。」
「お前が侵入者を殺して頑張って溜めたとしたら・・・まぁ、分かるけど。そんな致死率の高い迷宮だと来なくなるんだよなぁ侵入者。実際俺のところ誰もこないもん。」
「わ、私のコアのレベル3なんです。上級なら1日2000DP溜まります。後は侵入者が多い日があったりして、それで溜めれたんです。本当です。」
「なぁ、そろそろ無理な事言ってるのは分かって来てるだろ?それとも命令しようか、誤解させるような言い方や演技をするな。」
「ふぅ・・・・・そうね。流石に無理があるかな・・・。」
アリスが態度を一変させるとキョウカは目を丸くし、ミーシャは関係無いとばかりに欠伸をした。
「・・・・いつから怪しいと思ったの?」
「始めから。5分前まで殺し合いをしてた奴を信じれるほど人間性よくないんだ。」
「そっちのお嬢さんは信じてたわよ。」
「いいとこの出だからな。やりすぎる俺のストッパー役だ。」
「で、どうするの?」
「今日のところはこれで終わりだ。ミーシャ、部屋に放り込んでおいてくれ。」
俺が席を立つとミーシャがアリスの襟首を捕まえて連れていった。




