匠の技
「あ、あの・・・。」
ミーシャ相手に遊んでいたが忘れていたわけじゃない。
敵のダンジョンマスターだ!
「貴様の血は何色だ!」
「ひ、ひぃ!ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
居たのは双子を成長させたような女だ。
何となくだがよく似てる気がする。
念のために知り合いか言いてみると違うと返ってきた。
これで心置きなく尋問出来る。
凄みを出すために指の骨を鳴らそうとするも不発に終わった俺はとりあえず女を睨みつけた。
顔を赤くし目を潤ませ、今にも泣きそうになっている。
フフフッ!俺に喧嘩を売った事を後悔しろ!
俺が得意気に笑うとキョウカから光りの張り手が飛ばされてきた。
あぶねえ!
避けてはいないが頬をかすって飛んでいった。
「な、なにしやがる!」
マズイ、キョウカは今いる女の中では最強だ。
「あんたねえ!女の子になんて扱いしてるのよ!」
「ば、バカ、こいつは敵だぞ。」
「もう降参してるんだから敵じゃないでしょ。子供達におかしな姿見せるんじゃないわよ!」
ぐっ!確かに双子はもう駄目かもしれんが、座敷童がどう育つかはこれから次第だ。
吠えるキョウカに黙る俺。
「ほら、もう大丈夫だから、心配しないで。」
「は、はい!有難うごあいます。ふえ~ん!」
くそ、泣きたいのはこっちだ。
因縁つけられてバトルしてるのに、俺が悪者みたいだ。
「くそ!覚えてろ、貴様等!キョウカ、お前オカンみたいになってるぞ!うぉおおお!」
コアルームから逃げる際に捨て台詞を吐くと、キョウカが鬼の形相で光りの張り手を乱射する。
背中に一発被弾したが俺は無事大部屋に逃げ込み、そこで自身を抱き締めクネクネしているミーシャを発見した。
「ミーシャ、何してんだ?不思議な踊りの練習か?」
俺が声をかけるとギギギッという感じで振り向く。
「し、シリアスこそ何してんだよ!あいつはいいのかい。」
「キョウカの奴が・・・。」
俺はそこでキョウカの蛮行をミーシャにばらし戦略的撤退をしてきた事を告げた。
「で、逃げてきたんだな。」
「違う!先を見据えた戦略を考慮し、一時的にキョウカに捕虜の身柄を・・・・。」
「わかった、わかった。それでシリアスは何するの?」
「うむ・・・まずは疲労回復のために休息が必要だ。」
やることは無いからふて寝する。
「じゃ、じゃあ、あたいが膝枕してやるよ!」
元気に提案されたがうるさくなりそうだな・・・・。
「だ、駄目かい・・・。」
捨てられた犬みたいな目で言われると断り辛い・・。
「じゃあ、頼むから、静かにしてろよ。」
無言でコクコク頷くミーシャの膝に頭を乗せる。
スゲー巨大山脈だ。
何がとは言わないが光を完全に遮断している。
ミーシャが体を傾けるとポフッと顔に柔らかい感触が・・・・。
生きたアイマスクが心地いいが、もう少し体を傾けられたら鼻まで埋まる。
不意に首筋にミーシャの手がそえられ撫でられた。
ビクッと体を固くし冷や汗が流れる。
よく考えたらミーシャの力は俺の100倍じゃ効かない。
少し力を込められただけで首が千切られる。
恐怖でドキドキしていると抑揚の無い声が聞こえた。
「ミーシャも魔乳。」
「魔乳使い。」
「ん。」
どうやら座敷童もいるようだ。
「寝てるんだから静かにな。」
すまん、ミーシャ寝てはないんだ。
体の上に何かを置かれたので、目玉だけ動かして時折開く隙間から覗き見る。
双子と座敷童が俺の体を挟み左右に分かれて何かしている。
身体の上に置かれたのはままごとの道具だ。
「・・・。」
「・・・・。」
「ん。」
「・・・。」
「・・・・。」
「・・・。」
「・・・・。」
「ん。」
サイレントままごとが始まった。
生贄の儀式とかじゃなくて良かったが、無駄に高スペックな能力に戦慄する。
不思議なパントマイムのようなままごとを覗いているとキョウカ達がやって来た。
捕虜の女はいない。
「寝てるの?」
ミーシャの頷く気配がする。
「本当にお気楽なんだから・・。あの子、アリスっていうんだけど部屋を作って閉じ込めてあるわ。こいつが手を出さないように皆で見張るわよ。とりあえず1対1にはさせちゃ駄目よ。」
おかしいな。
俺から手を出した奴はいないはずだが・・・。
思い返してみるとシスとリアは酒で前後不覚になり関係を持ち、キョウカには罠にはめられ。ミーシャも酒だな。
「ミーシャ殿、私も膝枕をしたいのだが替わってもらえないだろうか。」
「あっ!私もしたい!」
シスがミーシャに膝枕を替われと言うとリアも追従した。
人が寝てるってのに容赦しないんだな。
「もう、起きる!腹の上の物を片付けてくれ。」
ままごとセットが取り除かれるとミーシャが目隠しをはずしてくれたので起き上がり伸びをする。
「あのクソ女はどうした?」
「ちゃんと閉じ込めてるわよ。それと彼女の名前はアリスよ。あんた会う時は誰かと一緒に行きなさいよね。」
まるで浮気を疑うような口調だ。
恐らく俺よりは強いのだ。
1人で会うわけなかろうが!
「ご主人様、次は私が膝枕をしようと思うのだが・・・。」
シスが間髪いれずに言ってきた。
そんなに眠いわけないだろう。
「今度頼むよ。」
断わってからシスを見る。
ミーシャに勝る巨大山脈。
うん、本当に今度頼もう。
中々、言えませんでしたが、評価してくれた方、ブックマークしてくれた方、読んで頂いてる方、ありがとうございます。




