不幸はまとめてやってくる
1週間後
起きたばかりの俺の頭にアラームが鳴り響く。
『ジリジリジリジリジリジリジリジリジリ!』
ふざけんなー!
大人しくしてりゃあ、付け上がりやがって!
ダンジョンバトル対戦受注
対戦者:不死のダンジョン
返答期限:47:52:21
対戦方式:1対1
勝利条件:ダンジョンコア破壊による消滅もしくはダンジョンコア掌握による従属
「ミーシャ!ダンジョンバトルだ!行けるか?」
俺は今で寛ぐ嫁達の元に行き鬼の形相(自分ではそう思っている)でミーシャに声をかけた。
嫁達が一斉に振り向く中、ミーシャが好戦的な笑みを浮かべる。
「あたいに任せな!」
「えっ!また来たの?」
ミーシャ以外は困惑気味だ。
「来た!張り倒す!出来るな?ミーシャ!」
俺は嫁’Sと共にコアルームにむかう。
その途中で双子と座敷童もついてきた。
さっそく、ダンジョンバトルを受諾。
開始までの時間がカウントダウンされ始める。
「ちょっとー!作戦はどうするのよ?」
「開始直後、ミーシャは突貫!敵コアルームの制圧を目指せ!」
「わかった!」
「ミーシャが敵ダンジョンに進入後、入り口は1階層守備部隊全軍にて封鎖する。」
「ミーシャ!ダンジョンコアはすぐ壊しちゃ駄目よ。」
「えーっ!なんでだよ。」
「敵のダンジョンマスターに色々聞いてからの方がいいでしょ?あんたも色々分からない事あるみたいだし、情報収集は大切よ。」
「ぐっ!く、クソー・・・・こ、殺したい!・・ミーシャ、作戦変更!コアルーム制圧後、ダンジョンコアの掌握に努めろ!だが無理をするな。無理だと思たら自分の判断でコアを破壊しろ!」
「わかったぜ!終わったら・・・その・・またよ・・・。」
「終わったら抱き締めて褒めてやる!夜は大宴会だ!それでいいか?」
「ば、バカじゃねーの!え、宴会の約束さえしてくれりゃ、い、いいんだよ!」
「わかった。不味いと思ったらすぐに引け!これは最優先事項だ!」
「ハッ!舐めんなよ!あたいをどうこう出来る奴なんかいないさ。・・・だけど、・・・まぁ、命令なら守るさ。」
「よし!40分を切ったぞ!ミーシャ飛ばすぞ!」
サムズアップするミーシャを入り口付近に転送し、スクリーンを調整。
リアとシアが飲み物と摘まめるものを用意し、キョウカが双子をトイレに連れて行く。
俺は1階層のG軍団を入り口から1キロほど離れた場所に集結させ、始まりの時を待った。
ブラックホールがあらわれ開始を告げる。
ミーシャがすぐに突入すると入り口付近に敵は固まっておらず、まずは様子見するつもりのようだ。
「気に入らないね!自分からきといて攻めるつもりが無いなんて!」
ミーシャが右腕を無造作に振ると衝撃と共に壁ごと扇状になぎ倒された。
壊れたところを見ると破壊不可なダンジョン壁ではないのだろうが、全体の3割ほどが壊滅状態だ。
ミーシャはもう一度腕を振るい壁を取っ払うとダンジョンの端の方に階段を見付けて降りていった。
前回よりはるかにハイペースだ。
基本壁を全てなぎ倒して進むので階段まで一直線なのだ。
所要時間は1階層につき約3分、1時間で20階層を走破した。
幸運にも生き残ったモンスターはミーシャを恐れ逃げるか隠れるかしている。
すぐに終わると思っていたが60階層を超えまだ下層がある。
50階層を超えたところからダンジョン壁が所々使われており、60階層以降は全てがダンジョン壁なので攻略スピードが落ち着いて来た。
昼前に75階層に到達したのでミーシャがお昼を食べ始めた。
前回は昼抜きで頑張ったので反省し、ミリ飯を持たせてあるのだ。
ミーシャはカレーと生姜焼きのミリ飯を平らげ、今はケーキ片手に散歩するように侵攻している。
あれだけ食べても太らないのはうちの中でもミーシャと双子だけだ。
ミーシャは胸が大きくなっているようだが、双子は謎空間にでも消えた様に成長しない。
ケーキを平らげお気に入りの紅茶のペットボトルを片手に80階層に降りていく。
どこまであるのか知らんが、飽きてきたのでそろそろ終わりにして欲しい。
何となく100階層が終わりかなと思っていたら86階層でボス部屋らしきものにぶつかった。
重そうな扉をミーシャーが軽く小突いて吹き飛ばし、半壊した扉から中に入る。
そこに居たのは頭が8本ある大きな蛇だった。
ヒドラ?それともヤマタノオロチか?
口から黒い煙のような息を吐く大蛇にミーシャが手をかざす。
開いている指をギュッと握ると大蛇がボール状になって浮いている。
肉が潰れ滝のように黒い血を溢れ流すそれをゴミの様に投げ捨て背後の扉にむかうミーシャ。
コアルームに入り震える人影を前に首をゴキゴキならす姿は大魔王のそれだ。
「こ、こ、降参し、します・・・。」
「おう!コアの掌握ってどうすんだ?出来なきゃ砕けって言われてんだけどぉ・・・。」
チンピラだ!まごう事なきチンピラだ!
既に戦意喪失の敵に容赦無い威圧を放ち理不尽な話を突きつける。
「え、えっと・・・・。」
「さっさと言えや!」
少しでも気に入らないと恫喝。
「ひっ!コアにちょっとの間、触れてもらえると掌握出来るはずです。」
ミーシャがコアに触れるとしばらくするとコアが光りだし、手を放してもミーシャについてきた。」
「なんだ、これ。おもしれえ・・・。」
フワフワとミーシャの後を付いてくるダンジョンコアに興味を示し、コアルームの中を子供の様に走り回っている。
懸命にコアを振り切ろうと動くミーシャの微笑ましい姿を見ていると、唐突に映像が終わり、ミーシャが帰ってきた。
生暖かい目で見つめられ急速に顔を赤くする。
「ミーシャ、よくやったな。凄く強くなってて吃驚したよ。」
抱き締めて頭を撫でると前回と同じように固まった。
「お、おう・・・こ、これ。」
コアを渡して来たので受け取り、逃げなかったので更に調子にのってみる。
「でも可愛いミーシャが怪我しないかドキドキもんだったぜ。どこか痛いとこないか?」
そのまま、頬っぺたを撫でると再起動して逃げた。
ギャーっとか言って逃げた。
失礼な・・・。




