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捕まった勇者

1ヶ月後。


ダンジョンバトルも無事に終わって俺達はダラダラすごしている。

数日後に俺のレベルが3から18へ、ダンジョンコアのレベルが1へ上がっているのを発見した。

何故かシスに力負けしなかったので、不思議に思い調べたら上がっていたのだ。

どうやら命あるものを殺すとレベルがあがるようだ。

俺が戦わずともレベルが上がるのは実にいい。


そしてミーシャもいつの間にか俺の嫁になった。

どちらの方が酒が強いかで口論になり飲み比べに発展したのだが、俺が酔いつぶれ仇を取るために嫁達も参戦し撃沈。

朝、目を覚ますと裸のミーシャが俺の上に乗っていた。

その後、嫁達(主にキョウカ)に半日ほど正座で説教をくらい責任を取る事になった。

嫁達(ミーシャ含む)には結婚指輪を買わされ、何故か双子にはDXままごとセットを要求された。


あれから大部屋の床を草原にした。

全て灰色だと気が滅入るし、ドリアードが居るので石畳は可哀想と女衆が言ってきたからだ。

それに草原にしておけば昼寝も出来る。

今日も座敷童とままごとをしている双子を眺めながら草原で寝ている。


「よお!何してんだ?」


寝ている俺の上に覆いかぶさりながらミーシャが聞いて来た。

こいつは気配がしないので油断が出来ない。

ツンツンした物言いのくせにスキンシップが過激ですぐに胸をつけてくる。

柔らかくて気持ちいいのだが、TPOを一切気にしない行動は考えものだ。

どけと言うとミーシャは意地になるし、どいても機嫌が悪くなる。

非常に面倒な女だ。


「ミーシャは甘えん坊だな~。ほら抱っこしてやる。」


「なっ!あたいは甘えん坊じゃねぇ!」


ミーシャは子供扱いされると恥ずかしがって離れる。

犬と一緒でかまって欲しくて寄ってはくるが、こちらからかまいすぎると逃げるのだ。

赤い顔をして俺の上からどいてくれた。

まだ逃げないからもう少しかまえという事なのだろう。


「じゃあ、腕まくらしてやるよ。頭も撫でてやろう。」


「う!こ、こんな時間から眠くねぇ!」


後ずさって離れてしまった。

しばらくウロウロしているがそのうちいなくなるのが彼女のパターンだ。


草の匂いを懐かしく思い、目をつぶると腹にドンっと衝撃が走った。

スライム達の1匹が腹の上に飛び乗ったのだ。

見分けはつかないが個体差があり、人懐っこい奴はすぐに寄ってくる。

俺の腹の上にいる奴もそうだ。

上位個体はそれなりに賢いのだが一桁DPの奴はまるっきり犬猫と一緒だ。

ツルツルボディを撫でるとぷるぷると震えて喜ぶ?


そのまま目を閉じしばらくすると侵入者警報がけたたましく鳴り始める。

俺の迷宮は既にキョウカの管轄になっており人は来ない。

そのキョウカ達は迷宮にいるため来るのはゴルド達しかいないのだが、彼らの来る時間は風呂の時間だ。

誰が来たかと思いスクリーンに侵入者を映し出すと、そこにはプレートメイルを着込んだ騎士達の姿が・・・。

それも1人や2人じゃなく、10数名でまだまだ増えている。


「なんだ、ありゃ?」


「あれはダラダッタ国の第四騎士団ね。スー王女の親衛隊でもあるわ。」


キョウカがたすきの様に肩から掛けた手ぬぐいのような物で区別が付くといい得意気に説明してくれた。


「スー王女って誰だ?」


「スー王女はダラダッタ王国の第二王女よ。一言で言い表すなら自由人ね。王様もいずれ嫁ぐし、それまではということで好きにさせてるの。」


スクリーンを見ていると騎士たちは50名ほどまでに膨れ上がり整列している。

そのまま見ていると罪人のように縛られた男とその縄を掴んだキョウカくらいの若い女、おそらく王女か?があらわれた。


「あっ!あれってゴルドさんじゃない?」


薄汚れボロボロになり、分かり辛いが確かにゴルドだ。

王女?らしき女性にケツを蹴り上げられながら前に進んで行く。

山賊と言ってもいいような汚れっぷりに軽く引くが、奴の身にいったい何が起きたんだ?


「また逃げた。」


「よく逃げる。」


「そうなのか?」


あいつ、この世界は神から与えられた修行の場だとか言ってなかったか?


「常習犯。」


「病気。」


騎士達を前に指示を与えている中年を伴い、スー王女が小部屋に入ってきた。

むろんゴルドも一緒だ。


「・・・ゴルドだよな?・・・なにしてんだお前?」


「と、友よ!すまん!捕まった!」


その言い方だと俺が何か指示してお前が逃げていたように聞こえるが・・・。


「ふむ!お前がダンジョンマスターだな。妾はダラダッタ王国の第二王女スーじゃ!直答を許す。」


「しるかボケ!何しに来やがった!」


そのような返しをされるとは思っておらず呆気にとられた王女はハタと気がつくと赤い顔をして叫びだした。


「わ、妾に対しなんという物言いじゃ。野蛮人め!王族に礼すらも取れんのか!」


「俺が野蛮人ならお前等はミミズだろが!召喚勇者に文化レベルの差を聞いて無いのか!それとも差がありすぎて理解できんのか!」


「キーっ!言うに事欠いて妾をミミズじゃと!」


「そもそも何故、敬意を払ってもらえると思ったんだ?決めた!お前は今日から残念王女だ!」


「妾は残念では無い!」


「ちょっと、もう苛めるのはよしなさいよ~。」


乗って来た俺をキョウカが諫める。


「お主は誰じゃ?」


「私は勇者のキョウカといいます。スー王女とは一度お城の舞踏会でお会いしたことがあります。」


「・・・・・・おお!思い出した黒髪の勇者じゃな!何故そ奴と一緒におる!捕まったのかや?」


「・・・え~と・・・捕まったと言えば捕まったんですが、捕まえたと言えば捕まえたような・・・・。」


考えもせずに出てくるから返答に困るのだ。


「で、何故ゴルドは捕まってる?」


まさか下着泥棒でもしたのか。

そして、俺の命令に従ったと言い張ったなら、始めに謝ってきた事もつじつまが合う。


「ふん!妾の要件はこれじゃ!」


そう言いながら残念王女が取り出したのはチョコレートの包み紙。

俺がコーヒーと一緒にゴルドに茶請けとして与えた物だ。


「妾はこれを所望するぞえ!」


ふざけるな!欲しいからと言われて素直に貴様に渡す理由は無い!


「ハッ!ならば対価を示せ!」


「だから、女の子苛めるのよしなさいって!」


「姫様、すぐにご用意します。」


キョウカがしゃしゃり出てきて決めてしまった。


「仕方が無いから恵んでやろう。這いつくばって俺に感謝しろ、残念王女!」


スクリーンに向け中指を立てる。

此方の映像を届けられなくて、この時ほど残念に思った事は無い。


「だから、よしなさいって言ってるでしょ。あんた今日はなんか変よ。」


「その女を見てると、イライラする。きっと前世では命をかけた敵同士だったんだ!」


「あんたの前世って私と一緒でしょ。なに馬鹿な事言ってるのよ!」


「お主等、仲がいいのう・・・。」


「なぁ、あたいがあいつ等しめてこようか?」


「駄目よ、ミーシャ!姫様、今そちらに送ります。」


これ以上はマズイと思ったキョウカが備品室においといたチョコレートをひと箱送りやがった。


「おお!大儀であった!」


「ゴルドを解放しろ!」


「ふん!もはやこ奴に用はない。解放しやれ。」


縄を解かれ、その場に放り出されるゴルド。

荒い息をつきへたり込んでいる。

クソーっ!俺のおもちゃが・・・!


「それでは、妾は帰るぞ。これに懲りたら礼儀を学ぶがよい。」


騎士団が帰った後、ゴルドに事の顛末を聞いた。

ゴルドが俺からもらったコーヒーとチョコレートを知人に振舞っていたら、

その噂が王女の耳に入り珍しい菓子ということでチョコレートの献上を強要された。

お菓子くらいならと献上したが、チョコを気に入った王女が何度も催促してきた。

当然、ゴルドのチョコはすぐ無くなり、入手場所を聞かれたゴルドは身の危険を感じ逃亡。

山中に半月ほど潜んでいたところを捕縛され、魔法で強制的に情報を吐かされた。

その後は王女が騎士団を連れてきて今に至るという話だった。


「・・・勇者の扱いってどうなってるんだ?」


切り札として召喚されてるわりにはあまりにも低い気がする。


「戦闘奴隷。」


「広告塔。」


双子が衝撃的な言葉を吐く。


「一応、勇者としてそれなりに大事にされるわ。

その気になれば成りたての勇者でも騎士団の一つくらいなら相手に出来るし。

だけど、異世界の傭兵って思いが強いんじゃないかな。

だから、自分達の国の民ではないけど、それなりの生活を保障してやってるって感じ。」


「雇い主と従業員。」


「逃げたら犯罪者。」


「実際、勇者の上位クラスでようやく爵位がもらえて領地無しの法衣貴族ってとこかな。」


「そういや、カージャが法衣貴族だったな。」


「そうだ。同志カージャは男爵位を持っている。」


「法衣貴族だと駄目なのか?」


「平民と比較すれば違うが、貴族としてなら法衣貴族でも宮勤めで役職を持っている方が発言力がある。」


「じゃあ、役職もらえばいいじゃん。なんか無いのか?」


「有ると無しじゃ大違いなのよ。そんな簡単に役職はもらえないわ。」


「人気の無い役職ならどうだ?例えば刑務所の所長みたいなの。」


「こっちの世界だと死刑は娯楽よ。公開処刑って凄い見物人が集まるんだから。刑務所自体無いわ。」


「なら、こういう手はどうだ・・・・・・。」

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