堕ちた勇者
あれから時々ゴルドの奴が独りで迷宮に訪れてる。
なにをするでも無しに小部屋に留まりしばらくしたら帰って行く。
多分、俺からの連絡を待っているのだろう。
ただ、シスやリアがいると例の話はできない。
奴とは敵同士だがお笑い勇者は見ていると面白い。
その日、俺はアラームを切り、シスとリアに高級な入浴剤と石鹸のセットを贈って使い心地を試してくれと頼み2人を振り切った。
そしてスクリーンでよくゴルドがいる小部屋を見ると奴がいた。
「ゴルド、聞こえるか?」
「我が友!!!」
「シスとリアに見張られて連絡出来なかった。」
「こうして連絡をくれたんだ、かまわん!!」
「ブラジャーだが少し待ってくれ、それと洗濯済みのものになってもいいか?使用済みは警戒が厳しい。」
「洗濯済みでも構わん!!だが、そっちは大丈夫なのか?我が友!!」
「日にちを開けたら大丈夫だ。3日後の夜8時にそこの小部屋に来てくれ。それと他のダンジョンの情報があったら教えてくれないか?」
「わかった!!ダンジョン情報はギルドにある!任せろ私は勇者だぞ!!」
「了解、それと連絡が取れなかったら次の日の同じ時間で頼む。正直、見張りを振り切れない場合もある。」
「分かってる!!成功を祈る!!」
俺はすぐにシスとリアが使ってるブラと同じサイズのブラを購入し、自室で洗濯機を回した。
柔軟剤を変えたりしながら10回ほど洗濯し続け、偽ブラを作り上げた。
3日後
「ゴルド、待たせた。」
「我が友!!」
「でかい方がシスのだ。」
そういいながら、ゴルドのいる小部屋に偽ブラを転送する。
「おぉおおおお!!!!」
号泣するような声をあげ顔を埋めるゴルド。
正直、ドン引きだ。
「ゴルド、時間が余り無い。ダンジョンの情報はあるのか?」
「おぉおお!我が友!!この勇者ゴルドに抜かりは無い!」
叫ばないと話せないのかこの野郎は・・・。
ゴルドがバックパックから豪華な表装の本を取り出し置いた。
「現在ギルドで分かってるダンジョンの情報全てが載っている。」
マジか!
大丈夫かそんなの持って来て。
「助かる。ところでゴルド、お前はどこの国の人間なんだ?」
「元の国か?俺はスペイン人だ。我が友はどの国だ?」
「俺は日本人のはずだ・・・。記憶が無いんだ・・・・。」
「・・・そうか・・・日本から来た勇者と話す機会があったら伝えておこう。」
「頼む!それとシスとリアが何か疑ってる。次は少し日を開けたい。」
「俺も勇者としての仕事をする必要がある。3ヶ月後にまた来る。」
「分かった。!マズイ!切るぞ!」
小部屋にあった本を転送させてスクリーンを切った。
一方的にゴルドを騙したようだが、心情的にはお互いWINWINのはずだ。
後は俺が偽ブラの事を黙っているだけでいい。
「あれ?ご主人様~この本どうしたんですか?」
「手に入れた。」
俺がゴルドから手に入れた本を見ていると、リアが声をかけてきた。
「これってギルドにある持出禁止の本ですよね。」
「そんな事は知らん。俺に不可能は無い。」
ドヤ顔で威張る俺にリアのジト目が突き刺さる。
「盗んだんですか?まぁ、ご主人様は人類の敵なので人の法は関係無いかもしれませんが・・・。」
「失敬な。俺は盗んだりしてないぞ。無理だ、駄目だは無能が吐く言葉だ。有能な者は出来る事を組み合わせ成果を出すのだ。そしてこの本がその成果だ。」
「まぁ、いいですけど。」
フフっ、ゴルドを手駒にもっと外の世界の情報を手に入れよう。
それにしてもこの本は当たりだな。
暇つぶしのための情報だったのだが、各迷宮で注意すべき罠とか階層も載ってたりするから真似すればすぐ迷宮を強化出来る。
もっとも無敵のG軍団を突破された事がないため、ただの杞憂に終わる可能性の方が高いのだが。
「ねぇ、ご主人様~、そろそろ名前とかちゃんと考えませんか?」
「じゃあ、リアとシスで決めて。」
「いいの?」
「元から考えてって言ってたと思うけど。極端に変なのはやめろよ。」
夕食時
「ご主人様~名前考えましたよ。」
「私も一緒に考えたんだ。中々いいと思う。」
「じゃあ、教えて。」
「「シリアス。」」
「?・・・却下だ。」
「えーっ!一生懸命考えたのにー!」
「どこが駄目なんだ。教えて欲しい。」
「・・・それ、お前等の名前つなげただけだろ?」
「いいじゃないか。私達のお、男って感じがして。」
「私も~なんか運命的な感じがする~って思うんです。」
でた、運命!
女の好きな言葉だ。
こっちの世界でもそうなのかよ。
「はぁ~、じゃあ、それでいいよ。」
もう、面倒くせえ!
どうせ外には出ないしそれでいいや。
『ブーッ!ブーッ!ブーッ!ブーッ!ブーッ!』
なんだ?
侵入者アラームと違う音だ!




