どんなにくだらない事でも初めてやる奴は凄い奴だ
数日後、仕事に復帰したカージャに勇者召喚の詳細を聞いた。
ダラッダ国、ピットン王国、スゲノ帝国の3国で勇者召喚をやるのは事実だが、
その実情はイゴールの迷宮に攻め入り死んだ勇者の補充のためだった。
確か7人死んでるんだっけ・・・。
どうでもいい事なのであまり覚えていない。
「今回の勇者召喚はピットン王国、スゲノ帝国の亡くなった勇者の補充が目的で、ダラッダ国はそれに付き合い1人だけ召喚するようです。」
「王国と帝国は何人召喚するつもりなんだ?それに召喚ってそんなに簡単に出来るのか?」
「それぞれ4人召喚する予定です。召喚自体は善神がもたらした召喚システムを利用するだけなので魔力さえ溜まればどうにかなるようですね。」
あのメメに喰われた坊主、そんなお手軽システム残してたのか・・・
「あれ?でも前に城に召喚されたって聞いたんだけど?」
「その通りです。ピットン王国は違いますが、スゲノ帝国とダラッダ国はその召喚システムを守るために、その場所に城を作ったのです。」
「マジかよ。・・・でもその当時は人族を守るための召喚だから壊されたら困るもんな・・・守るためにはそれが最善手かもしれん。」
「一応、ピットン王国とダラッダ国の方は召喚場所が判明していますが、スゲノ帝国の方は城のどこかとしか分かっていません。」
「そのまま調査を続けてくれ。異世界からの拉致被害を無くすために、そのシステムは潰す!」
「わかりました。召喚について快く思っていない人は貴族の中にもいます。協力を仰ぎ情報を集めます。」
カージャが怖い目をして出て行った。
やっぱ、もと地球の人間は勇者召喚とか言われても、拉致されてる感覚なんだろうか。
とりあえず、うちで一番詳しそうなチビ助に話を聞きにいく。
子供組は4人でジェンガをして遊んでいた。
「ぐぬぬぬっ!ザキとルドの奴め、儂ばかりを攻撃しよる!」
「してない!」
「下手っぴ!」
何故か、お菊の手にはジェンガの木片が握り締められている。
また特殊ルールでやっているのだろうか・・・。
真ん中ばかり抜いて積み上げているためバランスは悪く無いのだが、上への積み上げ方が常識外だ。
バースデーケーキのロウソクの様に四隅に2本、縦に立てられている。
チビ助が半分抜き出た木片をゆるゆると掴みだすが、立てられた木片は少しの振動でも倒れる。
ようやく取り出したと安堵の笑みを浮かべるとその上から木片が落ちてきた。
「ズルじゃ~!!!!」
チビ助が手足をバタつかせるが双子達はジト目で見つめるだけだ。
「チビ共なにしてるんだ?」
ジェンガじゃない可能性もあるので、一応聞いておこう。
「ジェンガじゃ!キョウカに教えてもらったのじゃ!」
駄々をこねていたチビ助が答えるが、ジェンガのルールに縦に立てるようなルールがあっただろうか?
俺も詳しく無いが禁止されてなければいいのだろうか・・・。
ジェンガのルールについて俺が悩んでいると、おやつを寄こせと言ってきた。
まぁ、口をわらせるために、お菓子を渡すつもりだったからそれはいい。
俺はいちご大福を大量に購入して皿にもってやった。
「う、美味いのじゃ!」
「美味。」
「至福。」
チビ助が両手で大福を握り交互に食っている。
双子は1個づつ食べているが、その速度が速い。
お菊は2つ目を食べているが、多分それで腹一杯になるだろう。
メメの前にも置くと吸い込むように食べている。
噛んでいる音が聞こえないから食べずに飲んでいるのだろうか。
「ところで、チビ助は勇者召喚の場所について知ってるか?」
「むっぐぅ!・・あのゲスが作った施設じゃろ!もちろん知っとるぞ!」
慌てずに食えよ。
喉に詰まらせながらも返事をする性根はいいが、口に物をいれたまましゃべるな。
チビ助が言うには人族にでも使えるように簡略化された召喚魔法陣を制御している施設で、魔力さえあれば誰でも使えるとの事だった。
「ただ、魔法陣の形成が面倒じゃから、一度壊れたらもう直せんじゃろな。」
「魔法陣を壊せば使えなくなるのか?」
「魔法陣というか制御用の水晶じゃな。ダンジョンコアによう似とるのが、どっかにあるはずじゃ。」
これはG達を派遣して一気に壊してしまった方がいいかな。
ダラッダ国とピットン王国を先に壊したら警戒されるかもしれないので3ヵ所同時が好ましい。
いや、3ヵ所同時となるとG達より爆破してしまおう。
3ヵ所同時爆破とか中々くるものがあるな。
この世界初のテロリストとして名を残せるかもしれない。
人間ろくでもない事を考える時ほどわくわくしてくるぜ!