ゴルドの未来
カージャにマリーダの手紙を渡した後に俺はチケットを使いG100億匹を派遣した。
ゴルドの逃げた場所は山しかあり得ない。
あの男は逃げる際にいつも山に逃げる。
恐らく山での生活になれているのだろう。
以前、創造神の使徒を探すために、この場にGを派遣したことがあるので、ある程度の地形は調査済みだ。
教会のお膝元のためゴブリンやオークの集落等は無い。
偶にその地域の主のように強い個体はいるが、それ以外は雑魚ばかりだ。
そのため動植物は豊富で勇者クラスなら、素手でも暮らしていけるだろう。
捜索を始めて3日後にゴルドは見つかった。
小さな湧き水のある近くの洞窟で穴居人のように暮らしている。
近くに強いモンスもいないし、元気そうなので詳細が分かるまでは放っておく事にした。
それから更に数日がすぎ、カージャが戻って来た。
どうやらゴルドが何をやらかしたか分かったようだ。
「ゴルドが何故逃げたか分かりました。」
「何をしたんだ?」
「どうやらゴルドは勇者としての知識量の多さを認められて、経論のような事をしていたようです。」
肉体労働者にしか見えないゴルドに先生の真似事が出来るのか。
命じた教会にしても冒険をしたな。
「初めは数学などの簡単な事を教えていたそうですが、そのうち科学の方に話が進みまして・・・。」
この世界は魔法に頼り切っているから科学、化学がとんでもなく発展していない。
その知識を持つゴルドなら独壇場だろう。
さぞかしドヤ顔で説明してたんだろうな。
「別に問題があるように思えないが?」
「こちらの世界は科学的な技術は未発展です。目の前で実験まがいの事をするゴルドは悪魔の御業を使う異教徒に見えたのでしょう。」
話がみえてきたぞ。
「宗教裁判にまで発展し、一時囚われましたがその後に脱獄を果たし、山中に逃亡しました。」
「今のゴルドの現状はどうなっている?」
「悪魔崇拝者として教会から懸賞金付きで追われています。」
「国の反応は?」
「勇者が悪魔崇拝者として教会から追われる事例は過去に何度か起きています。
国としてもそこは、教会側が理解できない勇者の世界の知識に対し嫌疑をかけているだけと理解しています。」
「じゃあ、匿ってもらう事は可能なのか?」
「国から出られなくなるのと、賞金稼ぎには狙われ続ける事になりますが可能です。」
あいつ、ドンドン立場が悪くなるな・・・。
「まぁ、今後の事は後で考えるとして、とりあえず救出するか?」
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ゴルドの確保にはキースが動いた。
現役最強クラスの男としては軽いミッションだったのだろう、3日後に簀巻きにされたゴルドを連れてきた。
「早かったなぁ、流石キースだ。」
「そうでも無い。捕まえるのは簡単じゃったが、教会の目を掻い潜り連れてくるのは苦労した。」
そう言ってキースが苦労話を始めたが、最後の連れ出すために肥料桶の中にゴルドを突っ込んで脱出した件は軽く引くものがある。
「本人が臭さに慣れているから取れた方法じゃな。儂だったら死んでも抵抗するからのう。」
楽しそうに話すが、簀巻きにされたゴルドが嫌に静かだ。
「じゃあ、2人とも風呂に入っていけ。ゴルドはカージャが来るまで迷宮に待機してもらうが分かってるよな?」
キースが頷き、足もとのゴルドをこずくと、ゴルドからも弱々しい返事が聞こえた。
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2人が風呂からあがる少し前にカージャがやって来た。
ゴルドの裏工作のため彼は王城に行っていたのだ。
国としては表向きはゴルドを見捨てているので、ゴルドという男が王国内にいるのは好ましくないのだ。
まぁ、早い話が勇者ゴルドは死に、新しい勇者が召喚された事になったのだ。
そのためゴルドには名を捨ててもらう事になった。
さきほど目が死んでいたのは、その話をキースから聞いていたためショックを受けていたようだ。
俺など名前どころか家族の記憶すら無いのに随分甘えているものだ。
そのため、第一回ゴルド改名会議がはじまった。
出席者は俺とカージャだが、こういったものは人数が多いといつまでも決まらないものだ。
サクッと決めるためには、決定権のある少人数で話合うに限る。
「それではゴルド改名会議を始める。あと10~15分で風呂からあがってくるから、それまでに決めよう。」
「私達で決めていいのでしょうか?」
「ゴルドには国からの命令だと言えばいい。匿ってもらうんだ文句は言わせん。」
「はぁ、・・・それでは一応スー王女から案を頂いているので、それを先に言わせてもらいます。
スー王女からは『オークスキー』『オンナスキー』『ヘチャムクレ』の3つの案を出して頂きました。」
オークスキーはオークにモテるが好きなわけじゃないからなぁ。
オンナスキーは行動と名前が一致して良さそうだが、どうだろう・・。
最後は名前じゃ無くて悪口だろう、あの王女はやはり頭が軽すぎる。
「その中じゃ『オンナスキー』が一番無難だな。名は体を表すというか一番シックリくる。」
「そうですね。ただゴルドはウンと言わないでしょう。」
「カージャは何か無いのか?」
「私ですか・・・う~ん・・・ならば『ドリアン』は如何でしょうか。」
臭いから取ったか・・・こっちの世界の人はドリアンを知らないから、
花の名前だとか言えば誤魔化せるが、他の勇者達にはもろバレだぞ。
「『ドリアン』か・・・悪くは無いが、臭そうだな。」
「ならば神は何かありますか?」
「う~ん・・・ゴルドから連想するものと言えば、オーク、山賊、臭い、不幸・・・そうだ、
『カラミダド』はどうだ?確かスペイン語で不幸とか災害はそう言うんだ。」
厨二病患者には喜ばれそうな名前だ。
『ドリアン』や『オンナスキー』よりは100倍もいい。
「『ドリアン』でいいのでは?人が近づいてこない名前の方が安全ですが。」
どうやらカージャは『ドリアン』一択らしい。
「ならば、ゴルド自身に決めさせよう。」
頷くカージャとゴルドの風呂上がりを待つ。
ゴルドの未来がここで決まる!!!