世界の主
このまま長引けば不利と悟った破壊神が距離をつめ禿げに襲い掛かる。
狙っているのは目だ。
だが、しかし、禿げには瞼ガードがある。
ナイフの様に鋭くきらめく爪が禿げの瞼で止められる。
物理法則を無視したような出来事に一瞬止まる破壊神。
その機を逃さず、禿げが抱き着いた。
この禿げ、抱き着く以外の攻撃方法がないのか!
ジタバタ暴れる破壊神に禿げが頬ずりを始めた。
一層激しく暴れ嫌がる破壊神に憐憫の情がわく。
だが、その抵抗も次第に弱まっていく。
最後に断末魔のようにピクピク動くとグッタリと体の力が抜ける。
禿げの力が増し、抱き締める両腕が体にめり込むと、破壊神の額の目がポロッと取れて床に転がり落ちる。
ゲームとかだとラスボスは2~3回変身したりする。
用心深くしばらく見ていたが動きが無いのでどうやら禿げが本当に勝利したようだ。
スクリーンを消し、禿げを視界から隠すと安堵の息が出る。
たぶん、勝ったはずだが・・・変わった感じが無い。
もう一度、法の神との交信が必要なのだろうか。
とりあえず、キョウカ達と一緒に赤ちゃん部屋に行く。
家の方にむかうとキラキラしたドーム状のもので家がおおわれている。
天狐の婆さんの防御結界だろう。
入ろうとすると弾かれる。
どうしたものかと考えているとミーシャが殴って壊した。
部屋に行くとへばった天狐がシルキー達に解放されている。
赤ちゃん達が走り寄って来たので腰をかがめ笑顔で両手を広げると、肩のメメに殺到した。
くそ!・・・相変わらずメメの赤ちゃん人気は俺より高い。
ハゼゴンを倒したが、変わった感じがしないと言うと、
チビ助が本当に倒したのなら称号が付いているはずだと言うので確かめた。
名前:シリアス
種族:ダンジョンマスター
職業:ダンジョンマスターLv972
年齢:18
称号:異世界人、砂糖王、虚無の主、世界の主
HP:97200
MP:1119744000
スキル:初心者パック(鑑定、アイテムボックス、言語理解)、メイクゴーレム、MP増大、浮遊Lv3、精神耐性Lv2
固有スキル:ダンジョン管理(ダンジョン作成、DPストア、召喚、ガチャ)
特殊スキル:異世界ストア、スーパーデンジャラスキック、深淵なる魔力、付与魔法、時間停止
資格を持つ者が消えて、世界の主が増えている。
そして、スキルに精神耐性が生えている・・・間違い無く禿げの仕業だろう。
それにしても、レベルがあれだけ上がっているのにスキルを覚えないのは何故だろう。
時間停止を覚えてから500レベル以上上がってるはずなのに・・・。
全てのルールを法の神が決めているなら、これも法の神の仕業のはずだ。
法の神に訴え出るべきだろうか・・・。
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俺が世界の主になって数日後、人族と魔族の間で不戦協定が結ばれた。
長い間、敵同士として殺し合いをしていたため、国交を結ぶという事は無いが、お互い領土を決め干渉しないようにという事になった。
イゴールが巨大ゴーレムと龍の軍団を引き連れ、嫌なら徹底抗戦すると宣言したためのものだが、とりあえず世の中は平和になった。
私怨を捨て去るには時間がかかる。
100年もすれば恨みを知らない世代に代わり、国交を結ぶかもしれないが、どうなるかは分からない。
一番大事なのは、もう俺に面倒事が降りかからない事だろう。
この世界で出来た家族を大切にし俺は生きていく。
前世の事は覚えていないが、きっと今の方が幸せなはずだ。
邪神がどんな奴かは知らないが、お前のお陰で俺は幸せを手に入れられた。
感謝しよう・・・。
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俺がのんびりと毎日を送り、子供の成長を願っていると、カージャが慌てて迷宮に駆け込んできた。
「た、大変です!ゴルドが脱走しました!!」
どうやら、俺はまだ静かに暮らす事は出来ないらしい・・・。
「詳しく話してくれ。あの馬鹿何故逃げたんだ?」
ゴルドはとある事情でエントラー教会預かりとなり、無償での奉仕活動を行っていた。
一度、罪状は軽くなったのだが、何をしたのかその後、罪状が天井知らずで跳ね上がった。
俺の犠牲とカージャの策略で再度軽くなったはずなのだが、それをぶち壊してあの男は逃げ出したようだ。
「詳細は現在調査中ですが、ゴルド捕獲のために教会の第三聖騎士団が動きだしました。
第三聖騎士団は名前は聖騎士団ですが、教会に害があると判断された者を抹殺するための騎士団です。
先にこちらでゴルドを確保しないと彼の命は無いでしょう!」
個人的にはゴルドなら、それでも生き延びそうな気はするが、あいつ思ったより弱いからなぁ・・・。
「Gを展開して調べよう。見つけたら教えるから、すぐに確保に動いてくれ。多少痛めつけた方がいいんじゃないか?」
「捕獲にはキースを派遣します。キースはゴルドに戦いを教えた、いわば師匠ですから容赦なく連れ帰るでしょう。」
「それと協会側の方にも連絡を頼む。まずは今回の脱走劇の詳細が知りたい。マリーダに親父さん宛の手紙を書いてもらうから、後で取りに来てくれ。」
俺の異世界での生活はまだドタバタするらしい・・・。




