狂信者
数日後イゴールが連れてきたのは黒い羽を生やした男女が3人だった。
カラスの羽のような黒い羽を背中から生やしている以外普通の人にしか見えない。
羽が白ければ天使と言っただろう。
「そいつらが例の村の奴等か?」
「左様で御座います。お館様。」
ダンジョンの小尾部屋に連れてこられた奴等は初めキョロキョロと周りを見ていたが、
俺が声をかけると驚き、更にイゴールが俺に対し臣下の礼を取ると目を丸くして動きを止めた。
「俺はこのダンジョンの主であるシリアスだ。お前等の名前を聞こうか。」
「俺はエイネスラ、堕天の一族の長をしている。こっちが妻のミースと神官長のサラだ。」
エイネスラと名乗った男が紹介すると後ろに控える女が2人頭を下げる。
堕天の一族ってやっぱり天使関係なのか・・・。
「お前等に来てもらったのは他でもない、お前等の信仰するハジィゴという名の神について聞きたい。
単刀直入に言うがハジィゴとはなんだ?ハゼゴンの事じゃないのか?」
「!!!・・・な、何故その名を・・・。」
「お館様が聞いておられる!質問に答えんか!!!」
驚きで口をつぐむ男の首にブン!とイゴールが大鎌を突きつける。
俺が似合うと思って渡した死神の鎌だ。
ちゃんと使ってるんだな。
「・・・その名は神の真名だ・・・何故、お前如きが知っている・・・。」
ビンゴだ!!
後は居場所だな。
「ふむ・・・お前等、邪神に宗旨替えしなかったのは立派だが・・・知らないんだな・・・。」
「な、何を!・・・」
「ハゼゴンが何かなのを・・・。」
「何を・・・ハゼゴン様は魔族を救済する真の神だ!それ以外有るはずが無い!!」
狂信者だな・・・面倒クセェ・・・。
「既に、善神も邪神も、創造神ですらこの世界から追い出してるぞ。いつ救済にくるんだ?そのハゼゴン様とやらは・・・。」
「そ、そんなはずは・・・。」
「あるんだよ。だから魔族の国にメメの神殿が建ってるんだろうが!本当の神に立て付くゴミどもが!!!」
脅しと虚言で情報を引き出してやる。
こういう輩は無駄にプライドが高いから煽られるとポロポロ情報を落とすんだ。
「しょ、証拠はあるのですか?」
今度は神官長かよ。
証拠というならお前等が示すのが先だと思うがな・・・。
「あるから言ってるんだ。俺の元には虚無の神の使徒であるメメがいる。お前等が信じようが信じまいがハゼゴン等よりよほど強大な神だぞ。」
「くっ・・だからといってハゼゴン様が間違ってるとは限らない!」
「ならば、何故奴は姿をあらわさん。怖くて隠れてるんじゃないのか?
なんせ善神の使徒はメメに喰われたからなぁ!!
それより弱いハゼゴンなら逃げ隠れるのが当然だろ。」
「そんな事は無い!!ハゼゴン様は無敵だ!!!」
「そうか・・・なら・・・どこにいるのか教えてくれよ。ちょっと行って話付けてくるから。」
「は、ハゼゴン様は神の国より見ておられるのだ。我らが神をどうこうするのではない!!」
・・・しくったな・・・呼び出す方法とか封印されてる場所があるのかと思ってたが、・・・本当にただの狂信者かよ。
「つまり、お前等は会う方法を知らんのか?」
「知っていても貴様に教えるものか!!」
あ~知らんな、これは・・・。
「イゴール、何かの役に立つかもしれんし、城に幽閉しとけ。」
「ははっ!お館様の御心のままに・・・。」
駄目だこりゃ。
ここまで来て外れかよ・・・。
「イゴール、一応こいつらの村の警護はそのまま続けろ。それとレプラコーンの一隊を差し向けるから家探しを頼むぞ。」
「御意!」
イゴールが悪態をつく堕天使族をこづきながら連れていった。
ついでにG部隊も派遣し周りを調査しよう。
そもそもこの世界にいないとしたら、どうやっって戦うんだ。
チビ助はこの神の試練をやり遂げた奴がいると言っていた。
それに今までの言動をみると方法は必ずあるはずだ。
・・・クソチビに聞いてみるか。
また知らんとかいいそうだなぁ・・・。
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「上位の神ならば呼び出せるぞ。儂等でも可能じゃ。だがつながりが無ければ無理じゃな。」
案外あっさり答えやがった・・・今までの苦労はなんだったんだ・・・。
「つながりってのは何の事だ?」
「儂は邪神の分身体じゃから、創造神とも破壊神ともつながりがない。」
「ん?なんで話に創造神が出てきた?」
「創造神と破壊神は表裏一体、光と闇よ。故にどちらかとつながりがあれば呼び出せる。」
「邪神と善神もそうなのか?」
「邪神、善神はお主等が勝手に言っておるだけじゃろ。ゲームの対戦相手で双方につながりはないわ!」
「それって何があればいいんだよ。」
「そんな事、儂が知るか!!それより儂は情報に対する対価を所望するぞえ!!」
澄まし顔で対価を寄こせと言われてもなぁ・・・。
まぁ、邪魔さえしてこないならいいだろう。
「何が望みだ。」
「儂もバケツプリンが食べたいのじゃ!!故にバケツプリンを所望するぞ!!!」
双子達にでも聞いたのだろうか。
いいぞ、お前も吐くまで食って腹を壊し、苦しむがいい!