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買わなければ宝くじは当たらない

「友よ・・・すまん・・・捕まった・・・・。」


小部屋に入ったゴルドが開口一番謝ってきた。

見れば分かるが、今回は捕まる要素が無いはずだ。


「それは分かったが、・・・聖女の事を聞きに行っただけで何故捕まるんだ?」


「この男は我が教会内で窃盗の疑いがかけられている。」


全身鎧が口を開いた事によって分かったが、こいつ女だ。

よく、あんな鎧着て動いてられるよな。

それにしても盗みだと・・・何を・・・あっ!あの本か・・・。


「まぁ、待て!きっと盗んだわけじゃ無く、ただ借りただけだ。」


「このような物を借りて何をするつもりだ?」


そういいながら鎧の女が取り出したものは、俺のよく知るものだった。

そう、以前俺が作った偽ブラだ。


ゴルドの顏が青くなり俺も絶句する。

こっちかぁ・・・・。


「まぁ、待て!それについては説明が出来るが、機密に関するものもある。ゴルドを部屋から出して、2人だけで話したい。」


「・・・・いいだろう。だが、騙していると分ればその時点でこの男は処刑する。」


鎧の女がそう宣言し、ゴルドを小部屋の外に待機している奴等に渡した。

戻ってきて部屋の中央で仁王立ちになる。


「長い話しになると思う。これに座って、これでも飲みながら聞いてくれ。」


俺は簡易応接セットを小部屋に送り、飲み物としてオレンジジュースも送った。

黄色いオレンジジュースを首を傾げ見ていたが、椅子に座り兜を外すとかなりの美人さんが顔を出す。


「言っておくが、私は加護のお陰で毒など効かないぞ。」


「そんな狡い事はしない。一口飲んでみれば分かると思うが・・・。」


一口飲むと驚いたように目を丸くし、残りも一気に飲んでしまった。


「果実を絞った物か?中々の美味だな。」


気に入ったようなのでお替りをデキャンタで送ってやる。

こいつが口走った加護についても詳しく知りたい。


「まずは、その品の説明をする前にゴルドについて話す必要がある・・・。」


俺はそこでゴルドがいかにモテないか、そしてどれだけ不幸かを切々と語った。

生きていても良い事が一つも無く、救いの無い人生を歩んでいる事を多少脚色しながら語ったのだ。


「勇者なのに・・・愛してもらう事すら出来ないのか・・・なんと不憫な男だ・・・。」


「そうだ、モテたのはオークの雌達にのみだ。もしお前がオークの雄にしかモテなかったらどうする?」


「潔く命を絶つな・・・。」


「そうだ!普通はな・・・だがゴルドは勇者だ。この世界のために戦う必要があるんだ!」


「・・・彼の事は分かった。だがそれで、窃盗を働いていい理由にはならんぞ。情状酌量の余地があるだけだ。」


「分かっている。だがあれは盗んだものでは無い。」


俺はここで、ゴルドの魂を救うために偽のブラを作り上げ、ゴルドに渡した事を伝えた。

もちろん本人には口が裂けても話さないように念を押して。


「そうして、ゴルドは立ち直り、あれをお守り替わりに持っているだけなんだ。」


「そうだったか・・・しかし、あのような変態行為は・・・。」


「待て!誰にも迷惑をかけないならいいんじゃないか?それで勇者は戦えるんだぞ。」


「う~む・・・しかし。」


「俺から一つ提案があるのだが、貴方がゴルドと付き合って、奴を正しく導いたらどうだろう?みてくれ以外悪い奴ではないぞ。」


「それは、断る。私は私の心に正直に生きる。」


くそ・・即答かよ。

あわよくばと思ったがやはり駄目か・・・・。

ゴルドが蹴られても平然と彼女に話しかけていたのも、きっと惚れたせいだろう。

また、記録が更新されるな。


「それは残念だ・・・ところで、さっき加護とか言ってたがエントラーの加護持ちなのか?」


「ふっ!そうだ私は創造神様の加護を持つ。」


「どうやってもらったんだ?」


「あの山には聖獣様が住んでいる。その聖獣様に認められたから私は加護を頂けたのだ。」


「ゴルドも貰えるか?」


「聖獣様次第だ。お前の話を聞く限りもらえてもおかしくない高潔な魂の持ち主に見えるが、変態行為がどうでるか私には分らん。」


「ゴルドはどうなる?」


「一度連れ帰り報告する。大司教様次第だが、話を聞く限りそこまで重い罰にはならんだろう。」


罰は受けるの確定かよ。

無罪放免にはならないんだな。


「手間をかけさせた。これを持って行け。」


俺はチョコレートを箱ごと女の前に送りつけた。

ひと箱分だから1000枚くらいは入ってるはずだ。


「なんだ、これは?」


「チョコレートという菓子だ。食べ方はゴルドに聞け。」


駄目かもしれんが最後のあがきで接点を作ってやろう。

宝くじだって買わなければ当たらないのだ。

逆に可能性さえあれば、どんな奇跡でも起きる事はある。


「うむ、それでは遠慮なく頂こう。」


その後、悲しい目をしたゴルドがドナドナされて行き、ダンジョン内は無人になった。

分身体が何か分からないが、その聖獣とかいうのが非常に怪しい。

一歩ずつだが答えに近づいていってる気がする。


後はゴルドが無事に帰ってくる事と、立ち直る事を祈るだけだ。


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