師匠の過去殲滅の獣その6
ゲニアが吹き飛ばされる直前、広間の中央に居たマルディシオンが影へと沈み、ゲニアの側へと一瞬のうちに移動したのをアリゼア、ミラーナ、マークは見ていた。
アリゼアは自身の特殊スキルを発動し赤いオーラが立ち上る。
ミラーナは光の精霊ウィスプと色の精霊ビフロスを呼び出す。
マークは先程の行動を短距離の転移魔法ではないかと推測し、速度で対応するために『雷纏』を発動。
ウィスプが閃光を発し目眩ましをする、アリゼア、マークがマルディシオンへとそれを合図に突貫する。
アリゼアが爪で、マークは剣で両サイドからの攻撃。
しかしマルディシオン硬貨した素手で両方の攻撃を受け止め拘束する。
「獣人の方、まずまずのお力素晴らしい、けれど狂人化のスキルでしょうか? 長くは持ちませんよね? 人族の方も素晴らしい、その魔法に速度、並の努力ではたどり着けない領域にいるのでしょう……しかしまだまだですね。失望しました。」
高速で飛来する三叉鎗がマルディシオンの腹部へと突き刺さる。
それと同時にアリゼア、マークの拘束が緩み離脱。
「グフッ」
マルディシオン腹部に突き刺さる鎗を無造作に抜き放り捨てる。キンキン、カランカランと空間に音が響いた。
「聖の気を込めた投擲とは厄介ですね、竜人の方の階位も高かったのは誤算でしたよ。聖の気まで階得しているとは、多種族と共に行動しているので雑魚だと思ってましたよ。」
腹部に穴が三つの穴が開いているのに出血が見られない、煙の様なものが出ており、だんだんと穴が小さくなっていくのだ。
「やはり聖の気の影響でしょうか……いや長い間封印されていましたからその影響かもしれませんね。治るのが遅くて嫌になりますね。」
マルディシオン腹をさすりながらどこか楽しげに会話をする。
アーディはそれどころではなかった。
「確かに拙者は修行の身、先達の方々ほど極められているわけではござらん、なぜ貴様がそれを知っている!!」
「それは簡単なこと、過去にあなた方竜人と戦ったことがあるからですよ、えぇと確か名前はナ、ナ、ナーガラシャでしたね、思い出しました。」
「ナーガラシャ様は400年以上も昔のにご活躍された英雄と拝聴する御方……。」
「それでも彼の晩年の時でしたがね、そうなるとこれほど力が弱まったのにも納得ですね。悠長に話しすぎました、それでは覚悟してくださいね。皆様。」
すると背後より大槌が横殴りに振られマルディシオンにお返しとばかりに壁へと吹き飛ばされる。
気絶していたはずのゲニア、血だらけではあるが傷は癒えているようだ。
ミラーナはウィスプの閃光の際にビフロスにより姿を消し、ゲニアの元まで行くと命の精霊ラヴィに頼みゲニアを戦線に復帰させた、ラヴィはアーディも共に癒していたのだ。
姿をくらましたまま、マルディシオンが封印されていた部屋へと急ぐのだった。
「先程の仕返しじゃからのぉ、きっついのお見舞いしてやったわい。アーディ得物は大事にせにゃいかんのぉ。」
三叉鎗を拾い上げ投げ渡す、受け取ったアーディもバトントワリングのように器用に回転させポーズを決める。
「英雄ナーガラシャ、彼のものを越える、いざ参る!!」
ガラガラガラと叩きつけられたマルディシオンが起き上がる。
「ガァァア!! キサマラ、調子にノリやがって、まとめてコロシてやる!!」
影へと沈む。
狙われたのはゲニア、出現と同時にマークがマルディシオンの拳を剣で弾く、そしてアーディの鎗が、アリゼアの狂人化している攻撃がゲニアの大槌がマルディシオンに絶え間なく絶妙な連携で隙を与えない。
互いに庇い合いながらマルディシオンに傷をつけていく、殲滅の獣も同様傷が付くのだが、ミラーナの魔力を糧とし残っているラヴィによって傷が癒されていく。
この戦闘が数秒、数十秒だったのか、数分、それより長かったかもしれない、集中した時間、今までの経験を凝縮したかのような戦闘、しかし連携に綻びが生じ始める。
アリゼアの動きが悪くなってきている、ドラゴンとの戦闘から、柩に魔力を吸われ、そしてマルディシオンとの戦闘と連戦である、さらに狂人化のスキルにより魔力の消費、いかに現代最高峰冒険者も魔力の回復なしでは最高のパフォーマンスを維持することは出来ない。
ここまでよく持ったと並大抵の精神力では魔力を吸われた段階で心が折れていただろう。
精神的支柱、殲滅の獣のリーダーである。
そしてマルディシオンの発せられている謎の言語、それは魔力を帯びている。
ラビィの回復が無くなったことで戦闘の優劣が変わる、そしてアリゼアの赤いオーラが消える。
「ガァッ!」
消えた狂人化のスキルを見逃すほどマルディシオンも甘くなかった。吹き飛ばされ、ゴロゴロと転がり止まるとそれ以上動く気配がなかった。
「一匹。」
アリゼア抜けた穴を埋めるべく奮闘するのはゲニア、凹んでしまっている楯へと変更し、マーク、アーディへの攻撃を弾き、反らし、受け止める不撓不屈のゲニア。
しかしゲニア、マークの速度が落ちる、使用している武器類も重く感じる、疲労ではない感覚、しかし淡い光を纏ったアーディに変化はない、むしろこの強敵との戦闘により急速に成長しているようなそんな印象すら覚える。
「聖の気がウゼぇ、他のザコにはようやく掛かったようだ、ギャハハハハ」
先程まで紳士らしく振る舞っていたマルディシオン今ではキャラが変わってしまったかのような印象を受ける。
マルディシオンを中心に衝撃波三人を吹き飛ばし、アーディの元へと駆け寄る、アーディも即座に起き上がり鎗で迎撃一対一でマルディシオンに後れをとらないのは殲滅の獣最強の戦士だからかはたまた竜人の意地か。
弓による援護が加わった。高速で飛来する矢がマルディシオンの右足へと刺さる。
「グッ、クソアマァ!!」
「マーク、ゲニア、これを!!」
投げ渡されたものを受けとる。
「奴の力を弱めるわ、柩はダメそれでも使えるものを精霊様に教えてもらったから。五つそれを奴の体に!!」
ミラーナはゲニアを治癒したあと部屋へと向かいそこで光精霊のメーティスに知識を借り、調べ柩は使い物にならないが使われている素材から封印の触媒として使えるものを選別し持ってきたのだ。
「ミラーナ、アリゼアを頼む!!」
「わかったわ!」
「マーク、お前は最後の止めを指すためにあれをやれ!! 今まで成功しとらんかもしれんが今がそのときじゃろう!!」
ゲニアはミラーナから渡された触媒を手にマルディシオンの元へと駆け出す。
アーディは肩で息をし、満身創痍の体にむち打ち対峙していた、ミラーナの矢を受けてからマルディシオンの動きが精彩を欠いたからこそ今闘えているのだろう、種族を越えた頼れる仲間が戻ってくるまで準備が整うまで自分のできることをするだけだった。これほどまでに苦戦したことは殲滅の獣は経験したことがない、そんな状況が満身創痍の体が鎗を使い続けたアーディの精神が昇華された。
今までも動きに無駄があったわけではない、アーディ自信も自分が今最高の状態へとなっていることを自覚できた。
怒濤の突きがマルディシオンを圧倒する。
ゲニアが到着すると即座に触媒をアーディの鎗により開けられた穴へと二つねじ込む。残り二つ。
「グギャャャ!! コロス、コロス、コロス!!」
マルディシオンの怒気と同じく魔力の爆発が起こりアーディ、ゲニアが吹き飛ばされる。
アーディは踏みとどまっていた糸が切れたかのように倒れ伏す。
ゲニアは歯を食い縛り残り一つをマルディシオンへと打ち込むために立ち上がる。
「ヨクモ、ヨクモ、ヨクモコノワタシヲ、コケニシテクレタナ!!」
闇の玉が生成されゲニアを襲う被弾しながら突き進む。
「ガァァァァッ!!」
背後より動けるはずのないアリゼアがマルディシオンを羽交い締めにする。
取り押さえられたマルディシオンの眉間に矢が刺さる。残り1つ。
ゲニアがようやく到着し、最後の触媒を触媒を打ち込んだ。
「マァーグ!! 止めじゃ!!」
仲間が強敵の動きを止め舞台は整った。
今まで一度として成功したことはない技を、しかし今やらねばいつやるのだと。
「雷よ、我は共闘する者なり、雷の神にして、戦神の怒り、鳴る神轟き、組する、電霆・雷貫手!!」
頭上より一筋の紫電がマークに降り注ぎ、利き手の右手へとバリバリバリバリと紫電を纏う。
気持ちの高揚を感じた、成功させなければという気持ちが勝った瞬間だった。
マークは紫電を纏ったまま超高速でマルディシオンへと突貫し、その胸を貫いた。
そのままマークにもたれ掛かるように力を失うマルディシオン。
この時すべての戦闘が終了したと勝てたのだと誰もが思った。魔獣であれば光の粒子へと変わるのだが、変わらなかった。
マークはマルディシオンを貫いた手を抜くために体を離したときだった。
ドスッ!!
マークの心臓にマルディシオンの手が突き刺さった。
マーク自身も死んだと思った、時が止まったような錯覚に陥る。
「いやっ!マーク!!」
ミラーナの悲痛な叫びが木霊する。
「ワタシハ、コレデ消えるデショウ、アナタの魔リョクヲ糧にフッカツ、10年、オマエの力がウシナワレ、死ぬ! ソノ恐怖ヲ味わえ、ギャハハハハ」
そう言葉を残しマルディシオンは黒い霧となり、消えたのだった。
マークの胸に赤黒い痣を残して……
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