師匠の過去殲滅の獣その4
こうして殲滅の獣はSランク昇格試験の迷宮攻略を終えるのだった。
ドラゴンの居た場所に魔石と魔方陣が現れた、ダンジョンの最下層のボスを討伐すると地上へと送り届ける魔方陣が今までの御褒美ではないが現れるのだ。
そそくさと魔石の回収を済ませ、帰り支度をしていたのだが………
最初に違和感に気がついたのはマークであった。
マークは他のダンジョンでも転移の魔方陣が出現すると調べるようにしていた。
最終的には自分で転移の魔法を使えるようにしたいと言う理由からだ。
魔方陣をぐるりと回り、ほぼ同じ紋様であることを今までのメモと照らし合わせチェックしていく。一部違うところがあるのだがその部分はすべて違う、それをマークは移動する距離なのではないかと推測していた。
黙視が終わり、魔力感知による観察だ。
「ん? 今までよりも魔力量が多いか? いやしかし……」
「何をぶつぶついっとるんだ?早う帰るでぇ!!」
アリゼアに急かされるが、ミラーナの言葉がヒントとなる。
「ドラゴンのものだと思ってたんだけど、闇の魔力がこの部屋には多いみたいよ。」
「アリゼア、もう少し待ってくれ、なにかあるはずだ。転移の魔方陣には近づかずに、この部屋のちょっとした違いでもいいから見て気がついたら教えてもらっていいか?」
閉鎖された空間に一ヶ月ほど居たのだ、早く帰りたいはずのパーティーメンバーは文句も言わずにマークの指示の通り、探索を開始した。
しばらくすると
「……ハッ!!」
ガギンッ!
鎗を構え壁に突きをするアーディの元へ皆が集まってきた。
「アーディなにかあったのか?」
「マーク殿、この壁変ではござらんか?」
入り口から離れてはいない壁に他とは注意してみなければ変わらないが違いがあった。そしてアーディの突きで傷がつかないのは例えダンジョンの壁であってもおかしいと判断できる。
「そういうことならわしの出番じゃな。」
大槌を握りしめたゲニアが前に出る、回りのメンバーも離れると一本足打法とでも言うのかフルスイングで違和感のある壁へと大槌を叩きつける。
ドガーン。
点でダメなら面で破壊を試みたのだが多少壁面の表面が欠けたがそれ以上にこの壁は頑丈だ。
ゲニアがスタスタと別の位置に移動しもう一度フルスイングで壁へと大槌を叩きつける。
ガラガラガラとダンジョンの壁が大槌の衝撃に耐えられず崩れた。
「その壁わしのフルスイングで傷つかんとなると、何かありそうじゃのぉ。」
「契約せし、闇の精霊シェイド、土の精霊ノーム、我が魔力を対価とし、聞き届けよ。この違和感の正体を教えて。」
言霊のようなシェイドと土の中より小人が現れる。
シェイドは魔方陣の方へ、ノームはアーディの見つけた壁を調べだす。
「□&○%$■☆♭*!:」
「▲☆=¥!>♂×&◎♯£」
「二人ともありがとう。」
ミラーナへと何語かわからないがシェイド、ノームの順で報告する。
「精霊様達が言うには魔方陣に微量の闇魔法が組み込まれてるみたいよ。それも魅了、魔方陣に意識が向くようになにかを隠したいみたいね、まるで思考誘導でもされてるみたい。そしてその壁の向こうだけど……道が続いているみたいよ。」
魔方陣の魔力が多く感じたのは闇魔法が含まれていて、さらに先へと進む隠し通路がこのボス部屋にはあったと。
「しかしこの壁はわし達ではどうにもできんのじゃないか?アーディもゲニアも歯が立たんかったんじゃし……」
「抜かりはないわ!精霊様が言うには。」
入り口へと向かって歩きだし近くにあった地面から出っ張っている岩をぐるりと回すミラーナ。
ゴゴゴゴゴゴゴッ!
とフロア全体が振動、そしてアーディが見つけた場所に人一人が通れる程度の道が現れたのだ。
ミラーナいわく罠などの発見には土の精霊が、魔力を伴う罠には闇の精霊が適任らしく、それで今回シェイドとノームを呼び出したとのことだ。
そしてマークは思っていたことを口にする。
「それと気になっていたのだが、この先がこのダンジョンの本当のボスなんじゃないか? 各階層のボスはゴブリンキング、トロール、ゴーレム、サイクロプスと人型の魔獣だったのに、最後だけなぜドラゴンだったんだ?」
「マーク殿それは確かにそうでござるが、拙者にはだんだんと巨大化していたようにも思うのだが。」
「確かにサイズは大きくなっていたが……気を引き閉めた方がいい気がするな……。」
「この奥……わしの勘もそがいに言いよるでぇ。」
アリゼアの勘は当たる。このパーティーではそれが常識だ。
「ほっほっほ、わしが先頭を行くでよかっかの?」
「あぁしっかりと隊列組んで進んでいくか。」
「……では拙者が殿を務めよう。」
ゲニアを先頭にアリゼア、マーク、ミラーナ、アーディの順で進んでいく。
その通路はダンジョン内であるにも関わらず魔光石の光が弱く視界が悪いのだが、進むのには苦労しなかった。
ただまっすぐな通路があるだけだ。罠などを警戒し進むがあの入り口が本来気がつくはずのないトラップであり、侵入してくるものを想定していなかったようだ。
奥へ進むとドーム状に開けた場所にたどり着く、その部屋の中央に柩が鎮座していたのだった………。
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