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僕とジョージと師匠の秘密

 僕、ジョージ、師匠、アリゼアさん、ゲニアさん、ミラーナさん、レイの7人で師匠の家へと帰ってきた。

 夕食時と言うこともあり、各々がどのように活動してきたのかをそして、僕とジョージの事を話すのは飯を食べながらということになった。


 料理を担当するのは僕だ。師匠達メンバーはすでに喉を潤す体制になっていた、その中でも早かったのはドワーフであるゲニアさんが自前のマジックバックから酒樽を出していた。


 お酒に合うものもついでに作るか、ふつうの食事もするだろうから、それもけっこう時間がかかりそうだな……

 気配もなく後ろから声がかけられた。


「……………私も手伝う。」


「ワァッ!? 脅かさないでよ……ねぇまったく今気配感じなかったんだけど……。」


「……………何をしたらいい?」


 声をかけてきたのはレイだった、脅かすつもりはなかったようだけど、手伝ってくれるのはありがたいのでお願いする。


「人数も多いから簡単なシチューでもと思ったんだけど、それを頼んでもいい?材料はあるものなら使っていいから。」


「……………わかった。」


 僕が取りかかるのは異世界物の小説ではほぼ定番になってる揚げ物、じゃがいもを揚げるだけの簡単なフライドポテトだ。

 油も前回の買い出しの時に量が増えていたから問題ないだろう。

 お酒のおつまみになるだろうたぶん……


 フライドポテトが出来上がり持っていくと「フライドポテトじゃない。」「聖王国にもあったぞ。」「王都のギルド酒場にもメニューにあるでぇ。」と渡り人達がこの世界に広めていたようだ。


 レイの作ってくれたシチューも手際がよく、あっという間に出来上がっていた。

 皆で多くの会話をした中心は師匠のパーティーの四人だったけどね、それを聞いているだけで面白かった、大分時間がたった頃ようやく食事を終えたので本題の僕とジョージについて話すこととなった。


 それまで失敗談やらくだらない話をしていたのだが、師匠が改めて話し出した。


「ヴァンとジョージについてなんだが、ミラーナその言い方が悪いかもしれないが、レイは信用していいんだよな?」


「大丈夫よ、一緒に旅をして二年になるわ。あなたたちと同じぐらい信頼を寄せているもの。」


 ミラーナさんはレイを見て微笑んでいた。


「わかった。ミラーナがそういうなら、話そう。ただ今この情報が他に流れるのは俺としても本意ではない、他に漏らさないことを約束してくれ。」


 師匠が見渡せば全員がうなずいたので話し始める。


「ジョージについてだ、皆は四ヶ月ほど前の月蝕を覚えているか?」


「ええ、精霊達が慌てていたように思えたからはっきりと覚えているわ。」


「わしはその頃聖王国に居たんしゃが、あやつらそのあとすぐに兵を集めだしておったぞ。」


 ミラーナ、ゲニアと思い出しながら呟いていた。


「アリゼアは情報がいってるよな?」


「知っとる、王種の事じゃろ? ここ最近小猿と一緒じゃけぇよぅ理解しとる。」


「今の話に出た通り、ジョージは王種と言うあの日に生まれた(変異した)存在だ。この王種は善にも悪にもなる存在だ、そして世界に12体、そのうちの一体だ。そして特殊(ユニーク)スキルを保持し、他の魔獣とはかけ離れた存在だ。今でこそ可愛い姿だが幼体から成体へと変化いや進化するようなんだ。ヴァンそうだよな?」


「はい、ギルドの鑑定室でジョージを見たときにそのように書いてありましたから間違いないはずです。ジョージは皆さんの言葉を理解しています。」


「王種がどれほどの驚異になるかわからん、味方に引き入れてしまおうと考えとるのがギルドとしての方針じゃ。しかし大々的にゃあしとらん、変異種の情報を求めるという形で依頼しとるんじゃ。」


「見つけて悪用されたらたまったものではないからな、ジョージについては、こんなところなんたが……あぁそれと俺の弟子だ。2人目のな。」


 師匠はそこで笑っていた。するとレイが手をあげ発言する


「……………なぜ、言葉を理解しているとわかるの?」


 いままでで一番長くしゃべったんじゃないだろうか?

 すかさず師匠が返答する。


「その件に関してはヴァンの秘密が関係しているんだ。ヴァンもジョージの言葉を理解しているからだ。」


「わしらには到底喋っているとは理解できんぞ?」


「言語理解ってスキルは知ってるか?」


「確か渡り人が取得しているスキルよね? ッ!?ってことは」


 全員の視線が僕に集まる。


「えっと、はいそう言うことです。僕はこの世界に渡ってきた渡り人になります。なので皆さんの言葉もジョージの言葉も理解することができます。」


「でもあの片方の目の色は半魔なのよね……。」


「ミラーナその件もあるんだ、ヴァンの種族はダンピールと言うこの世界で一人しかいない種族になるんだ、人と魔族の混血だ。それにレイもエルフと魔族の混血なんだろ?」


「えっ!?」


 驚いているのは僕だけで他の人たちは知っているようだった。師匠はさらに話を進める。


「レイにも事情があると思うがミラーナの話を聞くときに一緒に聞こう、ヴァンの方が先だな、人と魔族の魔族の部分なんだが、これがまた問題となったんだが……ヴァンは人とヴァンパイアの混血らしいんだ。聞いたことあるだろ?伝説上の生き物であるヴァンパイアだ。」


 ゴクッと誰かの唾を飲み込む音がする。それだけこの室内が静寂に包まれていたのだろう、それでもそんな空気をぶち壊す。


「しかしマーク、そりゃ漏らしていかん話とダグに注意されとらんかったか?」


 そう熊さんはシリアスなんて関係ないのだ。


「あーぁ、ダグには次に言ったときに報告するさ。ミラーナにゲニアなら許してくれるだろ。あっはっは……」


 苦笑いを浮かべる師匠であるがそのまま続ける。


「そんな事情はあるんだが、ダンピールで渡り人なんて珍しい組み合わせの俺の一番弟子だ!」


「ちょっと待って色々と整理したのだけど時間がほしいわ、一気に情報が入ってきて追い付かないわよ。」


「ヴァンにもジョージにも複雑な事情があるんだ、それに渡り人であるヴァン、王種だが幼体のジョージ共に力を付けることが優先されたからな、最初はオババの頼みだったんだがいまでは真剣にこいつらをこの世界で生きていけるように修行してるって訳だ。」


「なにが修行してるじゃ、突然居なくなりおったくせに、わしらがどんだけ心配したことかのぉ。」


「それは悪かったって、今またこうして会えてるじゃないか。ヴァン、ジョージそれにレイ悪いんだが俺達だけにしてくれるか?これまでの話もこいつらに話したいんだ。」


 かなり久々に会ったからだろうか?師匠が普段見せないような悲しい笑顔で語りかけてきた。

 ここは旧交を温める機会なのかもしれないと思い自室へと行くことにした。


「わかりました、レイは開いている客間に案内していいですよね?」


「あぁそうしてくれ、ゲニアもミラーナもここに滞在してくれるだろ?」


 2人が頷いたのを確認すると。


「なにか聞きたいことがあったら明日以降に聞いてくれ、レイの事も気になってるみたいだしな。」


「明日帰ってしまうのでしたら殲滅の獣の話も聞きたかったですが滞在してくれるなら今日はもう寝ます。おやすみなさい。レイも案内するからついてきて。」


「……………わかった。ラーナさんおやすみ。」


 ジョージはいつものごとく僕の背中話の途中でコックリコックリと船をこいでいたからね。早く寝よう。

 僕たちは先に就寝したのだった。


 ヴァン達が出ていってからもしばらくは四人で昔話に酒を片手に花を咲かせていた。


 ~~~~~~~~~~~~

 ヴァンはなぜかわからないが胸騒ぎがして起きてしまった、外は真っ暗でそれほど時間はたっていないのかもしれない、コップを取りに下へと階段を下りていく、多くが泊まっているので、足音を立てないように細心の注意をはらいながら。


 未だにリビングからは光が漏れていた。そんなに盛り上がっているのか? 面白い話が聞けるかもと気配を消して扉へと近づくそして聞き耳をたてる


「ア……より……こ……に…マークあなたの容態はどうなの?」


「あれから8年にもなるよな、最近色々とガタが来てるみたいだな……。」


 ミラーナさんの声?師匠の容態? 年齢と共にってことなのかな?


「わしも本部ギルドならなにかしらの情報が入る思うてマスターをしとるが、その件に関しては情報が入ってこんな……」


「わしも、ドワーフの里の長老に聞いたがダメじゃった、聖王国ならと行ったんだがのぉ……。」


「私も帝国や魔族領まで回ったのだけど、ダメだったわ……アーディも貴方が居なくなってから、竜人の仲間を当たると言ってから音沙汰なしなのよね……。」


 なんの話をしているんだ?


「ありがとなみんな、そんな顔するなよ、あの時何度も話し合ったじゃないか、あと2年、精一杯生きるさ。それに今はヴァンとジョージって言う生き甲斐を見つけたんだ、簡単にくたばるかよ。」


「何かあるはずよ、必ず見つけるからあんたは待ってなさいよ、それに今もアーディは探してるはずよ! 貴方の呪いを解く方法を。」


 師匠が呪い?あんなに元気なのに?えっ!?なんの話をしてるの?


「ヴァンが俺の元にに来たことも、なにかしらの意味があるんだろう、あいつは真面目で一生懸命なんだ、向こうの世界では寝たきりの生活だったらしい、それがいまやどうだ? 魔法も『魔纏』まで習得しそうだ。武術だって俺の教えられることどんどん吸収して上達していくんだ!あいつ見てると励まされるんだ。」


 …………



「俺達が最後に戦ったあいつはヴァンパイアだったんじゃないかって最近俺は思うんだ、ダンジョンの最下層のボスを倒して、魔力の流れを感じて調べて出てきたのが人形の魔獣、あいつはヴァンパイアそう言われれば納得が出来るだろう?あの時は新種の魔獣かと思ったがな。そしてあいつは死んでないんだろうな。ヴァンパイアだったらヴァンにしか倒せないんだから、そしてそいつが生き返るのは2年後の俺が死んだときだ。」


 師匠が死ぬ?さっきから2年って何を言ってるんだ?未来がわかってるって言うのか?


 カタン

 動揺したのがいけなかったバランスを崩し扉に手が当たってしまった。


「誰だ?」


 部屋に逃げ戻るよりも本当のことが知りたいと扉を開ける。


いつもお読みいただきありがとうございます。


次のお話から何話か師匠の過去のお話を入れていこうと思っています。

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