竜血樹のその前に
師匠の家へと帰宅した、今までで一番急いだ帰り道だったと思う。身体強化は常にかけ休憩もほとんどなかったスパルタ帰宅だった。
その道中闇魔法に関して師匠に話、実践で試すことができた。
その最中に闇収納を使って見せたのだ。興味本位で師匠が渦のなかに手を突っ込んで毒状態になったのは不幸中の幸いだと思う。光魔法のキュアで自分で治していた。
これが混乱や激怒だったらと恐怖したのは忘れない。
なぜかって?
魔獣に一つ一つ試したのだが、混乱は見方である魔獣にも攻撃したり関係のない方に走っていったりと理解に苦しむ行動をしだしたのだ。
激怒に関しては自分の目の前にうつるものすべてに攻撃し出す、そして同じ魔獣の二倍とまではいかないが同じ魔獣より筋力が上がるようだ。
未だに僕は師匠の本気を見たことがない状態異常で襲われたら生きていられただろうか? そういうことだ。
なのでこの闇収納の改良も今後の課題として師匠より言われたので修行の合間等にアップグレードしていこうと思う!!
帰宅したその日はゆっくり体を休めることに専念ということで早めの就寝だった。
ここで僕の特殊スキル健康体が威力を発揮し、次の日には元気に朝を迎えた。ジョージはまだ眠そうにしてるけど朝食を作り師匠とジョージ僕の三人で食べた。
「竜血樹の依頼を受けたのは町を出るときに話したよな?」
コクリと頷く。
帰り道の道中には竜血樹に関しての話はなかったのだ。
「竜血樹の依頼は次の三ヶ月後俺達が町に向かうまでに入手できれば助かるということだった、それほど切羽詰まった状況ではないということだ。一応冒険者ギルドからの依頼ってことになるから成功したときは報酬もあるそうだ。」
「期間は三ヶ月……、師匠僕たちで東の森の奥竜ヶ峰でも戦えるのでしょうか?」
「その件に関してなんだが、俺抜きでヴァンとジョージお前たち二人でこの依頼を達成してもらおうと考えてる。」
「えっ!?」「ウキッ!?」
声が重なる……
「俺が入れば、いや俺一人でもこの依頼は達成することは可能だ!! それならお前たちの成長のためにも竜血樹の採取を今までやって来た特訓の成果を俺に見せてほしい。もちろん今すぐに行って帰ってこれないだろうから、だからこの一ヶ月ヴァンには『魔纏』を覚えてもらうその修行だ!!ジョージは実践での訓練を増やしていく、今はおさえている魔石の摂取の頻度を増やしていく形をとろうと思う。ジョージは今の幼体から成体へと成長出来ればきっと強くなるだろう。これはあくまでも予想だがな、持っているスキルから見てもそうなるだろう。」
竜血樹の採取をもって師匠に成長を見せるか、まだまだなのはわかるけど、この試練なんとしても成功させたい!!
これから覚える『魔纏』とは一体なんだろうか? 強くなるために必要な事なら今までと同じ努力してものにして見せる!!
ジョージも出会ってからの三ヶ月で大分技術的な事はできるようになってる、これまでの経験上魔石を食べてもおかしくなることはなかった。
幼体の期間とはレベルの上限があってそこに達することで成体へと変化していくと想像したのだろうか?
成体になったジョージはどんな姿になるのだろうか……口から長くて鋭い牙がはえたり? 羽がはえたり? 体の色が変化してとか? 魔法が使えるようになったりして? どんな変化をするのかわくわくが止まらないな。
どんな姿になってもジョージは僕の相棒だ!! これからも一緒に強くなりたいからね!!
「頑張ります!!竜血樹の採取も成功させて見せます!! ジョージもやれるよね?」
「ウキー!!(がんばる!!)」
「でちなみに師匠その『魔纏』とはどのようなものなのでしょうか?」
「それに関しては家の中でやるわけにはいかないから、いつもの広場に行ってから教えてやる。まぁすぐにできるわけではないから覚悟しておけ!!」
いつもの広場へと向かい『魔纏』の指導が開始される。
「ヴァンとりあえず魔力が見えるように意識して見てろ。『魔纏』は簡単に言えば属性魔法を己の体に纏う事だ。例えば雷纏!!」
雷纏と発動すると、師匠は体に雷を纏ったバチバチと音が聞こえるほどの帯電だ。
魔力視から見た場合は、一度体内で雷の黄色の魔力が形成され、体外へと放出してすぐに雷の魔法となり、魔法の状態で体の外側に纏っているように見えるが体内から常に魔力の供給がされているようだ。
纏った雷を霧散させると師匠は話し出す。
「以前はじめてここに炎の翼が来たときにアンガスが使ってたのが炎の翼がはえたのがあっただろうあれも『魔纏』のひとつ火纏と少し変化させて使っていたがあれも魔纏に分類されるだろう。ただエンチャントとはまた別だ。」
すると師匠が剣を上段に構え魔法を使う。
「火よ、我が魔力を糧とし、得物に力を宿す、火装」
剣から火が吹き出ている状態となる。
魔力視で見ると体内で赤い魔力を練り、武器の持ち手より剣に魔力を取り付け、剣すべてを魔力で覆うと魔法が発動し、火を纏った。その後の魔力の供給は無いようだ。
「エンチャントと魔纏の違いわかったか?」
「魔力の消費の有無でしょうか? エンチャントはその場かぎり、魔纏は継続的に魔力を供給する必要がある?」
「まぁ、間違ってはないな、決定的に違うのは対象だな、エンチャントは物であれば付与できる、魔纏は自分にしか付与が出来ない。武器を構えてくれ。」
持ってきていた剣を中断に構えると師匠は詠唱破棄で「火装」とすると手に持つ剣に炎を纏った。
「んじゃ次ヴァンに雷纏を使ってみる。そのまま立っていろ。」
言われた通りに立ったままでいると、師匠の体内で黄色の魔力が形成され、体外へと出され雷の魔法となり、僕の体に当たるとビリッと冬の静電気のような感触があっただけで黄色の魔力が霧散してしまった。
「というように他人の魔法を纏うことが出来ないんだ。この技術『魔纏』は身体強化、身体硬化を習得してからの発展系だ。だから自分の魔法しか纏うことが出来ないんだ。」
「ということは今までの身体強化などはこのための修行でもあったってことですか?」
「そういうことだ、先にある『魔纏』を知るとほとんどのやつがそっちの練習ばかりになるからな、いつでも瞬間的に身体強化できるようにいってたのも、長時間身体強化を続けられるように言ったのもステップアップのためだな。」
「そうだったんですね!!」
この段階にくるまでとても長い時間を費やした、勝手かもしれないけど、僕を信じて待ってくれていたんだと嬉しくなった。
ますますやる気が出てくる、乗せられやすいなとも思ったけどこれでいい気がする。
「身体強化は無属性、属性なしの魔力でやっていたことに属性をプラスしてやるだけだ。言葉にすると簡単だがこの技術を物にするのは骨が折れる訓練だぞ?」
「頑張ります!! 今までも同じように努力して来ましたから!!」
とびきりの笑顔で答えたのだった。
「ヴァンは各属性の『魔纏』を試してみろ。ジョージは俺に着いてこい俺の家の回りにいる魔獣の駆除だ!!」
「はい!!」「ウキー!!(はい!!)」
こうして個別特訓は始まった。
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