五人と一匹
炎の翼のランク昇格試験の話をした日盛大に食材を使ってしまったのは誤算だった……景気づけに送り出そうとしたのだが食材が足りないのでルダボスカへと買い出しに炎の翼のメンバーと一緒に向かうことになった。
「我々が来たことで毎回食事を振る舞って頂いているんですから、受け取ってください。」
「それはいいって何度も言ってるだろう!!」
このやり取りも何度目かアンガスさんと師匠のやり取りだ。
そもそも三ヶ月に一度の食材の買い出しを前回したのは僕だ、料理類も僕が担当しているので食材がそろそろ切れる事もわかっていた、その報告をしていなかったのだが……昨日の雰囲気で奮発して出したことなどを考えると僕が原因の1つであるのだが……
アンガスさんは金銭を渡そうとするのだが、師匠はそれを受け取ろうとしない。
師匠のプライド、冒険者の先輩として後輩達から金はもらえないといった理由があるようで、その金でうまいものを食べるなり、冒険者として必要な道具を買うべきだとその資金に当てろと言うことだった。
それにとお前達よりはるかに稼いでいたんだから受け取れるか!!と言うことだった。
これを聞いたときに僕はこちらに来てからの九ヶ月間師匠のお世話になってるだけだな……どれくらいの費用がかかってるのだろうかとそんなことも思ったのだった。
森を普段の二日ではなく人数も多いので三日で走破した、炎の翼も以前は四日ほどかかっていたそうだが森を最短距離で抜けているとのことだ。
翌朝はいつものように獣型土人形による移動だ。
やはりというかデルフィーヌさんは僕の後ろに乗り込んで来た、ジョージは僕の前に陣取っているので三人乗りだ。師匠は単独、バレットさんとアンガスさんは二人で草原を駆け抜けていく。町に向かうこの草原にも魔獣が居るのだが脅威度は低いEやFランクの物達がほとんどで襲ってきても速度が遅く無視してしまうか、その魔獣達が先に感づき僕たちから逃げてしまうだった。
防壁が見えてきたところで土人形を解除し、街道を五人と一匹で歩いていく。
昼前には門に到着した、以前は列ができていたのだが今回は列に並ぶこともなく、ガストンさんの検問を受ける。
「マーク殿、ヴァン君、ジョージ君に炎の翼とは偉い豪華な組み合わせですな、これに対抗できるのは数日前ににここの町を出ていった天翔る剣くらいですかな? はっはっは。」
へぇー前回の混んでいた原因の人たちはもういないのか?
「これも仕事ですので皆さん、身分証の提示をお願いしますね。」
師匠、炎の翼、僕、ジョージの順にプレートを見せていく。
ジョージも腕についている従魔証を腕をあげて確認してもらっていた、ガストンさんも律儀に手を取り、確認し「ご協力感謝します。」と敬礼するとジョージも敬礼していた。なんでも覚えたことはやりたいようである。
師匠は例のごとくガストンさんと話し込んでいる。
「皆さんありがとうございました。町に来る間もとても有意義な時間になりました!!」
「俺達は特別なにかをした訳じゃないさ、必要なことを聞かれて話してただけだしな。」
「そうっすね、聞かれて思い出したこととかもあったっすから、ヴァンっちにも感謝っすよ!!」
「それをいったらマークさんの話も私たちにとってかなり有益な事ばかりだったわ。」
三者三様に返答が帰ってくる。
「皆さんのAランク昇格の報告を楽しみに待ってますね!!」
するとアンガスさんが拳を出してきたバレットさん、デルフィーヌさんも拳を合わせて、三人の視線が僕に向いたので同じく拳をコツンとぶつける。真似してジョージもぶつけてきた。
「ヴァン暫しの別れだが、きっといい報告を持ってくるさ!! その間お前達二人も出来ること、マーク殿の知識があればより高みを目指せるだろう。成長を見せてくれよ!!」
「はい!!」
ジョージは敬礼してるし。間違ってはいないけど意味をわかって使ってるのだろうか?
こうして門を潜ったところで炎の翼と別れることとなった。
赤の山脈とはいったいどんなところなのだろうか?
変異種と思われる鳥類の魔獣は果たして見つかるのだろうか、どれくらいの期間がかかるかわからないが暫しの別れとなるだろう。
ガストンさんとの呑みの話を済ませた師匠も炎の翼を送り出し、宿をとるために小鹿亭へと向かった。
「師匠がパーティーを組んでいたときの昇格試験の内容はなんだったんですか?」
「ん? 俺達の時はたしか、闘技大会で好成績を残すこと、ワイバーンの変異種が居た群れの壊滅の達成だったな。」
おっ闘技大会とはまた異世界のお決まりだな。
「闘技大会なんてあるんですね。」
「あぁ昔の渡り人が民の娯楽と優秀な冒険者の選定をするためにと催されたらしいぞ。」
ここでも渡り人か……好き放題にやってるなぁ~
「師匠達のパーティーは好成績を残したんですよね?」
「ベスト4まで勝ち進んだぞ!!」
「師匠達より強かった人たちが居たってことですか?」
「いや、ミラーナ以外の四人が残ったって意味だ。」
「……。」
「ミラーナは俺達が参加したら怪我人が多くて回復魔法の使える人が不足するだろうからって参加しなかったからな。」
「それで優勝したのは誰だったんですか?」
「俺とゲニアはそこでやめたんだ。身内で戦っても仕方ないしな、だけどアリゼアとアーディはこんな機会滅多にないからとまぢで戦ってなあれは面白かったぞ。まぁ一般の観客には何をしてるのかほとんどわからなかったと思うけどな。ちなみに大会の主催者に止められて、二人とも優勝になったんだ。」
「そんなことがあったんですね。」
「会場をほぼ破壊し尽くしたからな、リングとか初撃で砕けたからな。懐かしいなぁあいつらなにやってんだろうな。」
師匠は思い出したかのように、思い出に浸っていた。
宿に着き扉を開けるとカランカランと入店を知らせる音がなる、受付にはエリーセが居たので部屋をお願いする。
「いつもの部屋開いてるから使ってください。三日間の滞在でよかったかな?」
「エリーセちゃんそれで頼むよ!!」
鍵を受け取り、部屋に荷物を置くといってもマジックバックが優秀でほとんど荷物なんかないんだけどね。
師匠はガストンさんとの飲みらしいのでこのあと僕はリカール商会へ買い出しだ!!ギルドにも解体をお願いするのと、冒険者の仕事依頼をなにか受けておこうと思う。
お昼は適当に屋台で食べることにしようかな。
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