気分転換
あれから僕は身体硬化、ジョージは身体強化の訓練を中心に特訓した二週間ほどでようやく形となった僕、しかし師匠の言っていた極地には至っていない……瞬間的に発動すること、一部だけを硬化する事が出来ないのだ。まだまだ訓練しがいのある課題だ!!
ジョージも身体強化できるようになったが、繊細な魔力の操作は難しいらしく僕と同じようになかなかうまくいっていない。部位事に扱う身体強化が出来ないと嘆いていた。
足だけに身体強化をすれば移動速度が上がるし、腕や上半身に魔法を発動すれば普段は持てないような物が持ち上げられたりと戦闘以外にも利用可能だ。使用する魔力も属性の魔法を使い続けるよりも少なくてすむのだ。
そんな状態でいる僕らをみて師匠が提案してきた。
「危険はあると思うが、気分転換に二人で探索にでも行ってこい! 北側か西側の危険の低い方だな、ジョージも落ち着いて身体強化をすれば全身はできるから、ヴァンのサポートかあれば問題ないだろう、ジョージのレベルを上げるのもこの二週間訓練してダメだったから、やはり魔石が関連しているのだろう。」
そうなのだ、こちらに来てから二週間、ステータス紙でジョージのステータスの確認をしていたのだがレベルは4のままなのだ。
二週間も訓練していたらある程度レベルは上がる、僕がこの世界に来て一週間程でたしか8ぐらいになっていたと思う、人と魔獣ではやはり違うというのが判明した二週間だ。
魔獣に関して詳しく知っている人はほとんどいない、師匠によるとエンケラドゥス王国では魔獣の研究がされているらしい。そのうちジョージをつれて魔獣のことを調べにいきたいと思っている。
こうして気分転換もかねて、探索に行くこととなった。ちなみに師匠は南東方面の魔獣の間引きをするらしい。魔獣が増えすぎると設置している魔獣避けの魔導具の効果を無視し群れとなって家に来ることになるらしい……
本当に危険地帯によく暮らそうと思ったなとあらためて思う。
ジョージを装備し北西方面を探索する、たしか西に小さな池があったはず、以前に探索した時に見つけていたのだ。水辺は開けているので見通しがいい、そして魔獣も集まるのでこちらからの先制攻撃が可能だろう、戦闘を優位に進めるために、ジョージを負傷させないようにこれぐらいはしないといけないだろう。過保護であるかもしれないが師匠も同じくらい僕に過保護だからそういう育成方針ということで!!
とりあえずの目標として池を目指し進んでいくと。
「(ばん、このさきに、なにか、いる。)」
やはりジョージの感覚は鋭いようだ、背中から降りて目を閉じ集中している。僕の魔力視でジョージをみればジョージの体内で魔力が薄く引き伸ばされ満たされていく、身体強化で戦闘するようだ。
僕としてはレベルが低いからとどめだけで言いと思うのだが……やる気になっておるのに水を指すわけにもいかずサポートに徹することにする。
僕の魔力感知にも反応があり迷わずこちらへと移動しているようだ、北西方面なのでウルフ系の魔獣だと思われる。
師匠ほどではないが魔力感知で種類が大分わかるようになってきたのだ。これもいつか改良してより正確にわかるようにしたいと思っている。
進む先よりガサガサ、バキッっと森の木々を掻き分け駆ける音が聞こえてきた。
現れたのは予想通りダイヤウルフ!!
「グルルルッ」
僕たちを見つけ立ち止まり威嚇する、「ガウッ」と声とともにこちらに駆け出すダイヤウルフ、僕のとなりで集中していたジョージも歯をむき出しにしたと思うと身体強化された体で弾丸のように飛び出した。
「ギャウ!?」
……ジョージは弾丸のように飛び出したのだが、勢い余ってダイヤウルフの横をそのまま通過する……そして森の中にガサガサと突っ込んでいった。
対するダイヤウルフも感情豊かだ……驚いている表情が見てわかるのはジョージの行動が予想外だったのだろう。
ただ戦闘中に視線相手から離したのは致命的だ、その隙を僕は見逃さない、瞬時に下半身を強化し接近し斧で首筋を狙い致命傷を与え。
「風よ、見えざる刃、敵を切れ、風刃」
見えざる風の刃で攻撃した、体と頭が離れ絶命する。
ジョージとコンビを組んで初の戦闘はジョージを囮役とし僕が止めを指すという形で決着した。言葉にするとかっこいいけど現実はなぜこうなった?という結果だった。
倒し終えた所でジョージが戻ってきた。
「(えへへ、しっぱい、しっぱい、)」
実に楽しそうに戻ってくるジョージが少し心配になるが、今はこれでいいのかもしれない、気分転換になればいい。
飛び出したときにジョージは力んで必要以上の魔力が体外に出されていた、身体強化は体内に必要魔力量を留めておくことで肉体を活性化させるものだと僕は思っているのでジョージに伝えてみる。
難しかったようで、何度も首をかしげていた。それでも言われたことを素直にやってみるジョージはいい子だ!!
その後は魔獣に遭うことはなく、目的地の池まで来ることができたのだった。
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