秘密告白
いつかこんな感じになるとは思っていたのだが、どうしたものか……師匠に視線を向けると、目をつぶってしまった。
これは自分で判断しろって事なのだろう……。
………よし決めた!!
面倒をよく見てくれるアンガスさん、僕にものすごく甘いデルフィーヌさん、兄のように接してくれるバレットさん達は僕にとても好意的に接してくれている。そんな人達にいつまでも秘密にしているのはどうかと思ってもいた、ダンピーラであることやヴァンパイアの事はさすがに伝えることはできないけど、別の世界からやって来た渡り人であることは伝えてもいいと思う、そのときに闇の属性も使えることもカミングアウトして五属性であることも伝えようと思う。
黙りこんで、考えていた時間が長かったのか。
「ヴァン、誰にでも言いたくないことはある、無理矢理言わせようと思ったわけではないんだ!」
「そうよ、ごめんなさいね。」
「ヴァンっち、軽はずみに聞いて悪かったっす!!」
と三者三様に気遣ってくれる。僕はこの世界に来てとても恵まれてるなと思った。
「いえ、大丈夫です、皆さんにもいつか話そうとは思っていたのですが、なかなかタイミングがなかったのと秘密にしていてすみませんでした。」
炎の翼の三人の顔を、もう一度見渡してから話し出す。
「まず、ジョージと普通に会話しているのはあるスキルが影響しています、なので皆さんにはジョージの声は聞き取れるけど会話ができない状態だと思うんですが、そのスキルは言語理解になります。ちなみにジョージもこのスキルを習得しているので、皆さんの話してる言葉を理解しています。」
静かに聞いていたが、魔法やスキルに詳しいデルフィーヌさんが始めに反応があった。
「ちょっと待って、ヴァンそのスキルがあるってことは……言語が違う世界に居たってことになるわよね……と言うことはあなた渡り人ってことなの?」
アンガスさんもバレットさんもデルフィーヌさんが導いた答えに驚いて口が空いてしまっていて、なんとも間抜けずらだ。
「デルフィーヌさんの言う通り、この世界に来たのは約半年前のことなんです。この世界の事を知らなかった僕を師匠は保護してくれました。そして生きるために強くなるために色々教えてもらってるんです。」
「いままで秘密にしてしまってごめんなさい。」
立ち上がり謝罪の言葉と共に頭を下げた。
すぐにアンガスさんが肩に手をおいて起こしてくれる。
「水くさいぞヴァン、それに謝らなくていい、そういった事情があったのを知れたことで今後の一緒に行動するときに驚かなくなるだろうからな。」
「かわいいヴァンに変わりはないんだから!それに魔法才能がずば抜けてるのも納得よ!!」
「あっ!! デルフィーヌさん実はその事でも言えなかったことが……」
「なによ、お姉さんに秘密にしてる事ってなに?」
いつもよりも凄んでいるデルフィーヌさんが見下ろすように立ち上がってみてくる。
「えっと……それはですね、今まで四属性って言ってたんですが、闇の属性も実は使えるんです。」
「じゃあ、マークさんと同じ五属性ってことなの?」
「はい……。」
と頬をかきながら苦笑いするしかなかった。
「ここはどうなってるのよ……これ以上出てきてももう驚くことは無さそうよ。光も使えて六属性と言われても納得する自信があるわ!!」
半ばやけくそぎみのデルフィーヌさん。そんななかいつもと変わらないバレットさんも会話に混じってくる。
「姉さん落ち着いてくださいよ!! でもヴァンっちが渡り人であろうとなにも変わらないっすからね、渡り人ってことで僕たちとは少し違った価値観を持ってるってだけっす!!」
言葉遣いからお馬鹿と勘違いされやすいが常識人で、真っ当な意見が普通に出てくるのたから面白い。それになにも変わらないの一言で僕の心はとても救われた気がした。
本当にこちらの世界に来てから恵まれた人達に巡り会えたと思ったのだった。
「ジョージも渡り人ってことになるのか?同じスキルを持っていると言うことは?」
「そこは違うと思います、詳細鑑定でも称号欄に渡り人の記載はありませんでしたし、知能が高くなった魔獣さらに王種のスキルで環境に適応、進化したのだと思います。」
「と言うことはコンビで貴重な存在ってことになりそうだな。」
「そうなりますかね、こちらの世界に来てからの目標でもありますし、力をつけて自営できるようになって、この世界を見て回りたいです。得た力で困った人達をちょっとでも助けられたら何てことも考えてますが、まずは師匠の元で頑張るだけです!!」
「ウキキ、ウキー(じょーじ、がんばる!)」
強くなる、やるべき事はまだまだあるのだ!! 師匠に認めてもらえるまでこれからも頑張る!! そこにジョージも加わったと思う。一緒に強くなる!!
「そういうことなら私達も協力するわよ!今でも冒険者の先輩だしね♪何かあったら聞きなさいお姉さんが教えて、あ・げ・る。」
からかっているのがわかるけどとても慈愛のこもった瞳で見てくるデルフィーヌさん。
「ヴァンっちにジョーっちが旅に出るならぜひ見てほしいところがあるっすよ!! 一緒に行くのもありっすよね?」
バレットさんの見せたいものも気になるな。
「俺達はこんな感じだから、何かあれば頼ればいい、ヴァンにはマーク殿も居るんだ。吸収できること興味のあることがあればなんでも挑戦してみろ!! いつでも助けてやるさ。ジョージもな!!」
頼れるリーダーアンガスさん。
「ヴァンが渡り人としてこちらの世界に来てくれた事に俺も感謝してるんだ。隠居してしまおうと思って、やる気もなくなってたが今はどうだ? いろんなやつがヴァンを中心に集まってくる、ちょっと目を離した隙にジョージが増えたしな。 殲滅の獣として冒険していたときのような、わくわくが止まらない、この年になってもだ!! 俺最後の夢も叶えられそうだからな!! 教えられること全部叩き込んでやるからついてこいよ!!弟子達!!」
師匠もやる気になってくれたようで僕の秘密を話したことはよかったと思う。
まだ秘密の事はあるけど、それでもちょっぴりスッキリしたのだった。
この日の夜は僕の元いた世界、地球の事にたくさん聞かれて、こちらの世界との違いをたくさん話したのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます!!




