勘違い戦闘訓練
こちらに帰ってきてからも修行を続けている。初日に師匠の空想の相手の変化していったことを知った。
その土人形達との戦闘訓練もジョージを護衛対象として護りながら戦闘するなど冒険者の仕事に関連のある修行も足された、今までは自分に襲いかかる敵に対応するだけでよかったのだが、護衛する物が増えるだけで全体に視野を広げなければならなくなった、敵だけでなく護衛も含めて。
その護衛の対象であるジョージが師匠の指示なのだろういろんなパターンの護衛対象になるのだ、襲われたことによって脅え動けなくなるパターンこれはまだ一ヶ所にとどまるので良いのだが、恐怖から逃げ出してしまうパターン、勇敢にも一緒に戦おうとするパターンなど色々と仕掛けてくるのだ。
これも僕のためなので大変助かっている、擬似的でも体験しているかしていないかでそのときのいかに迅速に行動できるかが変わると思うからだ。
そんな修行をして5日がたった、人は生活や訓練をすることでレベルが上がったが、ジョージは町で調べたLV4から変化はしていない。
人と魔獣ではやはり仕組みが違うのだろう。獣魔師のフォルマさんの言っていた魔石が関係してるのだろう。その事を調べるためにも東側の森ではなく北側の探索をジョージとすることになっている、そこで戦闘して倒した魔獣の魔石をジョージに食べさせ強化していく方針だ。食べさせ過ぎることは無いにしようと思っている。ジョージも戦闘には参加してもらう予定だ。僕はそのサポートもしっかりやろうと思っている。
今日の午後はここの世界に来て初めての訓練休みをもらったので広場でジョージと遊そんでいた。そのジョージは肩車して目隠しして来る。
「(ばん、だーれだ?)」
「ジョージかな?」
「(あたりー♪)」
ジョージに気がつかれないように背後に忍び寄りやったのだがここ最近のブームというかやりたいのでしょっちゅうやって来る。
しかしジョージよ、肩車してからそのちっちゃな手ではすぐにばれてしまうぞ。そしてここは師匠と僕とジョージの三人だ選択肢が絞られるのだ。
目隠しをされたままの格好で近づく三つの気配を感じた。魔力感知も常に発動するように訓練している。
しかしあちらの三人組は違ったようだ、僕とジョージののほほんとした雰囲気とは明らかに違った。
「ヴァン!! 今助けるからな!! デルフィーヌ回復魔法の準備を頼む。」
「了解よ!!」
「ヴァンっち、大丈夫っすか? なんでここに魔獣がいるっすか!?」
炎の翼のメンバーはすごく勘違いをしている。炎の翼の三人の勢いに驚いたジョージは肩から背中に移動し、隠れる。
どうも僕がジョージに襲われているように思ったようだ。
タイミングよく師匠は少し離れた場所で地面で昼寝している、見方によっては気絶したかのように見えなくもないような気がする……とりあえず誤解を解かないといけないといけない、すでにアンガスさんとバレットさんは武器を構えだしている。
「まってください!! 僕は無事です、武器を下ろしてください!! というよりもこの子は僕の獣魔です!!」
大きく手を振り無事であることと誤解であることを叫ぶ!!
「ッ!? 洗脳系の魔法を使う魔獣かっ!!」
「違いますって!! アンガスさん落ち着いてください!!」
武器を構えたままジリジリと近づいてくる炎の翼の三人、攻撃されても困るので僕も距離を保ちつつ後ろへと下がる。
「姉さん、光魔法で洗脳の魔法を打ち消すことはできないっすか?」
「やってみるわ!!」
デルフィーヌさんも詠唱し始めてしまう。
寝ている師匠が目に入ったので。
「師匠起きてください!! というよりも助けてください!!」
これだけ騒いでいたのによく寝れいられるなと思いながらも助けを求める。
そしてようやく師匠が起きた。
「マーク殿、ヴァンが洗脳の魔法にかかったようです、協力願いたい!! 背に潜む魔獣が原因と思われます!!」
簡潔に今の現状を伝えるアンガスさん。師匠まで巻き込もうとする。
健康体の特殊スキルを持つ僕には状態異常の効果のあるものは効かないのだから、洗脳ももちろん効果が無いはず、師匠もわかっていると思うのだが……しかし師匠はニヤリと笑う、あの笑いかたはろくでもない事を考えている時の顔だ……
「なん……だと!?大変だー、ヴァンを助けなければー。」
なんて演技が下手くそなんだ、最後の方は完全に棒読みだ……こんな演技に騙されるわけが無い炎の翼は気がつくだろう!!いや気がついてくれ。……しかし現実は無情である。
「ヴァンっち、今助けるっすからね!!」
「洗脳魔法であるのなら魔獣は捕獲するのがいいだろう!殺してしまっては洗脳対象に何があるかわからない、炎の翼頼むぞ!! ヴァン昨日までの5日間の事を思い出すんだ!!」
「「「了解。」」」
師匠は何を言い出してるんだろうか……昨日まで……もしかして護衛対象を護る訓練のことか?デルフィーヌさんに魔力が集まるのを感じる。
「ヴァン目を覚ましなさい!!」
「光よ、彼の者を対象に、欺きを解放す、クリアマインド!!」
暖かな光に包まれる僕、しかし洗脳なんてされてないから効果が無い。
「デルフィーヌさんだから僕は正常なんですって!!」
「ダメみたいね、かなり強力な洗脳魔法みたいよ!」
「ヴァン少々手荒に行くが許せ!! 退路を断つ、バレット行くぞ!」
「ういっす!!」
「土よ、堅牢なる岩盤、隆起せよ、土壁」
直後背後に魔力を感知すると岩の壁が行く手を阻む。この使い方はよくも悪くも師匠の影響だ。
通常の場合、壁魔法を使うなら術者の前に使い、相手側からの攻撃を防ぐために使う。しかし炎の翼は師匠の影響で魔法にたいしてとても柔軟になっている。詠唱も魔法も同じでも結果をどうするかは発動した本人によって使い方を変えることができるからだ。しかし魔法才能はもちろん努力し、魔法への理解、熟練度をあげなければここまで使いこなすことは出来ない。
アンガスさんは身体強化で僕の眼前まで迫り、左肩から右胴への逆袈裟斬りが迫る、左に交わしながら右の裏拳で払うように剣の腹を叩き体制を崩す。バレットさんの槍殺さないようにだろう石突きの方で突きからの凪ぎ払いを横っ腹に受けてしまう、このままでは対象のジョージを護れないので逃げてもらうことを優先する。
「ウグッ! ジョージ身体強化で壁を越えて師匠のとこに逃げて!」
「ウキ(やだ)」
武器なしの状態でさらに炎の翼を相手には無理がある。
「ジョージ!!急いで!!」
「ウ、ウキー(わ、わかった。)」
背より僕の肩を使って、最近形になってきた身体強化を使って飛び上がり壁を越えようとするが無情にもデルフィーヌさんの火矢がジョージに迫る……
パリンと音と共に火矢は魔力障壁に阻まれていた。
「そこまで!!」
バチバチと帯電している師匠がアンガスさんの腕とバレットさんの槍を受け止め、僕の前に立っていた。
帯電していた雷の魔法が雲散していく。
「三人とも武器を下ろしてくれ、ヴァンは正気だ、そのウォールの上にいるジョージもヴァンの言う通り、ヴァンと契約を交わしてる!!」
師匠の話を聞いてようやく納得してくれたようで、武器を下ろし、話を聞く体制となった。
「マーク殿これはどういうことなのか説明していただけるか?」
「あぁまぁ半分は俺の悪のりなんだが、ここ最近ヴァンには護衛対象を護るって想定の訓練をしているんだ、いいタイミングで勘違いをしたお前達が来たって訳だ。んで今回は手練れの魔法剣士達から護ると言う形にしてしまおうと思って焚き付けたってところだ。」
「しかし我々が来たときにヴァンは背後から襲われていたように思ったのだが……」
「そのあれは遊んでいただけで……決して襲われていたわけではないんですよ。」
「あら、そうだったのね、ごめんなさいねヴァンもお猿ちゃんも!! それによく見たらかわいいじゃない。」
「ヴァンっちも勘違いならそう言ってくれればよかったじゃないっすか?」
「えぇぇ何度も止まってくださいって言いましたよ!!」
「ヴァンっちドンマイっすよ!!」
「まぁヴァン今までの護衛の訓練は対魔獣だったが護衛する人の立場が変われば襲ってくるのも人に変わることもある、盗賊なんかもその類いだ、今回はいい経験になっただろ?」
「まぁ確かにそうですけど、炎の翼の人達程の手練が攻めてきたらほとんどの人達が護れないと思います!!」
「これからも精進するんだな。はっはっは!!」
と勘違いから急な戦闘訓練へと変わってしまったが、あのままジョージを護れなかったらと怖くなった、自分にできる事をどんどん増やして努力することを改めて思ったのだった。
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