帰宅と王種
ざわざわとしていたギルドをあとにしてリカール商店に食材を取りに来た。
カランカランとドアベルが鳴って入店を知らせるベルが反応する。するとすぐに店員さんがやって来た、昨日とは違う店員さんであったのたが。
「いらっしゃいませ、ヴァン様でよろしかったでしょうか?昨日ご購入の受け取りでよろしかったでしょうか?」
「あっはいそうです。受け取りに来ました。」
「こちらへどうぞ。」
昨日会計を済ませた場所まで案内され、奥から恰幅のいい昨日のおじさんが現れた。預けておいたマジックバックを持ってだ。
「お待ちしておりました。お約束の食材すべて入っております、前回からの三ヶ月分に果物、ミルクなどは前回よりも多く入っております。他にご入り用なものはありますでしょうか?」
以前から欲しいと思っていたものがあるので頼んでみる。
「あの不思議に思うかもしれないのですが、闇属性魔法に関連する本があれば欲しいのですが、どこかから取り寄せることはできますか?あと魔獣の生態についての本などあればなんですけど……」
「ほう……闇属性魔法の本に魔獣関連の本ですか。少々お待ちください。確かめて参りますので。」
おじさんは裏へと入っていってしまった。しばらくすると手ぶらで額をハンカチで拭きながら出てきたおじさん。
「大変申し訳ありません、うちの在庫にはお客様のお求めのものがございませんでした、しかしリカール商会、大陸全土に店があります、どこかの店舗に必ずあると思いますので取り寄せということでもよろしいでしょうか?」
なぜかおじさんの心に火が着いたようでやる気に満ちている断るに断りづらい……
「あれば見てみたかったな程度ですし、急ぎませんのでお手数でなければお願いしてもいいですか?」
「かしこまりました。次回お越しいただいた時には何かしら準備が出来てると思いますので、ご来店をお待ちしております。」
こんなやり取りがありったリカール商店で食材を受け取って、師匠がいる小鹿亭へ戻った。
部屋を見たが居なかったので食堂に降りると、顔色は多少悪いが朝ほどではない師匠が待っていた。
「師匠、必要な買い出しは完了しました!!いつでも出発できます!!」
「悪かったなヴァン、助かった。今度から町に来たときは買い出しも任せる。では我が家に戻るか。」
「ヴェルダさん、ありがとうございました! エリーセまたくるからそのときはよろしくね。」
ヴェルダさんとエリーセにも挨拶をすませ、我が家へと戻る。途中出店で昼食用の串焼き肉を買ったりして、出口の門へガストンさんは普通に働いていた。入場してきている人達が多かったので会釈程度のあいさつだったけど、むこうも返してくれた。街道をしばらく進み人が居なくなったのを確認して、師匠と移動用の土魔法、土人形を造りだし、森へ向けて出発した。ジョージの「(しゅっぱーつ!!)」とかわいらしい掛け声と共に。
町を出てからいつもの森の前までほぼノンストップで駆け抜け、夕方前に到着し、夜営の準備をそこでした。夜の食事の際にジョージについても師匠に報告した。
戦闘猿のこと、王種のこと、特殊スキルのこと、とにかく鑑定したものは一通り伝えるとやはり師匠もジョージの潜在能力の高さには驚いていた。褒められてるときのジョージがクネクネしてて面白かった。
戦闘猿は師匠も戦闘経験があるためそんなもんだろうとジョージが好戦的になるとは思えないがなと笑っていた。
王種についても12体と詳しく知れたことはよかった、占いのオババの映像でも見ていたそうだけど、ギルドでの対応もそれでいいだろうとダグにはあとで手紙を出しておくとのことで大きな問題にはならないと思う。
最後に残った特殊スキルの件だ。
「ジョージもヴァンと一緒に強くなる用に俺が教えられることは教えるが、人と魔獣では色々と違いがあるだろうからな、そこは様子を見ながらだな、」
「そうですね、今の幼体から成体になるとどれくらいになるかわかりませんもんね。ジョージを助けるときに戦った戦闘猿もかなりの大きさでしたし、このサイズのままってことはないですよね。」
「だろうな、竜ヶ峰の手前の森に居るやつらぐらいには成長するだろう、そういえば獣魔師の人には話聞けたんだろ?」
「フォルマさんって言う方で聞きたいことは聞けました!食事は何でも食べれるから気にしなくていいと、魔石も食べさせることによって、力が増したとか大きくなることがあるってことなです。師匠の家でジョージのステータスを見たときは2だったんですが、ギルドで見たものは4に上がっていたんです、道中で食べた魔石が関係しているんだと思います!」
「たしか……獣魔連れの冒険者が多くの魔石を食べさせて制御が聞かなくなって獣魔に襲われそうになって契約が発動してその魔獣が死んでしまったなんて話聞いた気がするぞ。」
「そんなことがあったんですね……ジョージの様子をみながら魔石をあげる感じですかね?」
「ダンジョンに行く冒険者は魔獣を隷属させているものが少ないが居るからな。 ジョージの方は俺達が気を付けてやれば大丈夫だろう、それに帝王の体のスキルで対応できる気がするしな。」
「そうかもしれませんね。ジョージと一緒になんでも乗り越えて見せますよ!!」
こうして夜が更けていった。
そして森を抜けて二日後師匠の家に到着し、また修行の日々が始まる。
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ヴァンが鑑定室でジョージを調べ、部屋から出ていった時にはすれ違ったパーティー天翔る剣はダンジョンを専門にしている。
天翔る剣のメンバーが鑑定室を使おうとしたのもある魔獣の血を調べるためだった。
鑑定板で魔獣についても調べられることをこのパーティーは知っていた。偶然ではあるが知ることができ、その力を使ってダンジョンを攻略していたのだ。
今回その血をなぜ鑑定しようとしたのかは、王都近くの最難関と言われたコルダダンジョンを攻略し、次はルダボスカ近くにあるダンジョンを攻略しようとこちらにやって来ていた。
昨日軽く腕試しということで、そのダンジョンに入り探索していたときのこと、5階層までやって来たときに異変があったその5階層には魔獣の気配は全くしなかったのだ。
しばらく進むと壁を突き破ってモンスターが現れた。銀に近い白の毛のミノタウロスだったのだ、両手には冒険者から奪ったであろう大斧が二つ握られていた。「ブゥモォオォォオォ!!」と好戦的なミノタウロスから仕掛ける
コルダダンジョンを攻略したこのパーティーの対応は早く、不意を突かれていたにも関わらず即座に対応したのだ。
大柄の騎士を思わせるリーダーが盾を構え、ミノタウロスの攻撃を受け止める。
神官のような服の女性がリーダーに光の魔法でバフをかけ、魔法使いの女性が詠唱を始める。
弓をもった男性も走りながらミノタウロスに向け攻撃を仕掛け、猫の獣人だろう双剣使いが速度を活かした連撃で足の健を狙う。
魔法使いの詠唱が終わったのだろうすぐに近くの二人が散開するとミノタウロスを中心に爆発が起きる。
そのあとは圧倒的な強さでミノタウロスを討ちっとった。
「なぜ、ミノタウロスがこんな浅い階層に居るんだ?」
「わからないわよ。それに色もおかしいじゃない。」
そうミノタウロスはどこのダンジョンでも25階層よりも下の階層で出てくる、そして通常は茶色の毛をしている。
弓使いの男性が
「調べたほうが早いだろう。」
「いつもみたいに調べるですにゃ♪」
そしてルダボスカのギルドでヴァンとすれ違い、ミノタウロスの血を調べたのだ。
鑑定板に写し出されたのは
ノーネーム(0)
種族 魔獣 牛頭人身 成体 王種
LV41
スキル 斧術D 怪力 体力回復 威圧
特殊スキル 帝王の体
体力B
魔力F
筋力A
耐久 C
器用 F
俊敏 C
知力 D
精神力 E
運 D
装備、ミスリルの大斧
青銅の大斧
称号 同族殺し 殺戮者
「コルダでも見たことなかったわけだな。」
「報告するしかないですわね。」
こうして一体の王種はこの世界から消えたのだった。
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