ダグさんへのお願いその2
ダグさんに持ってきてもらったステータス紙でジョージのステータスを確認することになった。
いつもの手順でチクッと傷をつけ紙に触れるジョージ、パッと光るとジョージの簡易ステータスが表記される。
ジョージ(0)
種族 魔獣 戦闘猿幼体 王種
LV4
スキル 言語理解
特殊スキル 帝王の体
装備 無し
称号 生残者 人と心通わせる者 雷騰の弟子
ダグさんは無言となり、ステータス紙とにらめっこしている。
雷騰の弟子が新たに表記されていた。
「確かに王種とありますね。これは変異種で間違いないでしょう。言語理解もどうして取得して居るのかわかりませんが、知性ある生き物の言語を馴染みのある言語に置き換えるとかそんな感じでしたかね? これがあれば我々の言葉を理解することも可能でしょう。この特殊スキルは初めて見ました。」
「ダグどうだろうか?これでオババのお告げの魔獣ということの説明になったか?」
「まぁはい、この魔獣がお告げの魔獣で間違いないかと、それに魔獣であるにも関わらず、ここに閉じ込められているのに暴れる様子もなく、高い知性を持ち合わせているのでしょう。あとは称号の欄生残者は人間でも希に持っているものが居ますよね。絶体絶命、生命が脅かされた状態から生き延びた者の証とかそんな説明ですよね。人と心通わせる者は初めて見ましたので魔獣特有の称号のようにも思います。色々と詳しく調べたいのですが、まずは獣魔登録するための方法から説明しましょう。――――――となります。」
ダグさんの説明によると、獣魔登録の方法としては2パターンだそうだ。
ひとつ目はジョージをギルド提携の獣魔師に預け、調教して人間種に危害を加えないように教育するパターン。期限はどれ程かかるかは定まっていない、さらに調教の際に暴れまわり殺処分されてしまうということもあるらしい……これはまずない、現状でも言うことをしっかりと聞いているのだから調教の必要がないからだ。
二つ目は隷属させ印を刻むこと、魔法で逆らえないようにしてしまう方法のようだ。元々は人間の奴隷に施していた魔法らしく、契約違反をしたり、指示に従わないものに魔法の力で強制するものであるらしい。かなり細かい条件を指定することが可能で、違法な契約などもされていたそうだ。尚この隷属の魔法は闇属性魔法に分類されているらしく、僕も覚えることができそうだ。
「僕は、ジョージに強制するような物は望みません、なので獣魔師の調教は無しの方向でお願いします。」
「そうなりますと隷属の魔法ですが、今現在ルダボスカに隷属魔法を使えるものが居ないのですよ。」
「ダグさん、その隷属の魔法の使い方とかわかりますか? 僕に闇の適正があるので自分でやることは可能でしょうか?」
「わかりますし、書物があるにはあるのですが、この魔法が悪用されないようにと厳重に管理されています。」
使用するにも難しいようだ。
すると僕の影が文字を写し出す影従と……それを意識するとどのような物なのか理解できた、これも種族特性の影響のようだ。影従は影魔法のひとつで闇属性の隷属とほぼ同じ効果のようだ。
「師匠試したい事があるのですが、いいでしょうか?」
「急にどうした?」
「影魔法で登録に必要な隷属の印もできると思います。」
「ダグどうする?うちの弟子はこう言ってるが?」
「もうヴァン君はなんでもありですね……。やってみてください。」
ダグさんはやれやれと疲れたように許可を出してくれた。
僕はジョージに向き直り。
「ジョージ、これからする魔法で僕とジョージの間に主従関係を結ぶ魔法みたいなんだ、だけど僕は君と対等で居たいと思っている、これから一緒に行くのに必要だから承諾してくれるかな? だから制約は作らない!!」
「(ばん、じょーじ、たすけた、だから、だいじょうぶ!!)」
ジョージは歯茎を見せるようにニカっと笑っていた。
「ありがとう!! じゃあ早速始めるよ!」
「影よ、汝我を、君主と定めることを誓うか?」
「(うん)」
「汝君主の影となり、影は離れず付き従う存在、我と伴に、影従!!」
部屋の中、僕とジョージの足元に魔方陣が浮かび上がる、紫の魔力が目に見えるそれほどに強力な魔法のようだ。
その後影同士がくっつくと足元から体に紫の光が移動し僕は手の甲に、ジョージには掌に三日月とコウモリのような同じマークが刻まれたのだった。
こうしてジョージとの主従契約、隷属の魔法に成功したのだった。魔方陣が消えるとダグさんがマークの確認をしていた。
「確かに契約はなされたようですね。同じ痣が出来てますから問題ないでしょう。あとは登録して完了となります。それと登録と一緒に獣魔証として首や手首などに特殊な道具をつけてもらいたいのです。これは町中ですぐにわかるように事故を未然に防ぐための処置ですので必ずしてください。」
その後、獣魔登録の用紙に記入し本日付でジョージの登録が完了した。名前、種族、契約印の場所と責任者の名前ここはもちろん僕。
尚獣魔登録の注意事項として、この契約書により獣魔が起こした問題はすべて登録者の責任となること。起こした問題はギルドまたは国の法の元で裁かれるということだ。
「とりあえずこれは仮の獣魔証になりますが差し上げます。」
ダグさんからジョージ用の腕輪を渡された。それをジョージに着けて終了となった。
食事や魔石の摂取など、魔獣の件に関して聞きたいと言うとダグさんは獣魔師を紹介してくれたので明日そちらにお邪魔してみることとなった。
とりあえずギルドを出るまではジョージにはローブの中に入ってもらう事となった。
宿はいつものように小鹿亭の予定だ! 大通りは人もすごいので裏道を使う。
この選択が面倒なアイツが出てくるとは思ってもいなかった。
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