説明と聞こえ方
いざ説明へ。
月蝕があった日、師匠がルダボスカへ向かってしまったあとの出来事を簡潔に話した。
ヴァンパイアの影が出てきたこと。そしてこの子ジョージを東の森の中で助けたこと、ジョージと名付けたこと、ジョージは人の言葉を理解していること、それとステータス紙だ。
ステータス紙は先ほどやったばかりなのでジョージのステータスは紙にそのまま写っていたのでジョージは「よかった。」とホッとした様子を見せていた。
師匠は渡されたステータス紙を見てため息をはく。ちなみにこれがジョージの簡易ステータスだ。
ジョージ(0)
種族 魔獣 戦闘猿幼体 王種
LV2
スキル 言語理解
特殊スキル 帝王の体
装備 無し
称号 生残者 人と心通わせる者
「ヴァン、ちょっと目を離したら色々とやらかしたみたいだな。それとジョージって言うのか?こいつは魔獣だ、本来なら討伐、それか獣魔師による調教、もしくは隷属の魔法で反抗しないようにすることが必要になってくる。」
「ちょっと待ってください師匠!! ジョージは確かに魔獣ですが、一緒にいる間寝食を共にして危害を加えられるようなことはありませんでした。なにより言葉を理解し喋れます!」
「今はそうかもしれん、今後成体となったときどうなるかわからん、ましてやこいつはオババの占いで出た将来厄災となりうる存在だ。」
「厄災になりうると言うことは、僥倖、希望にもなるってことではないのですか?」
「だから獣魔師もしくは隷属させるんだ!! 」
「獣魔師も、隷属の魔法も絶対ジョージの自由を奪いますよね? コミニュケーションを取れるのに本当に必要なのでしょうか?」
「コミニュケーションと言うがそいつは引っ付いているだけで、一言も聞いていないぞ。」
どんどんとヒートアップしてしまい、おさまりが聞かなくなりそうになった、この世界に来てからここまで師匠に楯突いたのははじめてかもしれない。
「ウキ、ウキッキ、キーキー?(ばん、じょーじ、いめわく?)」
とここではじめてジョージがしゃべった。
「ジョージ迷惑なんてことないから!! 師匠は必ず説得するから!!」
「ヴァン!?ちょっと待て今のがしゃべったって言うことか?」
「はい、僕の名前を呼んで、自分は迷惑かと聞いてきました。」
「俺にはウキウキって言ってるようにしか聞こえなかったぞ?」
「えっ!?」
こんなにはっきりしゃべっているのに、師匠には聞こえていないようだ……。
「ジョージ、師匠の言ってる言葉はわかるかな?」
「ウキ!!(わかる!!)」
「何て言ってるんだ?」
「ジョージもわかるって言ってます。」
師匠はステータス紙をもう一度見ていた。
項目は多くないので考えられるのは言語理解しかない、元々は渡り人の特有のスキルだと言われていたがジョージはそれを習得している。
「ヴァン、言語理解の説明って覚えてるか?」
「たしか、渡り人が世界を渡る際に取得するスキル、知性ある生き物の言語を馴染みある言語に変換する力を持つ。文字、発言する言葉にも適用される。だったと思います。」
「ジョージに渡り人ではないもんな……王種または特殊スキル帝王の体もしくは人と心通わせる者の称号によって習得したってことか?」
「それはわかりませんが、一緒に暮らしだして、昨日なんですが、言葉を聞き取れるようになったんですよ。」
王種として変異した個体は総じて高い知性を持つ。
ジョージはヴァンとの出会い方により生残者、人と心通わせる者の称号を獲得している、そこに帝王の体と言う特殊スキルという偶然が重なることによって言語理解の習得をした奇跡の魔獣でもある。
通常の魔獣は愚鈍である、本能のままただ動くのだ。
「今は答えが出ないか……しかし最低でも隷属の魔法はしなくてはダメだぞ。まず獣魔師の調教は無理だ、戦闘猿は力強く性格も荒いものが多い。こいつが成長したとき人を襲うかもしれない。」
「それは……大丈夫だと思います。責任は僕が取るのでどうにかできませんか?師匠お願いします。」
頭を下げてお願いする。するとジョージが背中から降りて、同じように頭を下げるが地面にくっついてしまっている。
「お前らやめろ、はぁ……そんなところで絆を見せられてもなぁ。」
「師匠、ジョージは占いのオババさんに将来出会う、そのときに助けるか、討伐するか自分で選択しなさいと言われていたんです。自分で答えを出すことが重要だからと言われたので、僕はジョージを助けて一緒に強くなりたいです。」
「ウキ、キー、ウキー(つよく、なりたい、です)」
「ジョージも強くなりたいそうです。」
「はぁ……お前ら……わかったから、頭をあげるんだ。そのままの状態だとそいつが攻撃されても文句言えないからな、獣魔登録をしに行くそこでダグと相談する。今はそれしかできん。」
「ありがとうございます。」
こうして保留にはなった町で相談することになったそれともうひとつ師匠に言わねばならないことが……
「師匠すいませんもう1つ、食料がそろそろなくなってしまいそうなんです。」
「あと一ヶ月くらい残ってただろ?」
「実はジョージがよく食べるんですよ。」
と苦笑いをしてほほをかく。
「今日と明日はゆっくりさせてくれ。明日の分くらいの食材は残ってるだろ?」
「残り物でよければ、暖めればすぐ出せますよ。明日の分くらいは大丈夫です。」
「暖めてくれ、とりあえず明日はそいつの様子を見たいからいつも通り修行して、明後日町に行って、ダグに相談するぞ。」
師匠に晩御飯を出して、いつものようにジョージと同じベットで寝るのだった。
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