食事と名付け
茜色に染まる頃に師匠の家に到着した僕達、あれだけ動いたので当然お腹も減る。
ここで問題に気がついた!!
僕のご飯は作ればいいのだが、この小猿は何を食べるのだろうか……
ミルクや果物でいいのだろうか? そもそも魔獣は食事が必要なのだろうか? 家畜や人間が食べられるってのは聞いたことあるけど……それが食事なのか? とりあえずあるものを持ってきて様子を見てみるか。
「君が何を食べれるかわからないから、適当に持ってきたんだけど、食べれそうかな?」
ミルクとバナナみたいな果物を持ってきた。
小猿は鼻をヒクヒクとひくつかせて僕の顔と食べ物を交互にみる。
「食べていいよ。お腹すいてるのかな? 」
ミルクの入ったお皿に指をおそるおそる入れて指を舐める。
お気に召したようでなによりテーブルが汚れるけど生活魔法で綺麗にすればいいやと好きに食べさせる。
バナナみたいなやつもひとつ皮を剥いてあげて、お皿の上においてやるが見るだけで食べない。
食べたことがない? 警戒してるのかな? そんなときはお手本をと思い。
「これも食べられるよ!! こうやって手づかみで食べるんだ。」
皮を剥いてあるバナナを手に持ち食べる。
味はバナナそのものなので今後この果物はバナナとします。
それをみていた小猿が自分で皮の剥けていないバナナを手に取り器用に剥き、一口食べる。モグモグ、モグモグと味わって食べていた。
「そのテーブルに置いてあるのは食べていいからね。僕も自分の料理作っちゃおうっと!!」
小猿から離れキッチンへ、簡単なものしかできないけれど、スープと肉と野菜の炒め物を作ってしまう。
いい匂いがしてきたところでズボンの裾が引っ張られる。振り向けば小猿が近寄って見上げていた。
「食べ終わったのか?」
と聞けば首を傾ける、そして裾をつかんでいない手で料理器具の方を指さす。
「今作ってるのも食べたいってことか?」
今度は大きく頷く、聞いてることに反応した小猿……塩なんかの調味料で味付けしてしまったから食べさせても大丈夫だろうか?具合が悪くなったらどうしたらいいだろうか……光の魔法に体調を整える魔法があるって聞いてたけど、あいにく僕は使えない……どうしようか……とりあえずさっきのバナナとミルクは平気だったからそっちでごまかすか……
「盛り付けしたら持っていくから、さっきの場所で待っててくれるかな?」
見つめてくる……まだ……まだ……瞳が潤み出す小猿……僕の心を読んでいるのか……この子の分を持っていかないとこの顔やめないよな
「わかったよちゃんと君の分も持っていくから!! 食べさせないとは言ってないだろ?」
それを聞いて納得したのかテーブルへと戻っていった。勘が鋭いのだろうか?
作った料理をお皿に移してテーブに運ぶ、ちゃんと小猿用に少なめに盛り付けて持っていった。
すぐに手を出そうとする小猿を止める。
「熱いから、冷ましてから食べてね。こうやって」
手作りの箸で野菜炒めを持ち上げてフーッフーッと熱を冷まし口にいれる。
小猿に箸は使えないと思ったのでスプーンを置いてあるが手掴みでいこうとするので、スプーンを取って小猿の野菜炒めをすくい、フーッフーッする。
「はい、あーん。」
しかし小猿はフーッフーッと真似をしたかったようで食べずに息を吹きかける。
ようやく口にしてモグモグと数回噛むと飲み込んでしまう。
「もっとよく噛んで食べないと!!」
病院にいるときによく噛んで食べなさいって言われたっけと転生前を思い出していた。
「よく見てね、僕みたいにたくさん噛んでから飲み込むんだよ!」
フーッと冷まし口に入れて、30回くらいを目安に噛んでから飲み込んだ。その間小猿は僕の事をじっとみて観察されているようだった。
今度は小猿の番でフーッと冷まして口に運ぶとモグモグと同じように20回ぐらいだろうか噛んだ後に飲み込んだ。ちょっとどや顔される。
「良くできました。なんでも噛むことが出来れば強いからだもできるだろうし、健康維持にも欠かせないことだからちゃんと噛んで食べようね。というか食べて平気そう?」
小猿が頷くので大丈夫だろう。魔獣は雑食である。今回この生態が判明した。
しばらく食べさせてあげていたが、スプーンを自分でもって食べ始めたので、自分も食べることに集中する。横目で小猿を見ているがテーブルがべちゃべちゃになるが気にしない。片付ければいいのだ。
それにこれだけ言葉を理解して、スプーンを使い出したのだ、道具を使うことも覚えられるのならそのうちきれいに食べれるようになるだろう。
僕も小猿も食べ終わったので小猿の口の回りをタオルで拭き取る。テーブルにはねたり落ちているものも一緒に処理してしまう。
テーブルの上にある食器類と僕達に生活魔法で綺麗にしてしまう。
「片付けしちゃうから、君はそこで座って待ってて!!」
食器棚へと使った食器を元に戻す、先程から君って呼んでいるけど、やっぱり名前があった方呼びやすいよなぁ~よし!小猿の名前を決めちゃおう。
実は決めてあったのだ。白の体毛と大きくなってもかわいらしく聞こえるようなそんな名前。
早速小猿君に提案してみよう。
「君が嫌じゃなかったら、名付けをしてもいいかな?」
首をかしげるので続ける。
「名前って言うのは、物や人物に与えられる言葉なんだけどって小難しいことはいいか、君って言うより名前があった方がいいと思うんだ。」
自分を指差して。
「僕の名前はヴァン・アルカードって言うんだ。」
小猿のことを指差して訪ねてみる。
「君の名前はジョージって名前にしようと思うんだけど、どうかな?」
すると小猿は僕を指さすので「僕はヴァン。」小猿は自分を指さすので「君はジョージ。」僕を指差す「ヴァン」小猿が自分を指さす「ジョージ」何度か繰り返し納得したようだ。
「ジョージって名前嫌かな?」
首を横に降っているので問題はないようだ。
「今日は色々あって疲れたからもう寝ようと思うんだけど、僕のベットで一緒に寝ちゃっていいよね?」
椅子から降りて背中にしがみついたので問題ないだろう。
自分の部屋に戻ってベットに潜り込む。今日一日で色々あったな……本当に疲れたよ。
腕にしがみついて寝てしまっているジョージを見て眠りにつくのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。




