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ステータスと問題

 窓から日が差し込み目を覚ます。

(昨日見た天井です。)

 マークさんから昨日この部屋は自由に使って構わないと言われたのでこれからはここが僕の私室になるんだよね。なんてよい目覚めで起きたんだけど、


 ドン、ドン、ドーーンッ…

「はぁぁぁっ」

「ギャウゥーーン」


 三発の爆発音からマークさんの気合いの声、そして生き物らしき断末魔が聞こえたので慌てて外に確認に出たんだけど、そこには剣を持ったマークさんとそのそばで倒れている緑色の狼のようなモンスターだった。


「マークさん!!」

「ヴァンおはよう、ん?どうしたそんなに慌てて。」


 僕の視線はその狼に釘付けだ…。

 その事に気がついたのだろう、マークさんは特に変わったようすもなく、たんたんと話し出す。


「あぁこいつか?俺の敷地にモンスターが入り込んで来たから、討伐しただけだ、稀に頭の悪いやつが入ってくるんだよな。」


 いやいや、今日は運が悪かったみたいなノリで話すのをやめてほしいです…。その倒れてる緑色の狼2メートルぐらいあるんですけど…(なるべく早く闘う技術を身につけよう。そうしよう。)これがマークさんの日常なんだ…早く慣れなくてはいけない。


「このフォレストダイヤウルフは皮と牙がギルドで買取りしてもらえる。あとは心臓部にある魔石もそこそこな値段で売れるはずだ。肉はそこまで需要がないから狩ったやつらで食べるときがあるくらいだ、なにごとも経験ってことで解体するから見て覚えるといい、冒険者にとって必須のスキルだからな!」


 というなり腰につけていたナイフで解体し始める。首付近を切断し頭部を低くして放血、内蔵を取り出し、「ウォーター」の魔法で血を流し、「クリーン」の魔法できれいにする、皮剥、部位ごと解体と、この手順を繰り返すことでスキルとして解体が習得できるとマークさんより教えてもらった。

 スキルとはその人の行動による経験から習得するものらしい、一回やったら覚えるほど甘いものではないんだね。なにごとも反復とそれを自然とこなせるように鍛練するんだって。

 それと解体を見ていたんだけど思ったよりも気持ち悪くなったりはなかった、これも世界を渡った影響なのかもしれない。

 ついでとばかりにマークさんはモンスターを倒したら必ず魔石取るようにと言っていた、なんでも倒したモンスターの魔石を抜かずに放置しているとゾンビ化してモンスターが復活するらしい。これも冒険者のマナー何だって。


 なんて慌ただしい朝を迎えたんだけど、朝食にあの解体した狼肉(ダイヤウルフ)の焼いたものが出てきた…お世辞にも美味しいとは言えなかったね、スジとか全体的にパサパサしてた。だから需要がないんだろうね。


 朝食が終わるとマークさんは「クリーン」で食器をきれいにして片付け、倉庫へと行ってガサゴソと探し物をしている。

(マークさんっていつも使うもの以外の片付けが下手な気がする、指輪の時といい今回の探し物も適当に放り投げて居るだけな気がする…時おり聞こえる何かの崩れる音もきっと放置なんだろうな…)


 数十分後にようやく戻ってきたマークさんは埃だらけだった。


「あったぞぉ~とその前に「クリーン」これでよしと、この道具なんだが、簡易の自分のステータスを見ることができるものなんだ。詳細を知りたい場合は各街にある冒険者ギルドのステータス板を使うといい。聞いてるよりも使った方がわかるからな。」


 と一枚のざらついた和紙のような物を渡されるが、首を傾けどうすればいいのかとマークさんに視線を向けると、


「この針で指先に少し傷をつけて、血がその紙に触れれば出来るんだ。」


 言われるがまま、親指に針を押してるチクッとして浮き出た血を紙の端に押し付けると、紙がパッと光るとそこには文字が浮かび上がってきた。


 ヴァン・アルカード(15)


 種族 人 (ダンピール(人×ヴァンパイア)希少)隠蔽中


 LV1


 スキル 言語理解


 特殊(ユニーク)スキル 健康体 種族特性(未解放)


 装備 隠蔽の指輪


 称号 渡り人


 と書かれている。

(簡易版って言ってたから、こんなものなのかな?こっちに来てから二日目だし、レベルは上がるわけないし、神様にもらったのはたしか言語理解だけだったけど、この健康体に種族特性?ってなんだろう?おまけみたいなものかな。)


「ヴァンどうだった?写し出されたか?見て問題なければ俺にも見せてくれるか?」

「はい。何に問題があるかわかりませんし、見ても大丈夫ですよ。」


 簡易鑑定の紙をマークさんに渡すとマークさんが固まっている、なにか問題があったのだろうか?

 マークさんが復活するのを待つと、紙と僕を交互に見比べて話し出す。


「……ヴァン、まずその指輪をはずすの禁止な、まず種族がまずい。」


「えっ!?マークさんどう言うことですか?」


「ヴァンパイアってわかるか?」


「人や動物の血を吸ったり、にんにくや十字架、太陽の光に弱いとかそんな感じですか?」


「ヴァンの居た世界ではそうなのか…こちらの世界では文献にのる伝説上の生き物ってことになってる。不死の存在、怪力無双、変幻自在、神出鬼没、その数は少数、倒すこと叶わず、封印する事が唯一の方法と過去の文献に書いてある。魔族の中でも種族が別れてて悪魔種、魔神種なんて呼び方をされてたらしい。あくまでも伝説や言い伝えだと思ってたんだが…ヴァンの存在がこの世界にヴァンパイアが居ることの証明になるってことだ。さらに俺はダンピールなんて種族を知らない…。いろいろとヴァンの存在が明るみになると騒動に発展するかもしれないな。」


「………」

(神様何してくれてるの?昨日感謝したばかりなのに…たしかに少し人と変わった体験もしたいなとは言ったけど、伝説上の存在?マークさんの知らない種族?騒動に巻き込まれるかもしれないって、波瀾万丈なんて思わなければよかったよ、ホントに…)


「この件に関して、まだヴァンと俺しか知らないから、やりようはある。それにヴァンは渡り人だ!!危険性って観点から言えば問題ないと思ってる、ただ特殊スキルにもある種族特性がどのような影響があるかわからない以上、力や魔力の制御、問題が起きたとき自身の身を護る技術が必要だ!と言ってもやることは変わらないな、俺の教えられることをヴァンに全部教えてやる!!……期限つきなんだけどな…。」


 最後の呟きは聞き取れなかったが、やらなきゃいけないことは変わらないとあらためて思った、力をつけて、強くなる。単純明快!!わからないことがたくさんだけど、マークさんに教わって頑張ろう。


 目指すべき目標が定まった瞬間だった。


お読みいただきありがとうございます。


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