プロローグ 動き出す世界
本日の話は短めとなっています。
この世界にそれが起こったのは太陽が頂点を通過するそんなときだった。
太陽がだんだんと欠けていく姿、幻想的な天体ショーの始まりと地球では言われるだろう。
“エクリプス”太陽が月に侵食される日蝕である。
日蝕をこのノルディスク大陸に住まう多くのものが目撃、体験した。
太陽がだんだんと月に食われていく、ゆっくりとゆっくりとそして太陽を飲み込み、この世界がうすぐらい闇に包まれる……それは一分だっただろうか、二分程だっただろうか、時が止まったように静まり返った。この時黒の闇の魔素が辺りを覆ったのだが、どれだけの者が気がついただろうか?
そして月が動き出すと、月の外周部を太陽が照らし、黄金の輪が浮かび上がる。
木漏れ日すらもリング状になって降り注ぐ。自然界に眠る魔素があふれ出したかのように、赤、青、緑、茶、白の魔法属性の色が輝いた。
月が太陽を通りすぎ、いつもと変わらない太陽が姿を表すのだった。
一時間程だっただろうか……そしてこの世界でさまざまなものが動き出す。
この世界に起こった現象がどう言うものか説明できるものはいない、天文学など広まっているわけがはない、さまざまな憶測、村での言い伝え、文献にて書かれて知っている知識、長命な種族では過去に経験したものもいる。
その口々に伝え、言われていたのは、時の転換期が訪れた。不吉な事が起こる前触れ、光照らす吉報が届くなど各地でさまざまである。
日蝕に包まれたその後
聖王国のある教会では災悪が起こる前触れと災難が来ることを演説していた。災難に立ち向かう力が必要だ! 諸悪の根元魔獣の討伐を訴える聖職者、守るための戦闘員の増員が議決される。
またあるところでは小競り合いの続いていた地域、帝国内の内乱であるがこれが終息、日蝕の闇に包まれたそのときの動揺それがあったか、無かったかの違いで終息したのだ。長きにわたる戦争が終結したことに喜んだものも多かった。
あるダンジョン最下層では最後のダンジョンボスであろうドラゴンが討ち取られた。
ヘリテリウム王国に存在した難関ダンジョンとして有名だったコルダダンジョンだ。
その日のうちに最下層突破がギルドに報告され、各国に速報としてその話題が広まる。これは吉報として後日パレードなどが開かれるだろう。
討伐したパーティーはしらなかった、日蝕の際ドラゴンの力が弱まっていたと言うことをそしてなぜ難関だったのか……
時を同じく人知れずクリアされたダンジョンもあった魔族が住まう土地にあるダンジョンだ。
封印が弱まる結果となったことはこの世界の人種はまだ誰も知らない。唯一魔族のダンジョン走破者だけが知っている、そしてダンジョンに封印された神の復活を望んでいるのだ。ダンジョン最下層に居る者が守護者であることの本当の意味を……
これだけではない、世界各地で王種と呼ばれる存在の誕生もあった。魔獣の世界も弱肉強食だ強いものが生き残る。その王種も変異種であることから産まれてすぐ淘汰され殺される者も居るが、成長したそれらは多くの危険と共に人間に襲いかかる災いの誕生でもあった。
ひっそりと新たに入り口が出現したダンジョンもある、数多くの魔獣が凄み、未開の地とされている場所。その最奥に眠るは過去に始祖と呼ばれた存在。日蝕により封印の力が弱まった、さらにダンジョンの走破、なんの因果なのか、少しずつその者は力を取り戻す。
とある少年もこの現象を肌で感じていた。
「師匠、なんだか今日は変じゃないですか?」
その数時間後日蝕が始まるのだった。
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