成長するために
魔獣との戦闘が解禁となってからもうすぐ一ヶ月がたとうとしている。
だいぶ戦闘にも慣れてきた。探索も北側と西側はある程度の範囲を探索し、南側の探索も開始したのだが……
以前師匠から聞いた話だと北西方面が危険度の低い同じような魔獣が多く今の実力なら問題ないだろう、しかし南東方面は危険な魔獣が出るから気を付けろって言われたことがあった。
そこで調子に乗った一日目に空に魔法を二発打つことになったよね……そのあとひたすらに防御に徹してなんとか師匠が来るまで耐えたものだ。
そのピンチになった時の魔獣はトレントだった、木に擬態した魔獣なのだが、擬態している間魔力感知に引っ掛からないのだ。
南側の森を進んでいた時に根につまずき転びそうになってしまう、足首に絡み付いた根により宙吊りにされてしまう、あわてて腰につけていた斧で根に叩きつけ、地面へと着地。
「ギャシャァァァァァ!!」
叫び声で魔獣であることを確信し、魔力感知をおこなうとすでに回りに7体の反応があった。こんな近くまで接近されたことに気がつかなかった僕は冷静さがかけていたと思う。囲まれたことによって枝や根による攻撃が全方向から押し寄せる。
「土よ、堅牢なる壁、我を守れ、土壁」
四方に壁を展開し、体制を建て直すために作ったのが後の失敗に繋がってしまう。これによりトレントに近づく時間を与えてしまった。
ここでおこなえばよかったのは身体強化、さらに脚部を強化した速度による一転突破がよかっただろう。トレントは木に擬態し、獲物を待ち伏せて攻撃を仕掛けてくる魔獣だ、移動速度は極めて遅い、囲まれた状態を打開でき一体づつ対処できれば問題はなかったのだ。
不運というのは続く、四方に壁を作ったことで視界が塞がれてしまっているので魔力感知を頼りに敵の位置を把握したのだが、7体の他に二つ別々の方向から近づいてくる魔力があるどちらも速度が早いので獣系だろう。
先ほどの根に斧を叩きつけたときの叫び声に反応してやって来たと思われる。
こうしている間にもロックウォールは攻撃を耐えているがヒビが入り始めているので時間の問題だろう。飛び上がり前方の三体に向けて火魔法を放つ
「火よ、燃え盛る矢、敵を射て、ファイヤーアロー」
同時に三つを作り出し、攻撃する、これもまた失敗に終わる、攻撃が当たったのだが二体は表面を焦がしただけで致命傷にはなっていない一体は燃え移りウネウネともがいている。
師匠に助けられたあとに聞いたのだが、この森のトレントは独自に進化していて、火属性の耐性がある個体がいるんだと言うことだ。
正面の三体が動けなくなることをイメージしていたので、焦げ目がついただけでは攻撃が止まらず、防御に徹することに、そうしている間にあとから近づいてきていた二体が姿を表す。
一体がタートルタイガーこれは以前解体してる、亀の甲羅を持った虎だ!! もう一匹がロックベアと言う体から鉱物が生えている土属性を操る熊の魔獣。
来てすぐのロックベアから茶色の魔力が溢れ出す! ロックバレット辺りが飛んでくるだろう。
さらにタートルタイガーが自慢の牙で噛みつきに来るのを躱し、ロックベアからの攻撃を短縮詠唱で壁を作る。
「土よ、ロックウォール」
短縮詠唱は魔力の練りが悪く、壁の魔法であれば頑丈さ、攻撃魔法であれば威力などが犠牲となる。
短縮詠唱でも、ロックベアの魔法は耐えることができたが影を使って暴走が怖いと判断し上空に二発の魔法を放つ、師匠への救援の合図だ。できれば使いたくなかったが、やむを得ず使った。
それでも9体からの攻撃はやむことはなく、防御魔法や回避し、牽制程度に攻撃魔法も使って耐え凌ぎ、しばらくするとドカーンとトレント7体に雷が落ちる、プスプスと煙を上げ動かなくなる7体のトレント達、待ちわびた瞬間だった、そして痛感した、この世界の最高峰である師匠との実力差を。
残り二体のうち僕がタートルタイガーを倒し、師匠にロックベアを倒してもらった。長く続いた緊張状態による疲労で座り込んでしまった。
「ヴァン、だいぶ無茶したみたいだな。なぜ囲まれていたんだ?」
師匠にこの状況になったことを説明すると、まだまだ修行が足りないなと笑われてしまった。このあと探索を続けてもよい結果にならないだろうと、引き返すこととなった南側初日の探索だった。
それからも南側の探索をしながら修行に明け暮れた。
炎の翼の三人も師匠ところへ定期的にやって来ては僕と対人戦をしてくれる。
魔獣とは違い、ただ襲いかかってくるわけではない、予測し攻撃をするが、さらにそのさきを考えて行動する。駆け引きがあることで僕の成長を促してくれている。
まだまだ経験不足だが、確実に成長していると思う。
今後もさらなる成長を目指し日々修行に明け暮れる。
それから二週間後、この世界を包み込むような神秘的で幻想的な現象に包まれるのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
この47話で一旦区切りとしようと考えています。
次の話にプロローグ的な物を挟んでから話を進めていこうと思っています。
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