ゴブリン討伐とげんこつ
土人形にてしばらく走っていると依頼先の村が見えたので土人形から降りて向かう。
夕方に到着した村の様子は閑散としていた。辺りを見回してもほとんど人がいないのだ。家の扉は固く閉ざされ、なにかに怯えているような、そんな印象を受ける。すると炎の翼リーダーのアンガスさんは村の入り口から呼び掛ける
「我々はルダボスカから来た冒険者だ!! 魔獣の調査討伐にやって来た、依頼者または代表の者と話がしたい。」
そう話すがシーンと静まり返った村からは返事か無い……しばらく待つと村の奥からよぼよぼなおじいさんが出てきた。
「わしは、この村の村長をしておりますじゃ。冒険者の皆様方依頼を受けてくださり感謝しますじゃ。」
「今この村の状況を説明してもらえるだろうか?」
「はい、この村の……。」
なんでも村長さんの話によると二週間前から魔獣による襲撃がずっと続いてるそうだ。最初の頃は鳥や牛などの家畜の被害があり、たまたまだと思ったそうだが、そのつぎの日に農家の者が怪我をしたとのこと、それにより柵の設置や腕に自信のある若者が中心となって警備したそうなのだが……その若者達も少数になると襲われたりと死者が出るわけではないが、だんだんと動けるものが少なくなってしまっている現状だそうだ。
また夕方から夜にかけて襲われることが多いというのでまた今日も魔獣が来るのではないかと、皆引きこもってしまっているようだ。
どのような状態でも対応できるようにと二人一組で村の回りを調べながら襲撃に備える事にした。
そして僕はアンガスさんと時計回りにデルフィーヌさんとバレットさんは反対回りで調査を開始した。
生活魔法で辺りを照らしながらしばらく進むと柵が破壊されている場所を発見、壊れた柵から村を背にして多くの足跡が残されていた村への侵入ルートを作っていたのだろうか?
「アンガスさん、魔力感知の魔法使いますね。」
頼むと言われたので魔力感知の魔法をする。しかし反応はなかった。
「足跡のある方には反応がありません。」
反対を回っている二人と話し合うためにさらに先に進む。
するとまたしても柵の破壊されている場所があった、ここもまた足跡が多数、そして魔力感知にも反応がなかった。
村の入り口から回って反対側へたどり着くと向こうからも二人が近づいてきた。合流し状況を話し合う。
「俺達の方は柵が三ヶ所足跡もあったが魔力反応はなかった。そっちはどうだった?」
「ここに来るまでに柵がダメになってたのは二ヶ所よ、そっちと同じで足跡もあったのだけれど、魔力感知に引っ掛からなかったわ。」
入り口以外のすべての場所に村へと侵入することができる通路があった。しかし魔力感知で発見できないとなると、すでにこの村の付近には居ないのだろうか?
「魔力感知を妨害とかすることは可能なんでしょうか?」
「見たことはないんだが、闇属性魔法の中に魔力感知を誤魔化す魔法があるって聞いたことがあるな。」
僕の知らない魔法だ。というよりも闇属性の魔法の知識人が回りに居ないので、僕の使える闇属性魔法は四属性の流用なのだ。
「魔族の人達はそういった魔法も使っていたみたいよ。たしか文献かなにかで見た記憶があるわ。」
アンガスさんに続きデルフィーヌさんもあるといっている。
「この村を襲撃しているのがゴブリンだとして、魔法を使う上位種が闇属性を使っているということも考えられるということですか?」
「考えられなくはないが、闇属性ってのはかなり珍しいぞ、ゴブリンシャーマンといっても今まで出くわしたのは基本の四属性をかろうじて使える程度のやつらだったがな。」
師匠から聞いたゴブリンシャーマンは狡猾で人間が弱る姿を見て楽しんだりするから俺は嫌いだって言っていたのを思い出した。すると
「キャーーー!!」
村の中から叫び声が聞こえた。炎の翼のメンバーの反応は速かった。声が聞こえた瞬間に村の中へとすでに走り出していた、慌てて僕も走って追いかける。
「ギャギャギャ!!」「ギギャッギャ!!」
村の中心部へ入るとゴブリンがわらわらと現れる。そのゴブリンたちはなぜが泥を全身につけ闇に紛れるようなそんな風貌だ。気が付かれにくくするためにやっているとしたら相当に嫌らしい相手だ。
炎の翼のメンバーはすでにゴブリンの討伐に動いている。火を使っては村の家などに影響が出るということで武器主体の戦闘だ。村のどこから入ってくるのかを調べるために魔力感知をするが、目の前に居るゴブリン達にも反応がない。
「アンガスさん!! 今見えているゴブリンに魔力感知が効きません!!」
「ヴァン、周囲の警戒と上位種を探せ!! 見つけたら空に炎弾を射ってくれ。このゴブリンはマーク殿の作る土人形よりもはるかに弱い、油断せずに倒せば問題ないはずだ! この中央広場は俺たちで片付ける!」
「わかりました!」
走り出し、剣を抜き対峙するゴブリンを切り捨てる。炎の翼とある程度離れてから隠蔽の指輪を外し、魔力視で周囲を見渡すと、黒色の魔力の流れを捉える。やはり闇魔法が使われているようだ。その魔力の発生源に向かって走り出す。
僕とアンガスさんが最初に見つけた壊れた柵の所にそいつはいた。コブリンシャーマンだ、その横にはゴブリンより体格のいいホブゴブリン二体を引き連れなにやら魔法を使っているようだ。さっさと仕留めてしまおう。
「影よ、彼の敵達を、拘禁せよ、影牢」
三匹の上位コブリン達はなんの抵抗もできずに影に捕まる。
「ギャギャ!!」「ギャッ!!」
驚いたような声を発するゴブリンしかし一体のみそれは違った。
「ギャギャ、ギャギャッギャ、ギャ、ギャーギャギャーギャ!!」
見覚えのある黒いボールがこちらに打ち込まれた。魔法の詠唱ダークボールのようだ。即座に身体強化を施し、右へ交わし、一気に距離を詰めホブゴブリンを無視し、中央に位置するゴブリンシャーマンの首元へ剣を横凪ぎに払う。
ボトっと頭が落ち、血が吹き出る。残りの二体も同じように倒し、三体の殲滅が完了する。
そして今気がついたのだが発見したら空に向かって炎弾を射つんだった……今さらだけど空に向けて炎弾を射ち上げ、みんなの到着を待つ。その間に隠蔽の指輪をはめてしまう。この秘密はまだ伝えられない。
しばらくすると別々の方向から三人が駆け寄ってきた。
「ヴァン無事か?まさかとは思うが上位種はそこに転がってる三体じゃないよな?」
視線が先程倒した三体に向けられている、苦笑いで返しながら。
「すみません、そこに転がってるのが上位種です、ゴブリンシャーマンとホブゴブリンの二体だと思います。」
バレットさんが近くに行き確認する。
「間違いないっす。姉さん魔力感知はどうっすか?」
「ゴブリンの反応があるわ森に一匹逃げたようだけど、どうする?」
「他のやつが居るかもしれない二人で追ってくれ! アジトがあれば一人は報告に戻ってくれ何があるかわからない。」
「「わかったわ(っす)。」」
二人は駆けていく。残った僕にアンガスさんのげんこつが落ちる。チカチカするくらいの威力だ……
「ヴァン、指示はなんだった?俺は倒せとは言っていない。今回は倒せたからいいものを、より有利に事を進めることも冒険者にとって必要なことだ。命あっての仕事だ。常にリスクを考えて行動しろ。」
「すみませんでした。」
「わかればいい。まぁでも黒幕を見つけ出したのはたいしたものだ、その後も冷静に判断できれば文句なしだったな。これも経験、あまり無茶はするなよ。」
それからも、こんなパターンの時は、単独の時、パーティーでこなしてるときなど様々な条件で動いたときのシュミレーションをアンガスさんとするのだった。
しばらくすると二人が戻ってきた。二人の話は洞窟のねぐらがあった報告と魔力感知で三体のみだったので洞窟外から焼き殺したとの報告だった。念のため洞窟の入り口は土魔法で塞いできたとのことなので同じように群れをなすことはないだろうとのことだった。こうして村からの依頼、魔獣の調査討伐を終えるのだった。
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