経験とズレた常識
メリークリスマス!!と言ってみた。そしてうちにサンタは来ません。
それでは43話どうぞ( ゜∀゜)つ
師匠のいる宿の食堂としているスペースに行くと、未だにだるそうに頭を抱えた姿の師匠が居た。
「師匠に話があると炎の翼の皆さんが来たのですが……、その前に回復の魔法しますか?」
すると夕方の仕込をしていたであろうヴェルダさんから声がかかる。
「ヴァン!! いい歳したおっさんがなにも考えずに飲むのがいけないんだよ! 甘やかすんじゃないよ! 自業自得なんだからこういうときにわからせてやらないとね!」
少しお怒り気味の大きな声で回復魔法の禁止を言われてしまった。この宿でのヒエラルキーはヴェルダさんを頂点としているため、ここは逆らってはいけない。流れに乗らなくてはいけないのだ。
「うぅ……ヴェルダさん…あんまり大きな声出さないでくれ……」
「うるさいよ!! このすっとこどっこい!! 毎回毎回ガストンと飲むと次の日まで使い物になら無いんだから!いい加減学びな!」
なんだろうかこの夫婦漫才でも見てるような光景は、話を進めたいのでアンガスさんに視線を向けると頷いてくれた。
「マダム、その辺で許してあげてはくれないだろうか?」
「マダムってあたしのことかい?その赤髪の三人組ってことは噂の炎の翼かい?」
「噂というのはわからないが、我々が炎の翼であることは間違いない、マーク殿に今回お願いがあって来たのだかよろしいか?」
普段とは少し違う感じもするがこういった交渉はほとんどがリーダーであるアンガスさんがしているらしいし任せることにした。
「よく町に貢献してくれてる冒険者パーティーがあるって言われてるよ。ここに流れてくる奴らはダンジョン、ダンジョンと私利私欲のために動いてるのがほとんどだからね。そういう意味ではこの町の大勢はあんたたちに感謝してるってことだよ。」
「そうでしたか、これからも我々のやれることをやっていきますよ。」
とすんなりとヴェルダさんを落ち着かせたのだ。
「マーク殿、ヴァンをサポート・メンバーとしてお借りしたいのだが、そちらの都合がよければなんだがどうだろうか?」
「いいぞ。今日の俺は使い物にならないからな、どれくらいで帰ってこれそうなんだ?」
「このあとすぐの出発で1日~2日程だと思われます。」
「わかったその間俺はギルドで昨日ダグと話した冒険者の訓練をしてくるさ。ヴァンのことは頼んだ。」
あっさりと許可が降りたので、今後の僕の予定は炎の翼と依頼をこなす事となった。一時間後に西門に集合となったのでいったん別行動となる。必要な荷物などはと聞いたら泊まる必要がある討伐依頼に必要だと思うものを持ってこいと言われたので早速準備をする。
「師匠、いつもの夜営セットを持っていっても良いですか?」
「……あぁ……必要なの持ってっていいぞ。」
生返事なのが気になるが、許可を得たので部屋へと戻りマジックバックを持っていく。そこで換金したお金を師匠に渡すのを忘れていたので、再度食堂へと戻る。
師匠は真ん中のテーブルにいたはずなのに、いつの間にかカウンターの端に移動させられていた。
「師匠、換金したお金を渡すのを忘れて居たので届けに来ました。」
金貨が入った麻の袋を渡すと無言で頷き中から大金貨1枚と金貨5枚を渡してきた。
「いつ使うかわからないから持っていけ、武器もどんな敵かわかってないんだろ? いくつか種類を持っていくといい。マジックバックのスペースに余裕あるだろ? 」
「ありがとうございます。普段使ってる武器をいくつか持っていくようにします。」
助言をもらったのでもう一度部屋に戻り武器を漁りマジックバックに詰め込み、準備も完了したので西門へと向かう。ポーションなんかはすでにマジックバックに入っているので時間に余裕がある。
ゆっくりと町を見ながら西門へと向かった。到着するとすでに炎の翼の面々が待っていたのであわてて走った。
「すみません。遅かったですか?」
「大丈夫よぉ~遅れてくるようだと減点だけど、時間より早く来てるんだから偉いわ。」
デルフィーヌさんが頭を撫でながら言ってくれた。
「商人の護衛なんかも冒険者の仕事にあるからな。そういったものは時間にうるさいから、今回のように少し早くに来ることを心がけるのはいいことだ。」
「わかりました。」
「今回の依頼は内容的にはDランクの依頼になる、村からの依頼で夜な夜な家畜や人が襲われるので魔獣の調査駆逐をしてほしいというものだ。見かける魔獣のほとんどがゴブリンだという話だが、何度も繰り返し村にやって来るらしい、この時点で上位種が居る可能性がある。」
「知能の低い魔獣の動きとは違うっすからね。その村を生かさず殺さずって所から上位種が居るんじゃないかって俺達は考えたんすよ!!」
長年冒険者をやっている経験からの助言だろう。ギルドのサポート・メンバーの制度はとてもためになる話を聞けるいい機会だと思った。
「ヴァンは普段何で移動しているんだ?」
「土人形の背に乗って移動してます!!」
「ッ!? 土人形っすか?」
バレットさんなんでそんなに驚いてるんだろうか?師匠との移動はいつも土人形だけど?といってもまだ長距離の移動は二回しか無いけどね。
「えっと…皆さんは普段の移動は何で移動しているんですか?」
「まぁ徒歩だったり、馬車や獣車だな。」
「魔法での移動はしないのですか?」
「ヴァン、まずその移動方法だと土魔法が使える者って条件が入るわね、人々はそれぞれ使いこなせる属性がある程度決まってるのは知ってるわよね?」
ろうそくの検査で僕は白の火が消えてしまったので光魔法は使うことができない、さらに火属性も弱々しい火でこれ以上の練度の上昇が難しいと師匠からも言われている。その件だと思ったので頷く。
「私達三人のなかで土属性魔法が使えるのがバレットだけよ、あなたの師匠とあなたはかなり特殊な存在なのよ! マークさんが五属性でヴァンが四属性私の三属性が霞んでしまうのよ。」
やれやれと首を横に振られてしまった……デルフィーヌさんごめんなさい僕も五属性使えます、さらに影の特殊魔法も使えます……炎の翼の三人には度々訓練のために師匠の家に来るので、四属性まで使えるかとを話している。
「まぁヴァン少し冒険者との常識がずれている所があるかもしれないってことを念頭にこの依頼を達成してしまおう。土人形の魔法で移動するか。」
「了解です。いつものでいいんですよね?」
「OKっすよ!!」
「「土よ、仮初の命を宿す、獣の姿を望む、土人形」」
いつものように獣型の像が地面から作られる。形も前回と同じチーターをモチーフにした土人形だ!!
「あら、バレットと違って細身な魔獣ね。この大きさなら二人で乗れるわよね?私はヴァンの後ろに乗るわ。」
バレットさんの土人形は師匠と同じライオンのような姿をしている。それぞれの土人形に二人づつ乗り出発することになった。
「徒歩前提だったが、これなら数時間でたどり着くだろう。予定よりも早く終わることになりそうだ。」
こうして依頼元の村へと向かうのだった。
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