ドラゴン戦・炎の翼パーティー
「土よ、仮初の命を宿す器となり、光火よ、眩耀をもって、創世する、創造魔獣!!」
辺り一面を目が眩むほどのまばゆい光が放たれる。
視界が回復してくる……先程のオーガを越える大きさの影が見える。
「グルルルゥー……」
底冷えするようなうなり声、姿は長い尻尾があり、その巨体を支える太い足、全身を鱗で覆われ、背にはコウモリのような羽、頭には二本の角が生えている、口から覗く無数の牙は噛まれたら最後強靭な顎で噛み砕かれてしまうのでは無いだろうか……そう師匠が出したのは赤いドラゴンだ。
「炎の翼、こいつが俺達が倒したことのある、最高峰の魔獣だ。純竜種のドラゴンだ。やるなら覚悟しろよ殺されるまではいかないが、気絶怪我はあるからな。……まぁ俺が回復魔法で治してやるさ!」
あとで知ったのだが、竜に四段階あるそうで、前竜種の蜥蜴や蛇、亜竜種のワイバーンやシーサーペント、純竜種の属性ドラゴン、古竜種と呼ばれる数千年を生きた知恵あるドラゴンと別れる。紹介した順に強さが上がるのだ。今回目の前にいるのは純竜種Aランク相当の強力な魔獣だ。
「こんな機会滅多にないですからね。やらせてください!!」
「やってやるわ!!」「マジでパネェっす!!」と三者三様それでもやる気でいるのだ。しかし三人ともに額には汗が噴き出している。戦うわけではない僕も先程から冷や汗が止まらないのだ……魔法で作られた物でこの圧力……実物と対峙することがあるかはわからないが、この世界の危険を目の当たりにできたことは幸運だったのかもしれない。
「このドラゴンだがちゃんとブレスも吐くから気を付けろよ。」
すぐさま三人が目を見開きながら振り返る。そりゃ驚くよね…
「それじゃあ始めるぞ~」
師匠からそっけない開始の合図が出された。
「ガギャァァァァァ!!」
と開幕すぐのドラゴンの咆哮空気がビリビリと振動しているようだ。思わず目をつぶってしまう。すると師匠が近づいてきて耳打ちしてきた。
「ヴァン、隠蔽の指輪を外して、魔力視を使いっていいからこの戦闘を見るんだ。どう見えるかはわからんがお前のためになるだろ。」
言われるがまま、籠手を外して、指輪を取る。顔の隠れるヘルムをしているので目を見られることは無いだろう。
そこでドラゴンが大きく息を吸い込む仕草、すると魔力視は吸った空気が真っ赤な魔力を取込むところが見える。赤と言うことで火属性の魔法であることがわかる。
魔獣であっても魔力の属性に変化はないようだ。
その一方でデルフィーヌさんに青い魔力が集まる。「アクアカーテン」という魔法名だけ聞き取ることは出来た、すると炎の翼の三人に水で出来たベールを纏う。
「グガァァァァァ!!」
ドラゴンを中心にブレス攻撃がこの広場を覆う……すごい熱を感じるが、師匠が張った魔力障壁で僕は守られていた。
火が無くなると炎の翼の三人も無事であるようだ。炎の翼はドラゴンを挟んで両サイドに移動している、槍を持ったバレットさんが右へ、リーダーさんとデルフィーヌさんが左へ、バレットさんに茶色の魔力が溜まる。
「土よ、岩の槍にて、敵を穿て、ロックランス」
と岩槍で攻撃をするも翼で受け止めらる、反対サイドからもデルフィーヌさんによる、ファイアランスの魔法、体に当たるもののダメージは無いようだ。バレットさんが近づき槍での連撃を放つもガキン、キンとまるで金属を叩くような音が響く、傷が着くが鱗を越えてのダメージにはならい。
ドラゴンは鬱陶しいとばかりに振り上げた前足でバレットさんを踏み潰すように攻撃する、すでに予見していたようで、横へ回避していた。
動きのなかったリーダーさんに動きが、いままでよりも多くの赤い魔力に緑が混ざり中心が黄色の用な魔力を体内で作り上げていた。
「風火よ、汝自信を知り、炎を纏い、願うは機動、火纏改・翼」
リーダーさんの背中に炎の翼が生える。オーガ達を倒したときとは比べ物になら無い速度でドラゴンへと走り抜け後ろ足を傷つけ出血が見える。
「ギャァァァ!!」
ドラゴンが初めて痛みを感じたようだ。というよりも魔法なのにあまりにもリアルに出来ている……魔法の万能さがうかがい知れる。
ドラゴンの口に赤い魔力、無差別に炎弾が無数に飛び出す。
「キャァーーー!!」
近くに炎弾が被弾し、デルフィーヌさんが吹き飛ばされ倒れたままだ。助けにバレットさんが向かうが、ビュンっとドラゴンの尻尾の直撃を受け、「ガハッ!」と肺にたまる空気が抜ける声とともに広場の端まで吹き飛ばされ武器を手離してぐったりとしてしまった。
残るリーダーさんも炎の翼で機動力が上がっているが、防戦一方、徐々に追い詰められている、見ていると炎の翼の色が薄くなってきているようにも思うと、そこで翼が消えてしまう。魔力消費が激しいようで、額からは汗がすごい、あの症状は魔力枯渇だろう。ドラゴンに追い詰められ、前足の払いが直撃してしまいゴロゴロと地面を転がりそこで動かなくなってしまった。
「ガギャァァァァァ」
と勝ち名乗りならぬ、遠吠えをするのだった。
「今の彼らではこのランクのモンスターは厳しい、いつどこで現れるかわからない世界だ。この経験を生かして強くなって欲しいな。」
どこか寂しげな師匠が印象的だった。
「あの三人を連れてきてくれるか?」
「わかりました。」
三人をなるべく動かさないように、師匠の元に運ぶ。
「光よ、彼の者たちを癒したまえ、ハイ・ヒール」
三人を優しい白い光が包み込み今の戦闘で出来た傷が癒されていく。
「気がつくまでもう少しかかるだろう。どうだ?目覚めるまでドラゴンと戦ってみるか?」
えっ!!驚きの表情で師匠を見る……Bランクの冒険者パーティーでなにもできなかったのに実践経験の無い僕が戦う?
「これも経験だ、それにドラゴンももう少しで消えてしまうだろうな。どうする?」
覚悟を決め、やれることをやってみるかとドラゴンへと向き直る。いざこの世界の最高峰へ挑んでみましょう。
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