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三人組とバレット

 この一週間ずっと身体強化の魔法を特訓していただけではない。一番時間を使ったのは身体強化の魔法なのは確かだけどね。走り込みに素振り、魔法の訓練とかなり充実していたと思う。夕方前にはだるくなるまで魔法を使うように指示された。


 武器による素振りも剣だけではなく、斧や、槍、棒などさまざまな武器でやるようになった。大柄な武器も持ち上がるし振ることができるのだが、体の軸がずれたり武器に振り回されたりしてしまうので比較的短いものが多かった。

 しっかりと身体強化の魔法を使えるようになったら斧槍(ハルバート)や大剣、戦槌(ウォーハンマー)なんかの重量級の武器の扱いも練習すると言われていたので色々試して自分にあったものを選びたいものだ。


 魔法系も基本の四属性のアロー系の習得、「風よ、見えざる矢となり、敵を打て、風矢(ウィンドアロー)」と唱えたり。カッター系の習得「水よ、透き通る刃となり、敵を刻め、水刃(アクアカッター)」と唱えたり。火属性以外のウォール系も習得した「土よ、我が身を守る、盾となれ、土壁(アースウォール)」などこんな感じで魔法を習得した。いや使うことができたと言い換えたが良いかもしれない……。まだまだ熟練度が低いのだ。繰り返し練習し魔力を使いきる。闇や影の僕の適正魔法もいろいろと試してみたいがまずは基本四元素からだ!!


 今日からは身体強化の魔法を使用しながら、武器の素振りこれが身体強化の魔法に任せた雑なものになってしまうときがある、すると師匠が持った棒で叩かれ指摘される。まぁ全身鎧を着ているから痛みは無いのだが音が響いてうるさいのだ……。

 これは魔法も同じでこちらは身体強化した体で走りながら、並走する標的に魔法を当てる練習。標的は師匠の土属性魔法の土人形(アースゴーレム)人型だったり獣型だったりと師匠の気分によって違う。違うのにも理由があってそれぞれの動きで狙う位置も違ければ、急所のある場所も違うその場その場での状況判断が必要になるとのことだった。

 魔法にもボール系とアロー系では速度が違うアローの方が断然早い。1往復で師匠からの指摘が入る。練る速度、魔法のチョイスなどだ、まだまだ使える魔法が少なく走りながらで上手く集中できてないので魔法を一回使って1往復終わることも……改めて師匠のすごさがわかる訓練内容だった。







 そんな修行をしている午後に魔力感知を発動すると三つの反応があることに気がついた。


「師匠!!ここに向かってくる魔力の反応があるのですが、どうしますか?」


「ん?……ほんとだな30メートルも離れていない所に三つ……これはこの間の三人組じゃないか?」


 この修行中に魔力感知の範囲も10メートルから30メートルほどまでのびていたのだ! 是非僕を誉めてほしい。


「そうなんですか?どうしますか?」


「とりあえず籠手を外して、隠蔽の指輪をはめておけ、あとは攻撃とかはしてこないだろうが、ある程度出てくる位置もわかることだし離れて様子をみるか。」


 基本的にこの森師匠の家周辺の魔獣は群れることは無い、ほとんどが一匹で行動している。

 もちろん例外もあるし、奥の竜ヶ峰方面にいくと群れる魔獣も居るのだ。群れをなす魔獣はある程度知能があるか、個体の能力が乏しい者が群れる二パターンであるらしい。


 するとガサガサ…ガサゴソ…と反対側の森から三人の冒険者が出てきた。その冒険者達は男性が二人に、女性一人の構成で防具など傷だらけでボロボロだ。それでも怪我などは無いようだ、回復魔法やポーションなどを使って居るのかもしれないが……。向こうもこちらに気がついた様子で武器を構える。すると師匠が声をかける。


「武器をおろせ、攻撃の意思はない、俺はマークケイン、雷騰(らいほう)と言えば伝わるか?」


 はなからこちらは武器も持っていない。ラフな格好にローブ姿の師匠とそのとなりに全身鎧に包まれている僕が居るだけだ。……どう見ても怪しいか……

 三人の冒険者も伝わったようで、すぐに武器をしまってくれた。


「すまない、ペリグロの森で人に会うとは思っていなかった、盗賊と遭遇することもあると聞いていたのでな、俺達はBランクパーティー炎の翼だ。俺がリーダーのアンガス、隣の女剣士デルフィーヌ、その隣がバレットだ。雷騰のマーク殿すまないがここで少し休ませてはくれないだろうか?」


「別に俺の許可はとらなくてもこの森は誰のものでもないからな休んでいけばいいさ。」


「そういっていただけると助かる。以前ここで夜営をさせてもらったのだが魔獣避けの魔導具が近くに設置されていた。あれはあなた達が?」


「このスペースも、魔導具を置いたのも俺だ。別に秘密にするつもりはないが、言いふらしたりもしないでもらえるとありがたいんだが……。」


「あなたがそう言うなら他言はしない。雷騰が隠居したってのは聞いていたが、まさかこんな森の奥とは誰も思わないだろうからな。」


 師匠と炎の翼のリーダーとで話が進んでいく。三人は端の方で座り休憩するようだ。


「とりあえずあの三人組は問題はないだろう、ダグが最近めきめきと腕をあげている三人組が居るって言っていたからたぶんあの三人組のことだろう。」


「そうなんですね。師匠このあとの訓練はどうしますか?」


「そうだな、魔法の訓練に入るが、火と風の魔法のみでヴァンに向かってくる土人形を倒す訓練をする。今までに使ったことの無いバレットの魔法を覚えてもらう。まずバレットの詠唱だが。」


 師匠がおもむろに空へ向けて手をつきだす。


「火よ、射抜く弾丸となり、敵を射て、炎弾(フレイムバレット)


 と唱えると空へ向かって高速の火の弾丸が飛んでいく、アロー系の速度よりも早く、出た弾は親指くらいの大きさだろうか? 今まで使用した魔法のなかで一番小さな魔法だ。


「見てもらったように、高速の属性弾を発射する魔法だな。風の場合射抜く弾丸の部分を見えざる弾丸となる、空気の圧縮した弾を発射する。目標に向けてとりあえず魔法を使ってみてくれ。」


「土よ、仮初の命を宿す、魔獣の姿を望む、土人形(アースゴーレム)


 ? 今魔獣の姿を望むといったか? すると土でできた醜い顔の耳のとがった小鬼の姿が地面より現れる。あれはファンタジー世界特有のゴブリンではないだろうか?


「あのゴブリン動かないから、あれを標的にバレットの練習な。ぼさっとしてないでやるぞ!! 身体強化の魔法も使ったままだからな。同時に使ってこそ実践で使えるようになるからな。」


 とりあえず指示にしたがってバレットの練習だ。

 標的(ゴブリン像)に向けて手を突きだす。

 イメージをする、師匠の火の弾丸……火を纏った弾丸……弾丸…弾丸…よし固まった


「火よ、射抜く弾丸となり、敵を射て、炎弾(フレイムバレット)


 勢いよく発射されたが、コントロールが上手くいかずにゴブリン像の横を抜けてしまった。すぐに「アクアウォール」と師匠の声と共にゴブリン像と森の間に水の壁が発生し、炎の弾丸は消火された。


「ヴァン、よく狙え速度と魔力量共にあってるから。外したとしても後ろのウォールが守るから気にせず交互に射つんだ。」


「わかりました。」


 イメージをする。風の弾丸……空気の弾……空気砲……それを圧縮した弾をよし固まった。


「風よ、見えざる弾丸となり、敵を射て、風弾(ウィンドバレット)


 風を纏った弾丸が発射される、今回はゴブリン像の右脇の部分に当たったが、今回も前回も頭部を狙っているのでだいぶ狙いがずれている……その後交互に試すがなかなか狙った場所に当たらない……狙いを定めるときになにかできないか……何かやってみるかと手を銃の形に握ってみることにした。


「火よ、射抜く弾丸となり、敵を射て、炎弾(フレイムバレット)


 するとゴブリン像の頭部に命中、まぐれかもと風の弾丸でも成功したのだ。手の形を変えただけだが、よりイメージしやすくなった事が上手くいった要因ではないだろうか。その後火と風を交互に射ち、動かないゴブリン像では外さないで射てるようになった。


「次は走って向かってくるようにするから、考えて射てよ。」


 突然ゴブリン像が走って向かってくる。冷静に頭を炎弾で射ち抜く。がそれでは止まらず自分も後退しながら、風弾を射ち頭部2発で止まった。ゴブリン像はその場で崩れ、元の位置に戻ったが今度は頭にヘルムを被ったゴブリンが出てきた。


「次行くぞ!!」


 師匠の掛け声と共にゴブリン像が走り出す。先程と同じように、炎弾を射つ、頭部には直撃したがヘルムが邪魔をして止まる様子はない、またも後退して、風弾を射つとヘルムが外れるなんて細かい芸当だと、師匠の土人形のクオリティーの高さに感心していたがゴブリン像は止まる気配がなく、後退を余儀なくされ、炎弾をもう一発射った所で森の端に来てしまい、ゴブリン像に触られる。ゴブリン像が崩れ元の位置に戻る。


「ヴァンまずは状況判断の部分で問題がある、ヘルムを被ったゴブリンをなぜ疑問に思わない、頭を守っているなら、足を狙って機動力を削げば追いつかれずに倒すことが出来たはずだ!! 実践だったら怪我、そうでなければ最悪は死だ。しっかりと把握し状況によって狙う位置も考えろ。じゃあ次行くぞ。」


 するとゴブリン像の手から棍棒のようなものが出てきた。そして走り出す。ゴブリン像は武器を持ち走ってきているだけ、頭を狙って射ってもいいが武器で弾かれたら?それだったら武器を持った手のほうを狙って攻撃力を削ぐという考えもいいのではないだろうか?僕には戦闘経験が無い、考えても最善がすぐに出るわけではない、やってダメなら聞いて学ぼう。炎弾を武器を持つ右腕に射つ。

 ゴブリン像は右手に持っていた棍棒が弾き飛ばされた。成功だ。あとは頭部を狙って二発風弾後退しながら、炎弾でとどめをさしたので師匠の元へと向かう。


「いい判断じゃないか!! バレットのみでという条件をつけての魔法訓練だからな、実践だったら怪我や死は言い過ぎたな、すまん。それくらいの緊張感をもって訓練してほしいって事だ! 実際に接近されたら武器で対処も出来るし、他にもっと有効な魔法も使える。ゆとりをもってより効率的に倒すことが冒険者には求められると俺は思ってる。」


「ありがとうございます。気を引き締めて、頑張ります。」


「まだ行けるだろ? 次行くぞ!! 」


「はいっ!!お願いします。」


 すぐにゴブリン像が出てくる今度は棍棒にヘルムの複合だ。足を狙い、武器を奪い、倒す。さらに次はノーマルゴブリン像で二体、片方の足を狙い射つ、ピンピンしている片方を倒したあとに、足を攻撃した残りの一体を倒すなど、さまざまな状況を師匠は作ってくれた。僕の魔力がギリギリになるまでこの特訓は続いた。途中バレットだけではなく、ボールやカッター、アローと覚えた魔法を使い訓練もした。冒険者達が居るので火と風限定の訓練だったけどね。


 その一方でこの訓練を観ていた炎の翼の面々は……

いつもお読みいただきありがとうございます。

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