目覚めと決意
「うぅっ……」
目を開くとぼやける視界に女の子のシルエットが映り込む。
「ッ!? ヴァン!! 今マークさん呼んでくるから!!」
今の声はエリーセだと思う、バタバタと走り、部屋から出ていったようだ。
寝ている体制から、ベットに座る姿勢へと変える、するとバタンっとものすごい勢いでドアが開き、師匠が入ってきて僕を急に抱き締めた。そんな状況に僕は目を見開く。ありがとうございますって言いそびれてしまった。
「ッッ!?師匠どうしたんですか?」
ばっと離れると笑いだす師匠。
「ヴァン、お前が無事でよかった。あれから三日も意識が戻らなくて、大分心配したんだぞ。」
三日?神様と話して居たときに確かに長い間待たせているようだぞ?とは言われたけどそんなに時間がたっていたのか……
するとエリーセとヴェルダさんも部屋にやって来た。
「マークのことは叱っといたよ! まったく弟子だからと無理をさせるんじゃないってね。背負われてここに帰ってきたときはこんな可愛い子にどんな修行をさせたのかと心配したんだ。」
「ヴェルダさんその件は反省したって何度も言ってたじゃないか、今後倒れるまでの修行はしないって約束もしたし、エリーセちゃんにも怒られたんだ…そろそろ勘弁してくれよ……。」
なぜだろう?僕の特殊スキルが原因だったのに、なぜか師匠が怒られてる……師匠はばつが悪そうに頭をかいている。
くぅーーとお腹がなってしまった……ものすごく顔が熱い……耳まで真っ赤になっていると思う……
クスクスと笑い声が聞こえてくるし。
「あらあら、お腹の音まで可愛いとは、うちの養子にならないかい?エリーセと姉弟ってことで小鹿亭の二枚看板、商売繁盛間違いなしだね。それにお腹が空くってことは生きてる証だよ。エリーセご飯の準備してあげな。」
「はーい。」
エリーセがあわただしく下の階へと走っていく。ヴェルダさんも仕度のため、下へ降りていった。
「師匠さっきのはどういうことですか?」
「いろいろと誤魔化せる所は俺の無茶な指導が原因で倒れたって事にしたんだよ。」
「でも師匠やアリゼアさんを傷つけてしまいました…」
「なに言ってんだ。弟子の不始末は師匠の責任だ。気にすることはない、それに言っただろお前が生きていけるように手伝ってやるって! それよりも腹減ってんだろ?さっさと飯に行くぞ。」
起き上がろうとするとふらふらっとバランスを崩してしまう、受け止められる僕、師匠はすかさず肩を貸してくれた。
「三日も寝てたからな、ほら一緒に下まで行くぞ。」
三日ぶりの食事を済ませる、食べやすく、消化にも良さそうなオートミールのようなものが出てきた。美味しかった。
食事の際に師匠にお願いもした。
「師匠、アリゼアさんとオババさんに会いに行くことは可能ですか?」
「急ぎの用事があるわけではないから大丈夫だぞ。オババの所に行けば二人ともいるだろう、飯食って動けそうなら行くか! その他の買い出しなんかはすでに済ませてるから、ヴァンの回復具合で森の家に帰る予定だ。」
今後の予定も確定した、ヴェルダさんとエリーセにお礼を言って、占いの館に向かう。
「師匠、信じてもらえないかもしれませんが、この指輪を神様からいただきました。」
左手の指輪を見せる。小指には以前人差し指にしていた隠蔽の指輪がされ、人差し指と中指に制御の指輪がはめられている。
「!?それはどんな効果があるんだ?」
「この指輪なんですけど、僕の種族特性の制御の補助をしてくれるものだそうです、解放直後のような暴走はしないようになると思います。」
あごに手をあてなにやら思案している様子。
「アリゼアもまだ帰っていないのは助かったな。オリジナルの鑑定板がギルドにあるはずだ、そこでヴァンのステータスをもう一度確認した方がいいだろうな。」
頷き、館へと歩を進めるすると屈強な男達に混じる熊さんが加工された木材を持って移動しているのが確認できる……あの人は何をしているんだろうか……
近づいていくと、熊さんが気がついたようで大きな声で声をかけてきた。
「マァーク、に坊主、もう起きて大丈夫なのか?」
「その節はご迷惑お掛けして申し訳ありませんでした。」
と腰を折り、謝罪した。
「ガーハッハッハ、気にせんでええ、久々に動いたけぇな。あれくらい元気な方がええんじゃ。」
「所でアリゼアさんは何をしているのですか?」
「見てわからんのか?大工仕事をしとるんじゃけぇ。」
「それはわかるんですけど…」
師匠を見ると苦笑いしながら、話してくれたのは。
なんでもオババさんが壁をぶち壊した原因はアリゼアで、その修理をするのはアリゼアだと言うことでその修理を手伝っているのだとか。目を覚ましたらここに来るよオババさんが言っていたので、待ってる間の暇潰しも兼ねてやっていたらしい。
修理している館の中へ三人で入ると前回と同じ位置にオババさんは居た。
「へッへッへ、坊やはいろいろと吹っ切れたみたいだね。」
「はい。師匠、アリゼアさん、オババさんあの時は助けていただきありがとうございました。今後はあの力にのまれないように、あの力を、誰かを助けるための力に変えたいです。」
三人を見渡す。誰一人としていや顔していなかった。
「師匠、僕に闘う力をください。」
頭を下げ願う。
肩に手が置かれる…
「ヴァン、はじめからそういう約束だろう?俺のすべてを託すから、しっかりついてこいよ!!」
「お願いします。」
「ガーハッハッハ、本部ギルドに来たら、わしのところに来い、困ったことがあれば助けになっちゃるけぇな。」
アリゼアさんの方に向き頭を下げる
「ありがとうございます。」
「へッへッへ、私のところには、坊やが困ったときに、ここに来ることになるよ。今はまだ言う必要がないからね。いつでもおいで。」
「ありがとうございます。皆さんこれからもよろしくお願いします。」
種族特性で迷惑をかけた三人にお礼とこれからの目標を伝えた。このあとはギルドでステータスの詳細を再確認する予定だ。
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