神様と転生
はじめまして、僕は潘と申します。
ついさっきまで病室で死の狭間を彷徨っていたと思ったのですが…
この状況はどういうことでしょうか?
目の前には古民家の茶の間が広がっています、昭和初期のような白黒のテレビには先程まで居たであろう病室で寝ている僕と涙している両親が映し出され、それを見ているおじいちゃんがこたつでお茶をすすっています。
「ほっほほほ、いらっしゃい、よければこっちに来て座りなさい」
この怪しい状況でのお誘い…しかしたちすくしていても進まないので頷き、おじいちゃんの指示にしたがい対面へと座りました。
「あのおじいちゃんここはどこでどんな状況なのでしょうか?」
「分かりやすく言うなればわしの私室じゃな。」
そうおじいちゃんは言ったあとに顎に手をあて考え出してしまった。
(おじいちゃん、聞きたいのはそんなことではないんですが…状況はなんで僕はここにいるの?おじいちゃんは誰?)
「それは潘君の魂を転生させるために呼んだんじゃよ。わしは神様じゃな。」
(ッ!?なんで僕の名前を?そして心の声を聞いてる?神様におじいちゃんって言っちゃったよ…ヤバイかな…)
「そうじゃな、君の思ったことはすべてここではわかるのじゃ、おじいちゃんで構わんよ。ほっほほほ」
(優しい神様ってことか、喋らなくても会話になるから便利だな)と少しずれた感想を思っていると。
「それはそれで寂しいじゃろう?わしの話し相手になってくれんかの?なんといっても久々の来客じゃからな」
「神様、色々と聞きたいのですが、まずはなんでそのテレビに僕が映っているんですか?」
「これか?これはノンフィクションスペシャルドラマってやつじゃな。小さい頃から難病を患い、家族との絆を描いた作品じゃ。」
(確かに小さい頃から病気で入退院を繰り返してたし、両親も僕のことを励ましてくれたしずっと助けられてばかりいたもんな……でもなんでピンポイントで僕ら家族を見てるんだろうか?)
「それは、潘ファミリーのファンじゃからの。ほっほほほ、神のわしにも好き嫌いがあるからのぉ~。潘君の両親は地球に暮らす善良な住人じゃ、小さな幸せをかみしめ君の病と一緒に闘っていた。そして君の病に負けない、前向きに生きた証をなにか形にしようと、わしの気まぐれもあるが転生して次の人生を謳歌してもらいたいと思ったんじゃよ。」
「潘君の死の直前に思った願いを叶えてあげたいと思ったんじゃ」
(確かに僕は死の直前に次生まれるなら健康な体、今まで僕を助けて手伝ってくれた人達のように、困っている人がいたら手助けを出来る立派な人間になりたいと……わがままを言ったら波瀾万丈まではいかないけど、人とは変わったいろんな体験ができたらいいなって思うかな。でも大前提は両親に感謝の言葉を伝えたかったな。)
「ほっほほほ、そこで転生じゃ!!同じ地球に転生させてやりたいのじゃが…魂の器が弱ってしまっていて、難しいのじゃ、そこで別の異世界へと潘君を転生させる。そのまま潘と言う名では魂との結び付きが強くなってしまい魂が壊れ転生できんなくなってしまうからのぉ~、転生先では別の名前を授けるとしよう。たしか潘は漢姓でばんという表現をしたはずじゃ、少し手を加えてヴァン・アルカードとしてあちらの世界を謳歌するとよい。」
「……神様、色々と飲み込めない状況なのですが…」
「なに、心配することはない。少しサービスしてやる、あちらの言葉などはわかるように言語理解というスキルを付ける。新しい肉体もヴァン君の希望通りじゃよ。あちらのことはわしにもわからんことがあるから、現地でのサポート役を頼んでおる。安心するといい。」
気になるワードがたくさん出たけど、とりあえずお礼を。
「……ありがとうございます!?でいいのかな?まだまだ聞きたいことがあるのですが」
「残念じゃが、むこうの神様はせっかちなようじゃ、後ろを見てみなさい。」
ぱっと後ろを振り向けば丸く真っ黒な空間に電気のようなものがほとばしっている…体が若干吸い込まれている用に感じる…もう少し話を聞きたいので踏ん張って抵抗していると。
バタンと襖を開ける音がしてそちらを向くととても美しい女性が入ってきた。
「主神様、彼に異世界を渡る際に魂の補修と肉体の改変が起こり、痛みがあることはお伝えになったのですか?」
一言も聞かされていない……
神様を見る……
なんともばつのわるそうな顔でこちらを見ていた。
「…………ヴァン君……最近物忘れがのぉ~ほっほほほ」
すでに踏ん張りきれずに体の一部が吸い込まれつつある。
ッッッ!!痛い…普通に痛いんだけど…心の準備をする時間が欲しかった…痛みで気を失いそうになるなか神様の最後の言葉を聞きながら門に吸い込まれるのであった。
「すまんのじゃ、ヴァン・アルカードに幸あらんことを」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ジト目で見ている女性
「主神様、こちらの伝え忘れです。彼にお詫びになにかしてあげてもよいのではないでしょうか?」
「うむ、……健康な体と言っておったし、特殊スキルとして健康体を付与しておこうかの」
こうして潘改めてヴァン・アルカードは地球から異世界に転生したのである。