師匠のパーティーと冒険者規約
それではミッション開始だ!!
と意気込んだのだが、僕がやることは待つだけだ。
二人が立ち上がり、扉に向かって歩き出す。扉を開けるとザワザワと喧騒が聞こえてくる。
そして二人が出ていくとその喧騒はさらに大きくなったようだ。
「ガーハッハッハ、お前らよく聞かんかい、今日はわしら殲滅の獣が、訓練見てやるんじゃけん、はよぉ訓練場に移動せぇ」
「おい、アリゼア、まぁいいか……、今言った通り臨時で訓練見てやることになった、後進の育成が目的だ。時間のあるやつ、上のランクに上がりたいやつ着いてこい。見ることもまた技術向上に一役買うからな!!」
「雷騰に兇獣に見てもらえるなんてこんな機会ないな。」「俺は癒姫の訓練がいいぞ。」「いやいや、三鎗聖、不撓が居たら殲滅の獣復活なのにな。」「なにか不味いことでもあるのか?」
と様々な声が聞こえる、気になるなとダグさんを見ると説明してくれた。
先程上がった名前は師匠の仲間達の名前だ。
パーティー名は殲滅の獣、熊さんがリーダーであったために付けたそうだ。
メンバーは兇獣のアリゼア、対峙した敵に荒々しく暴れまわる様子から呼ばれている。
雷騰のマーク、師匠の特殊スキル雷魔法を使用し速度を活かした戦闘方法から呼ばれている。
癒姫のミラーナ、容姿端麗のエルフパーティー唯一の女性精霊魔法、癒し系統の魔法が得意であったことから呼ばれていた。
三鎗聖のアーディ、竜人で鎗の達人で三叉鎗を得意とした竜人による神々しさから呼ばれていた。
不撓のゲニア、どんなに強大な敵であろうと敵前から退くことがない、大楯、大槌を扱うドワーフのことである。
この世界で唯一のSランクパーティーとして認定された伝説の五人組だが7年前に突然解散が宣言され、それぞれの道を歩み今の状態となっているそうだ。尚癒姫、三鎗聖、不撓は現在消息不明。
とダグさんはこれに関しても熱く語っていた。
師匠ってすごい人だったんだな。殲滅の獣の話を聞いている間に師匠と熊さんはほとんどの冒険者を引き連れて行ったので、
「ヴァン君もう大丈夫そうだから冒険者登録をしてきてください。左の新規受付で先ほどの用紙を提出してくれれば説明を受けられますので、それではいってらっしゃい。」
「ありがとうございました。」
そっとしのび足で下の階へ向かう、ほとんど人がいなくなっていたので、受付へとたどり着く。
「いらっしゃいませ、本日はどの様なご用件でしょうか?」
「冒険者登録をお願いしたいのですが。」
「かしこまりました、冒険者登録用紙への記入はお済みでしょうか?代筆が必要でしょうか?正確な情報が欲しいので、鑑定板での確認もお願い致します。」
手に待っていた用紙を受付嬢さんに渡す。
「記入をして来たので、チェックをお願いします。鑑定板も先ほど使わせてもらいました。」
受け取った受付嬢さんは用紙の確認作業をおこなっている。
最後の方で一瞬止まったようにも思えるが気のせいだろう。
「すべての項目確認完了しました。ヴァン様は冒険者ギルドの会員となることが可能です。冒険者は大変危険な仕事です。命の危険がある場合がございますが、それでも冒険者となりますか?」
「はい。」
「かしこまりました。冒険者登録に手数料として大銀貨2枚を頂きます、冒険者プレートを作成して参りますので、少々お待ちください。」
大銀貨を渡し、受付嬢は裏へと入っていった。
カウンター前でしばし待っていると、受付嬢が戻ってきた。
「お待たせいたしました。こちらが冒険者プレートになります。」
手渡された物は、師匠が首から下げていた、ドッグタグのようなプレートだった。
名前と年齢、ランクFと登録場所のルダボスカがそのプレートに記載されていた。
「本日この時より、ヴァン様は冒険者となります。冒険者としての規約などをお話しさせてもらいますね。」
受付嬢の人の説明によると。
・冒険者の仕事として、魔獣討伐、ダンジョン調査、護衛、採取依頼などをクエストと言う形でこなしていく。期限などもあるので、しっかりと確認をすることを言われた。依頼失敗の場合罰金等もあるとのことだ。
・ランクに関して、S、A、B、C、D、E、Fの七段階だそうだ。クエストを受ける際に一つ上のランクまで受注可能。ギルド創設当初はクエストによる制限はなかったが、実力に見合わないクエストを選び、達成できなかったり、死んでしまう者が多く出たため、一つ上までのクエストと決まりができたそうだ。
・ギルドで魔獣の素材や魔石の買取をおこなっている。買取価格は本来の価格から10%金額が引かれているそうだ、なんでも冒険者プレートで街や国を移動する際の税金などに当てられているそうだ、尚買取額から一年間で規定の金額を越えるようであれば、戻ってくる仕組みを取っているのだとか。
・冒険者の死者を発見したときは冒険者プレートの回収をお願いされた。死と隣り合わせの危険な職業ゆえそういった場面に遭遇することもあるのだろう。ギルドでも冒険者の把握をしておきたいようだ。
このように規約とお願いを聞いた。あと気になったことも質問した。
「受付嬢さんはきれいな女性が多いと思ったのですが…」
するとすぐに受付嬢の人が笑みを浮かべて話してくれた。
「その件でしたら、初代ギルドマスターである渡り人の方がギルドの受付嬢はかわいい、きれいな女子!!これぞまさにテンプレ!!と代々受け継がれているのですよ。ギルドのシステムもほとんど渡り人の方二人で決めたそうです。」
400年も前に来た渡り人の人達はとんでもないことをした気がする…そしてそれをそのままの形で残してきたこちらの世界の人たちもビックリだ!
「他にご質問がなければ、以上で説明の方は終了となります。」
「ありがとうございました。」
「ヴァン様の活躍を期待しております。」
と深いお辞儀をされた。
こうして僕はFランクの冒険者となり、冒険者ギルドを出るのだった。懸念されていた先輩冒険者に絡まれるってフラグは回収されなかった、結局のところ師匠と熊さんがほとんどの冒険者を引き連れて行ってしまったからなのだが、めんどうに巻き込まれずホッとしていた。
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