訓練場は高性能
鬼を見た。組手の衝突音が近所迷惑だと……。
そして逃げるように宿をあとしにた僕たちはギルドへと向かった。
ギルドに修行の続きをするためだ。ヴェルダさんからもやるなら訓練場でやりなと言われたし、どんなものか知りたかったのもある。
今は受付に並んでいる。順番が回ってきた。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「訓練場の使用する際になにか申請をしなくてはならないですか?」
「訓練場の使用ですね、ギルド証はお持ちでしょうか?」
首にぶら下がっているギルド証を見せると。
「ありがとうございます、ギルド証をお持ちであれば施設の利用が可能でございます。また定期的に戦闘訓練などもおこなっておりますので、ぜひお試しください。冒険のお役にたてることもあると思いますよ。」
決まりなどはなさそうなのでそのまま向かう。
戦闘訓練にも興味があるが僕が町にいるタイミングでやっているかなどの問題もあるが、なにより師匠から直接指導してもらっている僕よりも恵まれた環境ではないと思ってしまった。
ギルド訓練場に入って驚いた。
訓練場はかなり広くバスケットコートが4つ入りそうな程なのだ、なにより扉を潜る際に魔力を感じたが属性がわからなかった。
外から見たギルドよりもここのスペースの方が広いのだ……理解できないで入り口で立ち止まっていると左横から声をかけられる。
「ここでは見ない顔だな、広さに驚いているのか?」
「え、あ、はい、ギルドの建物よりも広いスペースだったのでどうなってるのかなって。」
「そうだろうな、ここの広さはギルドの創設者の渡り人が作った魔導具の効果らしくてな、空間が拡張されるらしいんだ。まぁ俺もどうしてそうなってるのかはわからんが創始者がすごいひとだったってことはわかるな。」
そう笑って親切に教えてくれた。
さらに説明がくわえられた。
「お前さんの右側にある武器類は全て使って構わない、さらにこの中の空間は魔法にも対応していてな、衝撃を吸収する透明なバリアみたいなのが貼ってあるからより実践的な訓練ができる。怪我の心配も優秀な光魔法の使い手が待機してるから即死しなければ治してもらえるぞ。」
「そんな効果があるんですかここの空間には?それにしてはそこまで多く人はいないですよね?」
「そうだな、訓練するとなると地味な基礎訓練や対人になるだろ? 俺たち冒険者の収入は魔獣を討伐して素材を売ってそれで生活をする、修行よりも実戦で鍛えるとか、すぐさま駆け出しを抜けて上級冒険者になろうと言うやつがほとんどなのさ、基礎がしっかりしてからの方がより安全に進めると思うんだがな。」
駆け出しだとなかなか稼ぐことが出来ずに生活が窮困する、修行に時間をさくほどの余裕がないのだろうな……冒険者は基本的に自己責任だ。けれども強くなければ魔獣に負傷を負わされることもあるだろう、それを回避するために自分の力を高めるそのために修行を……。
うまくバランスを取るのは難しそうだな。
「ギルドも色々考えてはいるさ、無謀な冒険者を救うのにサポート・メンバーってシステムもあるし、引退した上位の冒険者がここで戦闘訓練をしてくれるしな、最近だとなんでも雷騰が考案した魔獣を模した土人形での訓練もあってな冒険者の死亡率を下げるのに役立っているみたいだぞ。」
師匠の土人形の訓練はすでに導入されているのか、僕も大分お世話になった、あれがあったから師匠の住む森でも戦闘が出来ているのだろう。
「いろいろとありがとうございます。」
「なにかあれば聞いてくれ、だいたい俺はここで冒険者たちを眺めてるからよ。」
多くはないが訓練している人が居るので見学してから修行の続きをしようとしばらく見ていたのだが……対人している人達の動きが遅く魔法も止まった状態で的を狙って詠唱している。
あとで聞いた話なのだが、ここを利用している人達は戦闘訓練日以外はEFしか居ないようだ。
「(ばん、ここでつづき、するの?)」
ジョージも周りの目を気にしてギルドに来たときはほとんどじゃべらないのだが、さすがにここでいつものような修行をするのは気が引けるようで乗り気ではないようだ。
僕も同じ意見だし、だいぶ組手の熱も下がっていたので。
「今日はやめておこうか、帰ったらしっかりと鍛練しよう。」
訓練場から出ようとしたとき。先程声をかけてくれた冒険者が声をかけてきた。
「やっていかないのか?」
「今日はどういった施設なのか確認に来たので、今日は帰ります。」
「まぁ君の立ち姿からも実力者なのだろう、今日の人達が引いてしまうと思うのも無理はない、お手本になってほしかったんどけどね。それはまたの機会にお願いするよ。」
そう言い残して他の冒険者達のところへと行ってしまった。
何者だったのだろうか?見た目だけで判断ができるのだろうか?
訓練場をあとにしてホールへと向かうと、受付嬢さんがこちらに向かってきた。
「ヴァン様でよろしかったでしょうか?」
「そうですけど、なにかありましたか?」
「ギルドマスターがお呼びですので来ていただいてもよろしいでしょうか?」
「わかりました。」
ダグサンから呼び出されたので、受付嬢のあとに続きギルドマスター室へと向かったのだった。
僕たちの新たな修行が始まることになるとは思いもよらなかった。
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