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貢ぎ物

 師匠と共に戻った小鹿亭では食事の仕込みがされているようだ、外にまでいい匂いが漂ってきている。

 空に広がっていた星は消えて、東の空が白んできた時間帯だ。


 カランカランと小鹿亭の扉を明けると厨房からヴェルダさんがやってくる。


「子は親に似る、師が師なら弟子も弟子だねぇまったく今からでも宿泊代はキッチリもらうからね!部屋にグラス持っていってやるから部屋で休んどきな。」


「ヴェルダさんあんまり大きな声は……」


「はぁ? 聞こえないねさっさと行った行った。」


 しっしっと払うかのように言って厨房へと戻ってしまった。

 部屋に戻り、師匠がベットに倒れ込み僕のベットにジョージを寝かした。

 コンコンとヴェルダさんと思われるノックがしたので扉を開ければ冷めた目で見ているエリーセが……


「ばっかじゃないの……。」


 その一言だけ言うとグラスのお盆を渡して去っていってしまったのだった……。

 朝帰りは二度目となってしまったが、あぁまで露骨に不機嫌ですって顔をされるのも困ったものだ。


 少し眠いのでジョージの隣にもぐり込んで寝るのだった。




 ちょんちょんと頬をつつかれて目が覚める。


「(ばん、おなか、すいた。)」


 僕の記憶が正しければタンクトップ達と食べ比べをしていて食材が底をつきると言う行きつけの酒場のマスターの泣きが入るくらい食べてたよね?

 僕もよく考えればお腹が減ってるから下に食べに行こう。


「おはよう、ヴェルダさんのところに行こう。」


 食堂へと行くと既に朝食の時間は過ぎているのでランチメニューになっていた。朝食と晩御飯のみの宿泊メニューなので支払いをして注文すると……エリーセが配膳してくれた。ニコリともしなかったけどね。


 そんなこんなでジョージも満足なランチを食べ終えこのあとの予定を簡単に決める。ギルドに寄ってリカール商会それとオババ様のところにも行こうかな、アリアンフロド様に竜血樹がジョージに必要だって教えてもらったからお礼も言いたいし、占いのオババ様に言えばいいのかはわからないけどね。


「エリーセ、リカール商会に行くけど買い出しとかある?」


 近くを通ったエリーセに確認すると。


「驚かされた分働いてもらおうかしらね。お母さんに聞いてくるから待ってて。」


 すぐに戻ってきたエリーセの手にはメモがその中身は必要な食材や生活用品などが色々と書かれていた。

 最後の所に付け加えられていたのはエリーセ様への貢ぎ物と記されていた……。

 詫びを所望すると言うことなのだろう、リカール商会に行ったときに探すとして予定の変更は無さそうだな。




 ギルドへと向かい報酬を受け取った。その受け取り場所は二階の個室でそのとき言われたのが「白金貨12枚大金貨7枚金貨5枚となります。お確かめください。」受付嬢さんが淡々と進めていく。

 言われた金額に驚いたのだが、よく考えればAランクの魔獣それも竜の素材をギルドに卸したのだ今までの報酬とはかけ離れた金額となったことは必然だっただろう。これに依頼が絡んでいたらもっと報酬は増えていただろう。


 冒険者、強くランクが上位であれば相当に稼げる夢のある職種だと言われるのも納得だ。それでも自身の命を賭けている、夢を追いかけ道半ばで散っていった冒険者も多くいるのだろう、恵まれた環境に体質など僕は恵まれているなと改めて思うのだった。




 ギルドをあとにしてリカール商会に入った僕達を待ち受けていたのは、恰幅のよいおじさんこと店長リカールさんだ。


「いらっしゃいませ、ヴァン様にジョージ様。」


 綺麗なお辞儀、スンスンと鼻で匂いを嗅ぐ仕草……


「素晴らしい、実に素晴らしいこれほどまでに芳しい匂いとなるとは……」

「店長、お客様の前です、お控えください。」


 と隣にたつ店員さんに注意されるリカールさん。


「これは失礼いたしました。そろそろ我が商会に足をお運びいただける頃と思いましてお待ちしておりました。そしてドラゴンの素材がギルドに卸されたとの噂が耳に入っておりましたのでマークケイン様関連と思いまして……フフフッその顔ですと当たりのようですね。」


 昨日、それもお昼過ぎのギルドさらに解体場で騒ぎを起こしたことなのにドラゴンが入ったことを知っていることに驚きが顔に出てしまったみたいだ……やはり大きな商会の情報網はすごいのかな。


「かまをかけてみましたがこれ程までに効果があるとは、老婆心ながらヴァン様たちは将来有望ですから、顔に出さないよう訓練されるといいと思いますよ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 大きな商会のトップらしいので素直に受け入れよう。エリーセから渡されたメモを取り出す。


「小鹿亭のお使いと、前回のように3ヶ月分の食材をお願いしたいのですが大丈夫でしょうか?」


「小鹿亭のお使いとはそちらのメモですかね? 拝見することは可能ですか?」


 言われたのでそのまま渡す。リカールさんは読み進めニタァと笑い、目が光った気がする。


「こちらの物でしたらすぐに揃いますのでお待ちください、ヴァン様達用の3ヶ月分ですが明日の朝には受け取りが出来るように手配いたします。僭越ながら女性への貢ぎ物に心当たりがございますので、ご紹介させていただいてもよろしいでしょうか?」


 すっかり忘れていた……エリーセから渡されたメモの最後に貢ぎ物を所望すると書かれていたことを……だってギルドで高額な報酬を提示されれば忘れてしまうだろう。


 リカールさんはすでに店の奥倉庫や従業員専用の部屋へと行ってしまったので待つことに。

 しばらく店内を散策していると。


「大変お待たせいたしました、先ほどのプレゼントにふさわしいであろう商品がこちらになります。」


 そういってリカールさんが持ってきたのはジュエリーケースのようだ。


「中を見てもいいですか?」


「どうぞ。きっとおきに召すと思いますよ。」


 ジュエリーケースを開けると中にはしずく型のロケットペンダントが入っていた。中に写真などを入れるのではなく無色の魔石?が入っていたのだった。


「そちらは守護のペンダントとなっていまして中に入っているのはロッククリスタルでございます。ダンジョンの下層にて発掘される貴重な物ですね。」


「守護のペンダントですか?」


「こちらの商品、帝国で作られた最新の魔導具になります。帝国独自の特殊な技法でロッククリスタルにお好きな魔法を込めることが可能だそうです。ですので守護のペンダントと名付けられております。」


 魔導具になるのか、魔石には同じ属性の魔法を込めることが出来るがこの守護のペンダントは好きな魔法を込められる、魔獣の危険がある世界では小型のペンダントで命の危機を守れるならよい買い物なのかも知れないな。


「ちなみになのですが、帝国の貴族の方々はこちらのペンダントに光魔法のヒールやキュアなどを入れる方や万が一に備えまして攻撃魔法を入れる方もおられるそうですよ。こちらの商品プレゼントにいかがでしょうか?」


 リカールさんの販売への接客が続く。


「そのおいくらになるんですか?」


「帝国最新式の魔導具になりますので……大金貨8枚となります。」


 買えなくはないがプレゼントとしてはかなり高い……ドラゴンの報酬があれだけあったし……なにより気絶させてしまうほど驚かせた……


「魔石とは違い特殊な属性いわゆる特殊スキルの魔法も込めることが可能ですよ。」


 僕の影魔法も込められるのか?そしたら守護にも使える新しい魔法もある。


「買います!」


「ありがとうございます。魔法の方はいかがいたしましょうか?こちらで魔法使いの者を準備することもできますが?」


「自分で込めたいのですが大丈夫ですか?」


「構いません、別室に魔法を込める専用の器具がございますので、またヴァン様のみその部屋に入っていただき扱ってください、守秘義務も含まれますので我々は別の部屋で待機いたします。」


 別の部屋へと案内され、器具の使い方の説明を受け守護のペンダントにエリーセを守るための影魔法を込めるのだった。

 この魔法が発動しないことがいいけどね。


 支払いを済ませリカール商会をあとにするのだった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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