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タンクトップ達は動揺しない

 ジョージの鑑定が済み冒険者ギルドへの報告が完了したので前回からいただいている? 指名依頼をこなしてしまおうとギルドマスター室から1階の解体受付へと向かうとそこには巨人の強面の……グランデさんが肩肘ついて逆の手で受付カウンターをトントントントンと一定のリズムで叩いている……すごく不機嫌に見えるのは回りの人達が解体受付に並んでいないことで何となくだが判断できる。


 そして僕とジョージを見つけたときの目が光った。

 カウンターを神速の早さで僕らの背後に二メートルをはるかに越えるグランデさんが立っている。そして上がる視界。安定の肩の上。


「いつまで待たせるんだ、おでらを仕事漬けにする気か? 残業は嫌だからなぁ。」


 ドカドカと解体場へと向かっていく、解体依頼に来ていた冒険者達も胸を撫で下ろすのだった。


 いつものように担がれて入ると温かく迎えてくれるタンクトップの兄弟たち。


「今回も頼むぞ!!」「ジョージ居れとペアだよろしくなぁ~」「雷騰シフトに当たっちまったか。」「終わったら飯行けるだろ?兄弟!!」「ジョージ、お前へのプレゼントだぞ!!」


 ジョージは前回約束していた子供用のタンクトップを貰らいプレゼントを渡された人に連れられ地抜きのスペースへと行ってしまった。

 そんなアットホームな空気が慌ただしくなってしまう出来事が発生する。


「ん!? 獣の毛皮じゃないな、こんなゴツゴツした魔獣ペリグロの森に居たか?」


 マジックバックよりずるずると尻尾から出てきた竜血樹のあの場所を守護していた純竜種の地竜だ。

 解体場はとても広いスペースを取っているが他の魔獣を退けなければ出せないような巨大な竜を目の前にしたタンクトップ達も一瞬呆けるがすぐに動き出す。

「竜種用の解体器具を持ってこい!!」「AからDの解体テーブルは奥にどかしてくれ。」「久々の大物だ。」


 様々な会話が聞こえてくる、長年ギルドの解体を担当しているだけありすぐに雷騰シフトから竜種解体へと移行していった。


「おいヴァンあれは雷騰がやったのか?」


「違いますよ。あの竜は僕とジョージともう一人の子と三人で倒しました。」


 さすがのグランデさんも何を言ってるんだお前と顔で語りかけてくる。


「いや、お前冒険者登録してから一年もたってないよな? しかもEランクだよな?」


「もうすぐ一年ですね、先ほどDランクへと上がりましたからようやく一人前の冒険者になれたって感じですよ。」


 ニカッと笑って昇格したことを伝えるが手を顔を隠し、首を降っている。


「規格外だな雷騰の弟子とやらは……それとあの地竜一部解体したように見えるがあれはお前達がやったんだよな? 魔石はどうした?」


「師匠も僕たちならできると任せてくれましたから。腹を開いたのは僕ですね、竜の解体はわからなかったので逆鱗から開きました。魔石は魔力欠乏症のために使ってしまいました。」


「魔力欠乏症? そんなに重症だった人が居たのか? 雷騰はすでに魔力欠乏症になるような感じじゃないから、ヴァンに症状が出たら竜は倒せないよな? ん? どう言うことだ?」


 グランデさんが1人で悩み出してしまった。

 地竜がマジックバックから出てきたのだが、数人がかりで移動しようにもほとんど移動ができていない。


「それはですね、ジョージが魔力欠乏症になってしまったんです。」


「ジョージが? あいつは魔獣だろ? でも魔力があればなるのか?」


「魔獣についてまだまだ知らないことが多いですからね。僕もかなり慌ててしまったので。」


 話している間にズズズと引きずられる音と共に解体場から歓声が上がる。

 振り向けばジョージが進化した姿で地竜の移動を手伝っている。

 えっ!?なんで大きくなってるのジョージ。


「ヴァン、お前の獣魔だよな?」


「そうですね……進化したんですよ……かっこいいでしょ…ははは」


 ジョージと解体職員達は協力して地竜の解体を進めていく。

 ひとりの職員が僕たちに近づいてくる、猿顔だ。


「ヴァン君すまない、ジョージ君が大きくなって手伝うか?って聞いてくれたからお願いしたらほんとに大きくなって手伝ってくれてるんだがまずかったか?」


 ジョージの言葉を理解してるってことか? 言語理解のスキルを持ってる渡り人なのか?


「ジョージの言葉がわかるんですか?」


「完璧にはわからないぞ何となく伝わってきただけだ、俺は獣人の血が濃いからな近縁類って感じでわかったんだろう。」


「そうなんてすかね?皆さんが大丈夫なら、あの姿で手伝ってもらって構わないですよ。」


「よかった、なにも問題ないさ。あのサイズの地竜もジョージ君のパワーがあれば早く解体が終わる助かるよ!」


 そういって猿顔の職員さんはジョージの元へと戻っていった。


 それから地竜の解体はどんどんと進んでいった。

 鱗が剥がされ、部位事に分けられ、爪や牙、肉や骨に至るまで

 竜はすべての素材が有効利用されるそうだ。


 竜の解体された日には解体職員達に臨時ボーナスが出るらしく出たボーナスを出し合い皆でドラゴンの肉を買って宴会の流れらしい。これもギルド特有の福利厚生のようだ。


 竜の解体が終わればいつもの獣型の魔獣の解体になるのでテーブルが戻されいつものテーブルでどんどん解体していく。

 ジョージを見れば進化した姿のままで猿顔の職員と二人で作業していた。


 いつものごとく夕方の解体に持った来た冒険者たちの魔獣を処理し、解体作業は終了となった。


「ご苦労だった、ヴァンこのあと全員で飲みに行くから飯食いにいくぞ。小鹿亭はすでにお前たちの晩飯要らないことは伝えてあるから大丈夫だ。なにも心配することない。」


 そういえばディアンカ(鹿の魔獣)の解体後グランデさんに呼ばれた職員がそのお肉をもって裏口から出ていったのを思い出す。


「それならお言葉に甘えてご一緒させてもらいます。ジョージもいいですよね?」


「当たり前だろ、オデ達の立派な解体仲間だからな。がっはっは。」


 前回ご飯に誘われたけど断って決まったからなと今回は着いていくことになった。

 ちっちゃくなったジョージ(タンクトップ姿)を背中に装備し、タンクトップ達に囲まれながらギルド職員行きつけの酒場へとやって来た。


 グランデさんがマスターに竜の肉を渡すと入り口には本日貸しきりの立て看板が立てられエールが全員に配られた。僕とジョージはルールがあるから果実水だけどね。


 酒が入り旨いドラゴン料理がテンションをあげる。誰かが歌いだし、タンクトップが破れのどんちゃん騒ぎそして…………









「さっぶい………」


 どうしてこうなった……辺りを見回せばちっちゃく丸まって寝てるジョージや数名の解体職員……グランデさんも居たそして路地裏だ……寝息が聞こえるがやはり細かい傷やアザがあるので半年前ぐらいにもこんな光景があったような……とりあえず皆の傷を治しておこう。


「水よ、清麗なる母の恵み、彼の者たちを癒せ、水癒(アクアヒール)


 水色の光に包まれ傷やアザが治っていく、ジョージを抱き上げると。


「(ばん、あったかい、もうすこし、ねていい?)」


「いいよ、ごめんねなんか僕記憶がないんだけど……迷惑かけたかな?」


「(ん~たのしかったから、だいじょうぶ。おやすみ~)」


 するとグランデさんがもぞもぞと動き出した。


「…ん? ヴァン起きたか、お前に酒飲ませたやつは誰だまったく……まぁ怪我はお前さんが治してくれてるみたいだからオデ達はギルドに行くからな。報酬とか取りに来いよ。おいお前たちいつまで寝てんだギルドに向かうからそこで寝ろ。」


 バシバシとタンクトップ達を叩き起こしギルドへと向かっていった。

 僕はジョージを抱いたまま小鹿亭へと二度目の朝帰りをしてしまったのだった。


 帰る途中で師匠の背中を見つけたのも前回と一緒だった。



いつもお読みいただきありがとうございます。

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