ダグさんは苦労人
「「ごめんなさい」」
目覚めたエリーセにまず最初におこなったのは謝罪だ。
師匠から反省しろと言われ正座していたので土下座だ。
その後どうしてあのようなことをしたのかも説明し、最終的にはエリーセに許してもらえたと思う……。
師匠と共にギルドへと向かっている。
ジョージの進化をギルドマスターであるダグさんに報告するためだ。
この町を拠点に一応活動しているし、僕の秘密を知る数少ない人だ。師匠もいろいろと殲滅の獣のメンバーに僕のことを話してしまっているので、事後報告しなきゃなと笑っていた。
報告のあとはいつものように解体場で指名依頼としてジョージとお手伝いになると思う。
その後にでもステータスの確認をすればいいかな、もしかしたらダグさんの報告の際に一緒に確認するかもしれないので着いてからの成り行きに任せよう。
ルダボスカの町のなかでもひときわ目立つ建物に到着する。ルダボスカ冒険者ギルドだ。
中に師匠と入ると一気に視線が集まる。
師匠はいつもの事のようでそのまま受付へと向かうついて歩く僕とジョージもその視線にさらされる……目立っているのだろうな……ヒソヒソと話している声も聞こえる。
ただお昼を過ぎているので依頼をこなしている人達が居ないのでギルド内はそこまで人が多くないのが救いだ。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?一応ギルド証の確認もお願い致します。」
美人な受付嬢さんはいつものように確認を求めてきた。師匠もなれた手つきでギルド証を手渡す。
「ダグ、ギルドマスターへの面会を希望したいのだが、忙しいだろうか?」
「ギルド証ありがとうございます、ただいま確認して参りますので、少々お待ちください。」
受付嬢さんが確認に向かっている間に、明日受けられるような依頼がないか依頼書を確認することに。
いつものように魔石の納品依頼や町中で行えるお使いのような依頼までいろいろと張られている。
ふとそのなかで新しい紙に依頼ではなく注意喚起としてギルドが発効しているものがあった。
◇注意喚起◇
ここ最近魔獣がゾンビ化している状態で発見されると言う報告がされています。
一般の方や、他の冒険者のトラブルとなることもございますので冒険者の皆様には、討伐した魔獣から魔石を取り出し、ゾンビ化を防ぐようお願い申し上げます。
と言う内容だった……つい先日前にゾンビ化させてしまったのでこれはまずいことをしたなと反省しトラブルにならないよう心がけようと思うのだった。
「ヴァン、ダグの確認とれたから上に行くぞ。」
「わかりました。」
受付嬢さんと師匠の後を追って階段を上る。
一番奥のギルドマスター室の目の前へとたどり着くと、受付嬢さんがノックをするとすぐに「入ってくれ。」と返事があった。
Eランクの冒険者にしてはギルドマスター室への訪問も慣れてきた気がする。
室内に入ればすでにダグさんがソファの側に居り、反対側へと案内される。お茶もテーブルにはセットされているので準備は万端いつでも本題には入れるよとダグさんの目が訴えている。
「マークさんのヴァン君そしてジョージ君何をやらかしてこちらに訪ねてきたのでしょうか?」
ひどい!やらかしてない……はずだ僕は依頼を受けて、その過程でジョージが進化したけど。
「ダグ、ひどいじゃないか、ひとまず報告に来たんだよ。まず俺からなんだが――……」
「冗談ですよ。えっとマークさんから? ヴァン君の竜血樹の件じゃなかったですか?」
「あぁ……その件に絡んでいると言えばいいのか……事後報告になって悪いんだが……ヴァンの半魔の秘密をゲニア、ミラーナとその連れのレイってのにポロっと喋ってしまったんだ、けして故意じゃないぞ、必要だったんだ。うん。」
ダグさん眉間の辺りを押さえながら暫しの沈黙……
「アリゼアに指摘されてな、ダグに報告しとけと注意されたんだよ。」
「他の者には喋らないように言ってくれたんですよね?」
「もちろんだ!!アリゼアが居たからな。」
「その件はマークさんの元メンバー達と言うことで大丈夫でしょう……そのミラーナさんの連れのレイと言う人物は大丈夫なのでしょうか?」
「それに関しても問題ない、ミラーナと長く一緒に旅をしている子で情報が漏れるようなら責任はミラーナがと言っていたからな。」
「ちなみにアーディさんは居なかったんですか?」
「アーディは居なかったぞ、連絡がとれなかったんだ。」
「そうでしたか、殲滅の獣が集合するのなら私もその場に行きたかったですがね。アリゼアさんが居たのなら本部への連絡も必要ないと思いますのでこちらの資料に追加しておきます。」
タグさんはソファーを立ち奥の書類が積まれている机から資料を取り出し書き加えていた。
「ヴァン君の方は依頼報告してくれましたかね?」
あっ師匠についてきただけで依頼完了の報告を忘れていた……
「すみません……報告せずにそのままここに来てしまいました。」
そういって頭をさげると。
「依頼報告はこちらで済ませてしまいますから、ギルド証と竜血樹の樹液をいただけますか?」
「竜血樹の樹液なんですが、瓶の半分程の量しか残ってないんですけど、大丈夫ですか?」
ダグさんが首をかしげる。
「残っていないと言うことは、魔力欠乏症に誰かなったんですか?」
「その魔力欠乏症にジョージがなりまして、竜血樹の樹液を使ってジョージが進化しました。」
ダグさんが目を見開きジョージを見る、見られたジョージがビクッ!!となり手に持つコップからお茶がこぼれ師匠のズボンにシミがつく。
「ダグも見ればわかるさ、ジョージ進化した姿をダグに見せてやれ。」
布を取り出しスボンを拭きながらジョージに指示を出す師匠、それを受けソファーに立ち上がりバク転してソファーの後ろのスペースに移動する。無駄にアクロバット……演出なのか?
腕輪に魔力を通すとピカッと光、筋骨隆々な戦闘猿のような姿へと変わったのだった。
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