ジョージの体ならし
ジョージの熱も下がり、無事に進化することができた。
ミラーナさんや師匠が言うには魔獣の進化には体内の魔力が必要で、ジョージの場合魔力欠乏症が起こるほど大量の魔力が必要だったのではないかとのことだ。
経験豊富な元殲滅の獣達が魔獣の進化も初めて見たとのことなので、この世界の魔獣についてまだまだ知られていないことが多いみたいだ。
王種であるジョージが特殊だった可能性も否定できないが、無事で何よりだ。
それとひとつやり残してしまったことがある。
それは竜血樹の木があった場所に師匠から借りたテントや魔導具を置いてきてしまっていること、そして討伐したリザードマン達をその場に放置してきてしまったことだ。
魔獣の魔石を抜かないとゾンビ化してしまうということを以前師匠から教えてもらっていたので、事後処理のためにももう一度竜血樹跡地へと向かうことにした。
次の日竜血樹へと向かうことになったのだがここでお別れがあった、アリゼアさんとゲニアさんは師匠の呪いを解呪する方法を探すべくアリゼアさんは王都のギルドへ、ゲニアさんは別の方面から調べてみると言うことで出立してしまった。
もともと僕の影魔法の『魔纏』の時の事故が起きたらと言うことで来てもらっていたので当初の目的に戻ると言うことだ。
ミラーナさんとレイは僕の言い出したリザードマンの事後処理の件でレイが私も参加する乗り掛かった船だからと言うことで一緒に行くことに。
そのためミラーナさんはもう少し師匠の家に居るそうだ。レイが帰ってくるまでだけどね。
帰ってきたらミラーナさんも同じく解呪のためにこの世界を探すと言っていた。
「あわてて帰ってこなくていいぞ、ジョージは進化したばかりだ、体の大きさが大分違うから、自分の能力を確認するためにも魔獣を倒しつつ、無事に帰ってこい。俺からはそれだけだ。」
「わかりました師匠。時間がかかるかもしれませんが、もう一度あの場所に行って確認してきます!!」
師匠とミラーナさんに見送られ、僕達三人は竜ヶ峰の竜血樹の木あった場所を目指して東の森を進む。
しばらくするとジョージが敏感に反応する。
「(ばん、てきがくるよ。)」
しかし僕の魔力感知には反応がない。
「ジョージ僕の魔力感知には反応がないんだけど? レイは何か感じる?」
レイに聞いても横に首を振るだけだった。
「(だって、ずっととおくだもん♪ ついてきて。)」
そういうとジョージは背中から降りて戦闘を歩きだす。
木々を避けながら道なき道を進むとようやく魔力感知に反応があった。敵の数は一体である。
以前もジョージの魔獣を感知する能力は師匠や僕よりも優れていたが進化したことによってその能力は飛躍的に伸びているようだ。
「(ばん、じょーじがたおしていい?)」
「レイこの先に魔獣が一体、ジョージが戦闘するっていってるんだけどいいかな?」
「……ええ、かまわないわ。」
レイの許可も出た。ジョージもレイの話を聞いていたのでそのまま進む、出てきたのはフォレストダイヤベア。
ダイヤベアを目視できるようになったところでジョージがブレスレットに魔力を込めると一瞬にして進化した姿2メートルを超える戦闘猿へと変化する。
僕たちもいつでも動けるように武器を構える。
「グォオォォォォ!!」
ダイヤベアが威嚇するもジョージにはその意味をなさなかった。
魔力視にはジョージの足に魔力が集まる、身体強化の部位強化で一気に距離を積めるようだ。
ドンッと地面をえぐり発射されるように飛び出したジョージ!!
「グォォ!?」
このフォレストダイヤベア表情が豊かだ、そしてそりゃビックリするよね。
ジョージはものすごい勢いでダイヤベアの隣を通りすぎバランスを崩しながらバキバキと後ろに木々をなぎ倒しながら見えなくなったのだから。
レイも目を見開いていたから相当な衝撃だね。
それでも冷静で僕よりも経験を積んでいるレイはダイヤベアの頭部を矢で射抜き絶命させた。
ダイヤベアの近くに討伐したことを確認し、ジョージがなぎ倒した木の先を見て居るとジョージが戻ってきた。
「(えっへっへ♪ ビックリした、強くなった体慣れてないと危ない。)」
「そうだね、師匠も言ってたじゃない? それに怪我とか無い? 」
「(大丈夫♪怪我したけど戻ってくる時に治った。)」
「そうなの?アリゼアさんや師匠との修行の成果かな?」
「(わかんない~。)」
「とりあえず、師匠にも言われたようにその体に馴れるようにそのままの姿で行動しよう。」
「……魔石、抜いといた。」
ジョージの確認をしている間にレイが魔石を抜いていてくれていた、お礼をしつつマジックバックの中へとフォレストダイヤベアを入れると先へと進んだ。
進む間ジョージは走ったり木に登ってみたり、木から木へと巨体をものともしない身のこなしで動きの確認をしていたたまに目測を誤り落下していたのは見なかったことにしよう。
ダイヤウルフとの戦闘では右のパンチでウルフが弾け飛び原型をとどめていなかったのには僕もレイもひきつった顔になっていたと思う……どれ程強くなったのか未だにジョージ自身も僕たちも測りかねていた。
ジョージの体を慣らしながら竜ヶ峰の麓へとたどり着いた。ここで夜営、今回はちゃんとじゃんけんした。左から僕、ジョージ、レイの順で寝たのだが……朝起きると僕が真ん中になっていたジョージが夜中に僕の左に移動したみたいだ……ちなみにジョージは寝るときは小さくなってもらった。2メートルのゴリラが真ん中はさすがにね。その巨体で寝相が悪い……手加減のできないパンチやキックなんて喰らいたくないからね。
朝日と共に山を登ったロックリザードやタートルタイガーなんかも出てきたがジョージの素手に自慢の防御を粉々にされていた。
そして竜血樹跡地が近くなって来たところで周囲に異臭がするようになっていた。
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