調合ジョージを救え
師匠の家についた僕は叫ぶだけ叫んで冷静さを失ってしまっていた。
レイと師匠は僕の両隣で付き添ってくれていた。
レイには手を握られ、師匠は背中をさすりながら側にいてくれた。
師匠は「ミラーナに任せれば大丈夫だ。お前がそんなんだと、ジョージが1番困惑しちまうぞ。大丈夫だから、まずは落ち着こうな。」とこんなことを言われて思い出したのは僕が手術室へと向かうときのお父さんとお母さんの気持ちはこういった気持ちだったのかな……なんて思った。
そんなお父さんやお母さんに心配させまいと強がって笑って見せたっけ。
ジョージは最後の方意識がなかったかもしれない、それでも手の甲にある紋様から伝わってくるジョージの生命力を感じる。
待っている僕がこんな状態ではいけないと師匠とレイに支えられるかたちで深呼吸して元気になったジョージを迎えるために気持ちを切り替えるのだった。
一方リビングでは
シャリシャリと何かを削る音や、ゴリゴリと何かを砕いている音がひっきりなしに聞こえてきている。
ジョージはリビングに設置されているソファーに寝かされている。全身の熱が下がらず、浅い呼吸を繰り返し眠っている様子である。
その隣ではアリゼアがレイに作らせた氷水でタオルを搾りジョージの額に乗せるという献身的な看病を行っている。
ゲニアは竜の魔石を様々な大きさの鑿で削り落としている、かなり慎重に削っているのがわかる、何者も近寄らせない空気をだしていた、頬を伝う汗が垂れるのも気にせずその作業に没頭してるドワーフの性質なのだろう創作物において納得がいくものを常に追いかけている感じだ。
ミラーナは薬研に自前のマジックバックから薬草類を取り出し、ゴリゴリと薬草を細かく砕く作業をしている。
またひとつ、またひとつと慣れた手つきで作業をしていく。
森の賢者と呼ばれる長命であるエルフ族のミラーナも薬学にも精通しているのだ。
余談になるがアーディは料理担当である。竜人のエプロン姿……
閑話休題
ミラーナの薬研ですりつぶした薬草類をさらに細かくこね鉢で混ぜ合わせていく。
ゲニアの削った竜の魔石当初のボーリング玉のようなサイズから今ではピンポン玉程度まで削ったサイズに変わっているそれを湯煎している樹液の中に放り込み、ゆっくりと混ぜ合わせる、直接熱してしまうと焦げるのと魔石から樹液に魔力が浸透しないと言われている。
樹液に魔力が浸透し中に入れていた魔石が無色透明なガラス玉のようになっている。
空魔石を取り出し、湯煎している樹液にミラーナの薬草類を入れかき混ぜる、ここでも一度に入れず、3~4回に分けしっかりと樹液に薬草類を混ぜ合わせ、冷えるのを待つ。
冷えたときに淡く光る、それが竜血樹の樹液を使った魔力欠乏症に効く特効薬である。
扉が開く。
「お待たせ、ヴァン出来上がったからあなたが飲ませてあげなさい。くよくよしてないでシャキッとしなさい!」
出てきたミラーナさんに連れられてリビングへと入った。
薬草を潰した独特の臭いが充満していた。
アリゼアさんはタオルを口元に巻いてジョージの看病をしているようだ。
バシッ!っと背中を叩かれジョージのもとまで進み、吸いのみのような容器を渡された。
ジョージの首を少し立て口元に黄色の液体を飲ませていく。
コクコクとゆっくりだが確実に飲んでいく。
そしてジョージの浅く早い呼吸が、安定した呼吸へと変わってきた。
「熱も最初より下がってきてるからやはり魔力欠乏症だったみたいね。」
ジョージの症状をミラーナは魔力欠乏症ではないかと言っているのだが、魔力欠乏症とはなんなのか教えてもらった。
魔力欠乏症とは体内に一定量ある魔力が様々な事柄により不足し起こる症状とのこと、魔力枯渇と似ているようだが、魔力欠乏症は1度起きるとその後の発症はないとのことだ。それにこれで死ぬことはほぼないという。
症状も枯渇と似ていて軽い人だと頭痛や吐き気などですむのだが、稀に熱をだし寝込むことがあると言っていた。
魔力欠乏症が起こるのは冒険者、とくに魔法をメインに戦う者がなることがあるという、魔力欠乏症を1度経験したものの魔力のステータスが1段階、人によっては2段階あがるそうだ。
また昔のエルフ達の成人の儀というものがあるらしく、その内容も今回僕達がおこなった竜血樹の採取なんだとか、人数も何十人という数で行うため危険度は低いとのこと、現在ではおこなっている部族はいないんじゃないかとのことだ。。
これらのことから魔力欠乏症は身体能力(魔力)に関する急成長が起こすものだと判断されている。
しかしジョージの場合は魔法を使うことは無い、使っているのも体内でのみ扱っている身体強化の属性外魔法で体外に放出していない……少しの不安が残るが……ジョージならきっとすぐ元気になるはずだ!!
ふと魔力視で見てみると吸いのみに入っている黄色の液体にはかなりの魔力がこもっているようでゆらゆらと蜃気楼のように見える。
ジョージを見ればお腹に流れた竜血樹の薬から体へと満遍なく魔力が浸透していくのが見えたのでジョージの体が魔力を必要としていたのだと。
お腹の魔力が足りなくなりそうだったので吸いのみに残る薬をもう一度口元へと運び飲ませる。
「便利な目よね、それにジョージだけど魔力欠乏症にしては薬の魔力が足りなくなることがおかしいわ……今回のその薬を作るのに使った魔石は竜、それも純竜種の魔石よ……補充される魔力は一般に使われる薬とは効果がけた違いなのに……」
ミラーナさんが言う。
あとから聞いたのだが、竜血樹の薬は竜血樹の樹液がなかなか手に入らないと言うことで薄めて使われたり、魔石も普通はCとかDランクで作るそうだ。
今回は竜血樹の樹液は原液、魔石のランクも最高峰のAこれは市販されている魔力ポーションなんかよりも効果が高い超高級品だったんだとか。
ジョージの手を握り早く元気になってねと側にいるとジョージが光だす……輝き出すと言った方がいいかもしれない。
部屋中に溢れる光で目を開けられず目をつぶる。
光が収まるとそこにはあの時に姿を見せた王者の風格を漂わせる、2メートルを超え筋骨隆々なジョージが立っていた。
「ウホ、ウホホ、ウホ、ウッホッホ(バン、ジョージが心配かけた、ごめん、もう大丈夫進化した。)」
他のみんなには伝わらなかったかもしれないがもう大丈夫なようだ、それを聞いて思わず抱きつてしまった、するとジョージも僕を包み込むように抱き締め返してくれた。
「心配かけさせるなよ、頼むよ相棒。」
「ウホ、ウホ、ウホッ。(もう一つ、じぃがくれたやつの使い方分かった。バン、離れて。)」
ジョージから離れるとブレスレットに魔力を込めると一瞬光るとジョージの体はいつも見慣れているちっこいジョージに戻った。するといつものように背中に装備されるジョージ。
「(おおきかったら、バンにせおってもらえないから、じぃにかんしゃだね。)」
そして回りを見渡せば全員が目を白黒させている。
最初に喋りだしたのはもちろん、師匠だ。
「ヴァン、ジョージは進化したんだよなたぶん……ジョージはなんで戻ったんだ? 説明してくれるよな?」
ジョージの話を通訳しながら師匠達にもう大丈夫と言うこと、大きさはいつでも変更が出来るようだと説明するのだった。
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