竜血樹を求めて
僕たち三人は竜血樹を求めて師匠の家から2度目となる東側竜ヶ峰へと向かって森の中を歩いていた。
森の中を歩くのはレイが先頭だミラーナさんと旅をしていることから鬱蒼とした森を歩くこともあるということでお願いした。
さらに言えばエルフであるレイも森の精霊の力を借りることができるため目的地へと迷うことなく向かっているようだ。精霊ってなんでも出来るんだなとそんなことを思っていた。
ペリグロの森を歩けばやはり魔獣も現れる、僕の魔力感知で全方位の警戒、当初の10メートルを遥かにしのぐ距離を感知できるので奇襲をされることはない、さらに言えば僕や師匠よりも魔獣を先に察知するジョージが居るので安心して歩くことができている。
師匠の話によれば竜血樹は竜ヶ峰の中腹から山頂にかけてに生っているということなのでそこを目指している。
竜血樹の採取に道具も必要なそうなのだが、師匠がそれらの道具をすべて持っていたので一式借りることができた。
「(ばん、てき、くるよ!!)」
ジョージの呼び掛けで魔獣が近づいているということなので僕も魔力感知をすると三つの反応が接近してきていることに気がつく。
「レイ、止まって僕たちの後ろに魔獣だ。数は3体獣系だと思う。」
レイはコクリと頷きすぐ僕たちの後ろで弓を構え迎撃体制が整ったようだ。
しばらくして現れたのはフォレストダイヤベアが3体だ。
体長5メートルの大型の熊、魔法を使ってくることはない、その巨体を活かした戦闘方法をとってくる、爪での攻撃などは注意が必要だ。
すると弾丸のようにジョージが飛び出すので慌てて僕も駆け出す。
「グォオォオオオォ!!」
ジョージを迎え撃とうとフォレストダイヤベアは右の爪を上から振り下ろしてくる。
振り下ろされた爪は空を切る、弾丸のようにまっすぐに向かったジョージは振り下ろされる直前でさらに加速しタックル50センチほどのジョージのタックルを受けた熊が仰向けに倒される。
その勢いを殺さずに高く飛び上がると、頭部めがけてダブルスレッジハンマーで戦闘不能に。
残りは2体のフォレストダイヤベア、一体へとウインドバレットで牽制し近づく、僕の狙いの反対のフォレストダイヤベアには正確無比な矢が襲う。目を射抜かれたフォレストダイヤベアは痛みに絶叫。どこから出したのかわからない程の矢が刺さり、さらに追い討ちのごとくレイが詠唱
「氷よ、白き華の結晶、敵を砕く、氷華!!」
レイから放たれた氷の槍が射抜かれたダイヤベアに突き刺さると、そこから霜柱のように白く凍っていき、白熊の完成。そして凍った熊は地面へとバラバラに砕け散った。
「影よ、彼の敵を、拘禁せよ、影牢」
最後に残ったフォレストダイヤベアを影で拘束しすれ違い様に首をはねる。
こうして戦闘は終了した、それよりもレイは精霊魔法に普通の魔法も使えるようだそれに驚いた。
「お疲れ様、レイは普通の魔法も使えるんだね。」
「……うん、私は半端者だから……。」
「半端者って混血のこと? それよりも氷の魔法なんて聞いたことないから、特殊スキルなんだよね?」
「……そう、特殊な魔法よ。」
「エルフと魔族のいいところが使えるなんていいことじゃん。何かあったのかはわからないけど、レイはすごいなぁ~。」
「……………。」
そこで会話が途切れてしまったが、ジョージがちっちゃい体でフォレストダイヤベアを引きずりながら持ってきたのでマジックバックにしまう、レイの氷魔法で粉々になった熊は放置することにした。一応魔石は残っていたので回収し、先に進んだ。
進むとやはり多くの魔獣との戦闘になってしまった、3~5体程の数で小さな群れで動いているものやメガテリームという8メートルほどの獣形の魔獣にも遭遇したのだが単体であったために僕たち三人からの一斉攻撃で倒したのだった。
そしてジョージにとっての因縁の相手が出てきた。
ジョージが僕に敵が来た事を知らせてくれた。今回はたくさん来るよと言う言葉の通り魔力感知の反応に10体程の反応、そいつらは僕たちを囲うようにふたてに分かれ全方位から攻撃するつもりのようだ。
いやらしいことに程度の低い魔力感知だとギリギリの範囲を移動しているのだ、知能を持った魔獣だと判断し迎え撃つ準備をする。
「レイ、10体の魔獣が囲うように僕らを包囲している、どこからでも対応できるようにして!」
現れたのは緑の大型の猿、そうジョージと同じ種族の戦闘猿だった。
またこいつらは正面の一体だけでまず現れ囮のように叫びながらドラミングをしこちらの注意を引き付けているようだ。
こちらの探知が優れているので、そいつを無視し魔力感知で反応がある方へと魔法で攻撃する。
「土よ、岩の槍にて、敵を穿て、ロックランス」
岩の槍が5つ感知した右側へと飛んでいくと森の奥よりダメージを受けたであろう戦闘猿の苦悶の声が響き渡る。
またレイも左側へ矢を放つ、囮役の一体にはジョージが赤いオーラを纏いまたも弾丸のように突っ込んでいた。
右側の戦闘猿はほぼ行動不能であると判断し左側の戦闘猿へと剣を握りしめ走り出す。レイの矢によって3体が眉間、心臓を貫かれ絶命していたので残りは1体そいつがジョージに向け投石をしていたので飛んでいく石に対し魔法で迎撃。
「土よ、ロックバレット」
土魔法を投石に当て粉々にし、投石してきた戦闘猿へと駆け寄り2発目の投石をさせまいと振り上げた腕を切り落とし、返す刃で首をはねる。
小さな体で大きな猿と殴り合いを演じ最終的にはノックアウト、大の字に倒れた戦闘猿の胸に片足を乗せ右腕を挙げていた。誰に教わったんだ……因縁の相手にも怯むことなく戦闘に勝ったジョージの傷を癒すために水の回復魔法を唱えるがミラーナさんの回復の精霊魔法や師匠の光魔法程の回復はしないので少し困ってしまう。
僕が放ったロックランスで攻撃した右側の5体はいつの間にかレイが止めを指してくれていた。
回収をすべて終え、竜ヶ峰へと向かう。
夜になる頃に僕たちは竜ヶ峰の麓へと到着した、そして夜営をすることとなった。
夜月明かりだけを頼りに歩くのは危険が多いと言うことを加味し明日の朝から竜血樹のある中腹を目指すこととなった。
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