戦闘授業その2
「散開!!」
俺はそう叫んでいた。
その指示に即座に反応し、四人はバラバラな方向へと飛び退いた。
「きゃっ!?」
「ミラーナ!!」
影へと沈んだポデルはミラーナの側へと移動していた。
「影十字架、ジャドースピア」
ミラーナが捕まり影の十字架に磔にされる。
助けにいこうとする俺、アリゼア、ゲニアに影魔法による攻撃魔法の妨害。俺、アリゼアは躱したのだが、ゲニアは大楯で防いだ。
ポデルはまたも影へと沈む。
「グハッ」
「影十字架」
ミラーナと同じようにゲニアまでもが磔にされ、拘束される。
ゲニアが捕らえられたのも盾にてジャドースピアを受けたことでゲニアの影を影魔法が地面に縫い付けたようだった。
仲間を救い出すために、アリゼアがゲニアの元へと駆けたので、俺はミラーナへと向かうが。
「その拘束への攻撃はお薦めしませんよ? 磔にされている者へのダメージになりますからね。」
「アリゼアッ! 止まれ!!」
その声が届くよりも先にアリゼアの攻撃が十字架へと被弾する。
「グガァァァァァ!!」
ゲニアの悲痛な叫び声磔にされている手首や足の拘束が強まりそこから出血が確認できる。
動揺したアリゼアの動きが止まった。
それを見逃すほどポデルも甘くはなかったすでにアリゼアの影から現れる。
「影十字架」
「ガァァ」
「これで三人、ある程度の使い方をヴァンも学べたでしょう。師匠さん最後のお相手お願いしますよ。」
アリゼアまでもが磔にされてしまう、ヴァンパイアとはこれほどまでに強いのかと過去に闘ったマルディシオンが霞む程にヴァンを操り影の魔法を使うポデルは強かった。
けれど俺もここで終わるわけにはいかない、今使えるすべてで対応してやろう。
ポデルへと構え向き直る。
「おや? 覚悟を決めたようですね、その意気やよし。それでは参りましょう!!」
ポデルは手元の影を剣へと変え影へと沈む、即座に俺は自分の影から出てくるポデルから離れるために、『雷纏』の魔力量を一時的に増加し加速、剣の間合いよりも外へと退避するが、剣先が届くのを自らの剣で弾く、ポデルの持っている剣が大剣へと変化していたのだ。
それからも影に沈み接近し攻撃をしてくるポデル、数度の剣戟そして間合いからの離脱を繰り返す。
厄介なのは影の武器がその都度変わるのだ、剣はもちろん槍や斧と様々にそしてランダムに切り替え攻撃をしてくる、極限の集中力で攻撃をさばいていたのだがそれは長くは続かなかった………
『雷纏』の魔力量を増やしたことが原因だ、『雷纏』で肉体を電気による活性化をおこなう、身体強化にさらにドーピングをし施した状態で長時間による戦闘が肉体の限界を迎えつつあった、これも呪いの影響か全盛期であればなにも問題のなかったことだったのだが……
ポデルの剣を弾くことが出来ず、自分の剣が弾かれ吹き飛ばされる。
「さすが師匠さん。よく耐えました、期待以上に戦闘をすることができましたのでこのあとの予定をお伝えしましょう。」
ポデルはパチパチと手を叩き拍手しながらそんなことを言っている。
「師匠さんも他の方々と同じように、影十字架で磔にした後に、影従にて今後は私のために働いてもらいますよ!! クフフフ、ではフィナーレといきましょう!!」
影に沈むポデル、四人でも歯が立ちなかったかと目をつぶるその時。
「ウキー!!(ばーん!!)」
ジョージの叫び声、呼んでいたかはわからないが俺にはヴァンを呼ぶように聞こえた。
その声が届いたのだろう、沈むポデルに変化が訪れる、ヴァンの形に纏われていた影が乱れる。
「グッ!? この期に及んで、まだ抵抗しますか……ガッ……殺しはしないと言ったじゃないですか?」
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僕は自分の中からこの戦いを見せられていた、影の使い方も使えば使うほど体が理解していくことも……
ジョージとレイが影檻に閉じ込められ、ミラーナさんが、アリゼアさんもゲニアさんまでもが磔にされてしまっている。
そして師匠が最後の最後まで抵抗し僕を助け出そうとしてくれている、誰かを傷つけるために力を必要とした訳じゃない……生きるためにそして困った人が居たら助けるために力をつけたはずなのに……
自分の魔法に血にいいようにされていいわけがない!!
どうにか『影纏』を剥がすんだ。
「(ばーん!!)」というジョージの叫び声、共に戦うことを誓った相棒、そして気がつくジョージと繋がりが繋がっていることを。
「ジョージ、力を貸して!!」
思い出されるは影従の詠唱、汝君主の影となり、影は離れず付き従う存在、我と伴に。
通常であれば詠唱の最後が我に従えなのだが主従の関係よりも伴に歩む相棒としてを願った事がこのジョージとの繋がりとなったのだろう。
ジョージからパスを通して魔力が送られてくる。
その魔力を元に魔力を高める、初めて魔法を使えるとワクワクしてぶっ倒れたあの時のように過剰に込め、魔力放出!!
「うおおおおおおぉおぉぉぉ!!」
僕の体から影が剥がれる、魔力による内側からの魔力暴走に近い常態でようやく、『影纏』から解放される。
これで終わりかと思われたが、僕から剥がれた影は離れたところで過剰に込めた魔力を糧に人形へと戻る。
「まさか、そのような方法で、解除するとは思いませんでした。それでも魔力枯渇により動くこともままならないのではないですか?」
「うるさい!! みんなを解放しろ!!」
影のポデルに言われたことは確かに魔力枯渇により立っているのもやっとで何ができるのかと言われれば、足手まといでしかないだろう、それでもお世話になった人が苦しむ姿は見たくない。
「クフフフ、強がりもそこまでですよ、あとは師匠さんだけですから、すぐに終わります、それにこの体も長くは持たないでしょう、魔力量分しか活動できなさそうですからね。」
何か方法はないのか……
師匠を見るも『雷纏』の代償なのか肩で息をしている。
何かないのか……
何か………
右手が暖かいことにそしてふらふらだった足腰が徐々にだが緩和されている。ことに気がつく右手の甲を見れば三日月のマークが光っている。
ジョージを見ると影檻をこじ開けようと、そして体全体が光を放っていた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
時間を見つけては書いているのですがなかなかまとまった時間がとれず不定期の更新となっています。




