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師匠の弟子として

 8年前の師匠のパーティー殲滅の獣がなぜ解散したのか、その経緯を知ることができた。

 その戦いで呪いを受けてしまっていることを知ることができた。


「こんなことがあったんだ、それで仲間たちは俺の為にパーティーが解散して各地で色々と調べたりとしてくれていたということなんだ。 見るか? その痣を。」


 師匠はおもむろに上着を脱ぐと、左の胸、心臓のある部分に痣が出来ていた。掌ほどの大きさのその痣は赤紫色で肌の色とはあきからかに違うのでとても目立つ。

 この家に来てから師匠が服を脱いだ場面を見たことがないことに今更ながら気がついたのだった。


「受けたと当初は拳よりも小さいものだったんだがな、だんだんと広がって来てるんだ、あの月蝕の日以降は広がるペースが速くなってると思うな。感覚でしかないがな……」


「師匠その呪いを解く方法はないのですか?」


「今いるメンバーの話も聞いただろ? この呪いの手かがりは見つかってない、ましてや呪魔法なんて今まで聞いたこともない魔法だったんだ。」


「オババさんに師匠の生きる未来を見てもらってそこから、何か手がかりを!!」


 ふるふると師匠は横に首を振った。


「オババにはこの痣の事を話していなかった、それなのにヴァンに話をしなくていいのかと、殲滅の獣しか知らなかった呪いの事を言ってきた事があったんだ、あのオババなら治る未来を見れてればお節介で話してきてたはずさ。」


「これから取りに行く竜血樹でもなんとからないんですか?」


「マークがここに住んどるんは竜血樹の採取ができるようにするためじゃけん。」


「この呪いに効果があるかはわかっていない、竜血樹には未だに解明されていない効果があるんだ、そのために採取へ行きやすいここに家を建てて定期的に竜ヶ峰に行ってるんだ。」


 辺境の地、それも魔獣の危険度も高いペリグロの森に住む師匠の理由だったのだ。


「だったら僕のために時間を使うより、師匠の体の為に探す時間にあてるほうがいいじゃないですか!」


「ヴァン、それは違うぞ、俺の命は2年かもしれない、もっと早く死んでしまうかもしれない、でもなあの時からこの世界に俺の技術を、いままで培ってきた魔法を闘い方を継いでくれるやつを探してたのもある、俺が死んだ時にあいつが復活して、あいつが言っていた用にこの世界の人たちを支配するなんてことになってみろ、絶対に俺は後悔する。」


 師匠は僕の事を見つめてそれからジョージに視線を向ける。


「そんななか現れたのが渡り人のヴァンに人の話を理解する魔獣のジョージだ。ここの現地のやつらは俺の技術を学ぼうとはするが、真剣さがどこか足りないんだ、雷騰に教えてもらった記念みたいな感覚のやつらがほとんどだった。それがお前たちは生きるために必要だからという理由があったとしてもその努力を一切妥協せず、勤勉に続ける、そして俺の想像を越えて成長するし、驚きをいつも持ってくる、余生が短いなら刺激ある今の生活を俺は選ぶさ。」


 こう言われてしまっては反論できなかった、勤勉にというのは日本人というこの世界に渡る前の記憶が影響しているのかもしれないが、生きるために必死だったと言うこともある、なにより寝たきりだった過去があるからこそ修行で強くなるということが嬉しくて仕方ないと僕自身が思っている。


「まぁそういうことだ、俺のすべてをお前たちに伝えるために今できることをやるんだ、この呪いのことは仲間に任せてる、治す方法が決して無かったとしても俺は後悔しない、やれることをする、今なら『魔纏』だな。」


「……わかりました……。」


「大分話が長くなったが、明日、もう今日か寝てしっかりと動けるようにするんだ、大分遅い時間だ皆も狭い家だがゆっくりしていってくれ。」


 師匠はこの話は終わりだとお開きにするようだ、弟子として師匠の意志を受け継ぐ、そのために必要なことをするのが師匠のためということだろうか?

 少し言いくるめられたようにも感じるが、ジョージを連れて自室へと戻り寝ることにする。


 それぞれが空いている部屋へと行き、師匠の過去を巡る話が終了するのだった。



 部屋に戻ってからもなかなか寝付けなかった。


「ばん、おきてる? じょーじ、どうしたらいい?」


 ジョージも同じように考えていたようで答えを探しているようだ。魔獣であるのにも関わらず、人のために考えるとはなんとも人間らしいことだろうか。

 他人の不幸を自分のことのようにこうやって悩んでいる姿がとても誇らしく思ってしまった。


「起きてるよ、質問を質問で返すんだけど、ジョージはどうしたらいいと思う?」


「うーん………、じょーじは、おししょー、えがお、したい。」


 難しいことを考えず今の気持ちをストレートに表現したのだろう。笑顔にしたいか……、それを叶えるなら後悔しないように師匠の気持ちを受け止めるためにも悲しむよりも師匠の生きた証を残す方がいいんじゃないだろうか? それができるのは僕たち弟子の勤めじゃないだろうか?


「そうだね、僕も師匠には笑顔でいてもらいたいな。強くなることが師匠を笑顔にできる方法かもしれないね。」


「じょーじ、つよくなる!!」


「僕も強くならなくちゃ、そのためにも寝ようか? おやすみジョージ。」


 布団をかぶりいつもの寝る体制になったジョージは安心したのか、数分もしないうちに寝息が聞こえてきた。

 僕も寝よう。まずは『影纏』それをしっかりとものにするんだ!!



 翌朝いつもより遅い時間に起床し人数分の朝食を作る、途中でレイが起きてきて手伝ってくれた。

 ゲニアさんは早起きで外から帰ってきた、この森でとれる果物を少しばかり取ってきたようだ。

 いつものごとくアリゼアさんは起こしに行く、ついでにジョージも。


 いつもならこの段階で師匠が降りてくるんだけど、起きてこないので起こしに行く。


「師匠~、朝ご飯できましたよ。」


 中からガサゴソと慌てたような音がなったので出てくるだろうとすると出てきたのはミラーナさん…………えっ!?


「すぐ行くから先に食べてていいわ。」


「え……あ、わかりました。」


 深くは考えない、下の階に降りて朝食を済ませて、今日も修行の始まりだ。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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