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6話 ロリ店主と武具店

「うぅん……っ」


 早朝――


 小さく身じろぎしながら、ユウが目を覚ます。そんな彼の左右から「「ふふっ……」」と、妖艶な声が聞こえてくる。


 それを聞き、ユウの意識が急速に覚醒する。目を開けると、そこにはエルフとダークエルフの美少女が優しい笑みを浮かべながら彼のことを見つめていた。


「おはよう、ご主人様っ♡」

「寝顔、とっても可愛かったです。昨夜の蕩けた表情とは別の愛らしさです……ふふっ♡」


 アリスとリリスはそんなセリフを言いながら、ユウに密着してくる。二人の柔らかさに包まれ、そしてリリスのセリフで、昨夜二人に教えてもらった〝あんな出来事〟や〝こんな出来事〟を思い出し、ユウは恥ずかしさのあまり「あぅ……」と俯いて声を漏らしてしまう。


「ふふっ……昨日の夜のこと、思い出しちゃったんだね、ご主人様……ちゅっ――」

「恥ずかしがるご主人様も可愛いです……んちゅっ――」


 顔を赤らめ、俯くユウに股か――もとい、胸をキュンキュンさせながら、アリスとリリスが彼の頬に軽くキスをプレゼントする。


 ユウは恥ずかしさを覚えるとともに、不思議な感覚を味わっていた。昨夜……二人の誘惑でアレだけ恥ずかしいことをしたというのに気まずくなるどころか、どこか二人に安心感を覚えていたのだ。


 お互いの恥ずかしいところや、心を明かしたことで絆のようなものが生まれた……のだが、幼いユウは感覚的にしかそれを理解できないのだ。


 だが、これだけはわかる。ユウにとって、アリスとリリスの二人は、保護対象から大切な存在へと変わったのだと……。


「さぁ、ご主人様っ。食堂に行ってご飯を食べよう

?」

「そうですね、今日から討伐者のお仕事を始めるのです。しっかり精をつけましょう」

「うん、そうだね。アリス、リリス」


 二人の言葉に頷きながら、ユウは身支度を始める。その際にお着替えの手伝いなどと、アリスとリリスが言い出し、着替えさせっこからのイチャイチャが始まってしまったり、そのままベッドに逆戻り……なんてことも起きてしまい、早朝に起きた意味はあまりなくなってしまった……。


 小一時間後――


 一階の食堂へと降りてきたユウたち。三人が階段から降りてくる姿を見ると、食事をしていた客たちの視線が一気に集まる。


 男たちはニヤニヤとした笑みを浮かべ、女たちは顔を赤らめながらチラチラと視線を送っている。


 何やら「あんな小さなガキがエルフの上玉二人も相手にしてたのか、チクショウ……!」なんてセリフや、「あんなに可愛い男の娘を……いいなぁ……」などという声が聞こえてくる。


 幼いユウはよく意味がわからなくて、頭の上に〝?〟を浮かべながら首を傾げているのだが……そんな初心なユウの反応に、アリスとリリス、それに女性客や給仕の娘は萌え悶えるのだった。


 何やら給仕の娘は「私もアリスさんたちみたいに蜂蜜酒(ミード)を使えばワンチャンあるかな……?」などとブツブツ言っているのだが……ユウには聞こえていないのであった。


 客たちの視線の中、ユウたちは食べさせあいっこなどしてイチャイチャしながら、楽しい朝食の時間を過ごすのだった。


「ご主人様、ここにしましょう」


 食事を終えて少し――


 ユウたちは都市の商業区へとやってきた。その通りの一つで、リリスがとある店を指差しながらユウに話しかける。


 店のショーウィンドウには剣や槍が飾りつけられている。そうここは武具店だ。討伐者としての仕事を始める前に、彼女たちの武器や防具を揃えにきたのだ。

ユウが頷くと、リリスが店のドアを開け最初に入っていく。……ちなみに、アリスはユウに腕の自分の腕を絡め幸せそうな表情を浮かべている。


リリスとは双子であるとはいえ姉だというのに……どうやら妹のリリスの方がしっかり者のようだ。


「いらっしゃいっ!」


 三人が店に入ると、威勢のいい……幼い少女のような声が聞こえてきた。声のした方に目を向けると、そこにはやはり幼い見た目の少女が立っていた。


「……?」


 少女を見て、ユウが不思議そうな表情を浮かべる。少女の見た目は十歳前後といったところ。なぜこのような女の子が武具店に一人きりなのだろうかと……。


「はは! お客さん、大丈夫だよ。アタイはもう立派に成人した〝ドワーフ〟だからね! 名前は〝ミリー〟。ここで店主と鍛冶士を兼任してんだ」


 ユウの不思議そうな視線を見ると、少女――否、ミリーは軽く笑いながらそう言って自己紹介をしてくる。


 ユウは、(ドワーフって、〝あの〟ドワーフかな? 神話とかゲームに出てくる……いや、エルフのアリスやリリスもいるし不思議じゃないか……)と疑問を覚えつつも、目の前のミリーの存在に納得するのだった。


「ぼくはユウといいます。二人はアリスとリリス、彼女たちの武具を揃えにきました」

「ユウにアリス、それにリリスだね。よろしく。二人はどんなモノをご所望なんだい?」


 しっかりと自己紹介するユウに好感を持ったのか、ミリーは優しい笑みを浮かべながら要件を聞く。

 それに対し、アリスは「ご主人様、私は大弓がほしいの!」と言い、リリスは「私はポールウェポン……できればハルバードがあると嬉しいです」とそれぞれの得物を所望する。


 どうやらアリスは後衛職、リリスは前衛職ということらしい。


(これは……もしかしてバランスのいいチームになる……のかな?)


 二人がミリーに武器のコーナーに案内されるのを見ながら、ユウはぼんやりとそんなことを考える。


 二人が前衛と後衛にキレイに役割分担されているのであれば、そしてそこに【アロンダイト】や【グラム】といった、中距離を得意とする錬成武器を使いこなすユウが加われば、二人をうまくサポートできるのではないか……という考えだ。


「ユウ、アンタはどうすんだい?」

「ぼくは固有スキルがあるので武器は大丈夫です」

「固有スキル!? ……そんな可愛らしい見た目で、すごい力を持ってんだね……」


 ユウの答えに、ミリーは仰天といった様子で声を漏らす。


 この世界――あるいはこの地域に錬成術は知られていないらしい。なので、ユウは自分の力のことを固有スキルと説明することにしたのだ。


 そうすれば、多少悪目立ちしてもそこまで面倒なことには巻き込まれないだろうと判断したからだ。


「まぁ、それなら下手な武器は必要ないかもね。けど、身を守るために防具は必要だろ?」

「ミリーさん、確かにそうですね。アリスとリリスの分と一緒にお願いできますか?」

「あいよ! ピッタリなやつを用意してやるから任しときな!」


 ドン! と自分の胸を叩き応えるミリー。


 森の中でのサバイバル生活で、ユウは何度も命の危機に瀕した。ロクな防具も身に付けているはずもなかったので、敵の攻撃は全て躱さなければならなかった。


 しかしマトモな防具があれば、例え敵の接近を許す事態になっても、致命傷を負うリスクを減らすことができるだろう。


 ミリーの説明を聞きながら、買い物は順調に進んでいく。


 アリスは武器に弓を、防具に動きやすさを重視した少し露出の多い革製のホットパンツやジャケットを。


 リリスは武器にハルバードを、そしてこちらも動きやすさ、それに防御力を重視したアリス同様に露出が多めの金属製の軽鎧を購入した。


 メイド姿も可愛らしく、美しかった二人だが、こうして討伐者としての衣装に身を包むと格好良さ、それにメイド服とは違った美しさで眩しく見える。


 アリスとリリスに衣装の感想を求められ、ユウは素直に「キレイだよ」と、感想を述べると、二人はパッと表情を輝かせ、嬉しさのあまりエルフ耳をピコピコと上下させる。


「でも、ご主人様の討伐者衣装も可愛いよ〜♡」

「今すぐ食べてしまいたいくらいです……♡」


 アリスとリリスが、蕩けた表情でユウを見つめる。

 ユウは、革製の軽鎧と金属の胸当てを購入することにした。


小さくて可愛い男の子が、討伐者として本格的な衣装を着ているギャップがたまらないのだ。


 それはさておき。


 まとめての買い物だったので、通常の価格よりもミリーがまけてくれることになり、多少なりとも出費を抑えることができた。


 ユウたちは他にもいくつかの店に寄り、必要なものを購入すると、何か良い依頼がないか確認するためにギルドに向かうのだった。

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