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3話 ドSなお姉さんと魔弾

 振り返ると、そこには少し露出の高い鎧を身につけ、藍色の髪後ろで結んだ少女が、凛とした表情でユウを見つめていた。歳はアリスたちと同じくらいだろうか。


「えっと……あなたは? それに何で僕と戦いたがるんですか?」

「私の名は〝ユキノ〟、Cランク討伐者だ。君と戦いたい理由は……単純に君の強さに興味があるからだ」


 ユウの質問に、少女――ユキノはペロリと舌舐めずりをして答える。その表情を見た瞬間、ユウの背筋にゾッとしたものが走り抜ける。ユキノの表情がとんでもなく嗜虐的に染まっていたからだ。


「悪い話ではないぞ、少年。私に勝てば特典があるからな」


 ユウが思わず黙り込んでいるとユキノがそんなことを言い出す。ユウは怪訝な顔で「特典……ですか?」と尋ねる。


「ふむ、試験制度を知らないのか、ということはランクのことも知らないのだろう。いいだろう教えてやる。試験制度というのはな……」


 そう言って、ユキノは説明を始めた。


 討伐者にはランクというものが存在する。ランクは下からG〜Sの八つのランクに分かれ、ランクによって、受けられる討伐依頼に制限がある。ランクが高ければ高いほど、危険だが高い報酬の得られる依頼を受けることができるといった具合だ。


 そして試験制度という言葉だが……討伐者はギルドに登録する時に、ギルドによって試験官とみなされた討伐者相手と戦い適性を見てもらうかどうか、選ぶことができる。


 試験を受けなかった場合は最下位であるGランクから始めることになるが、試験官との対戦試験を受け実力を認められれば上のランクから始めることができるという。


 ちなみに、ランクの内訳だが……それはまたの機会とすることにしよう。


(これは……受けるしかない、よね?)


 ユウはとにかく金を稼がなければならない。この申し出は是が非でも受けるべきだ。そんなわけで「では試験をよろしくお願いします」とユキノに頭を下げるのだ。


「ふふっ、ご主人様なら楽勝だよね!」

「そうですね、あんなに強いんですから……!」


 横で話を聞いていたアリスとリリスは余裕顔だ。自分たちの主人であるユウの強さを信じ切っている様子だ。


「それではギルドの裏庭に移るとしよう、そこで試験を始めようじゃないか!」

「はい! よろしくお願いします!」


 ユキノの後についていくユウ。それを慌てて受付嬢が追いかける。どうやら彼女が試験を見届けるらしい。


 ユキノの後をついていくユウを、他の討伐者たちは皆哀れんだ瞳で見つめていたのが……ユウやアリス、リリスはそのことに気づかない。


「……では、試合を始めてください」


 一瞬、ユウを可哀想なものを見るような目で見つめてから、受付嬢が試験開始の合図を告げる。


 試験の形式は簡単だ。お互い好きなように攻撃を仕掛け、試験官が挑戦者の力を測る。というものだ。


「くくく……ふふふふ……っ」


 試合開始を受付嬢が告げたその瞬間だった。今まで凛とした雰囲気で佇んでいたユキノがクスクスと笑い始めた。


 ユウはビックリしながらも「ユキノ……さん?」と声をかける。対しユキノは――


「ユウちゃん、私はなぁ……君みたいな可愛い男の子が大好きなんだ。そして夢見てたんだ、いつか君みたいな幼い少年を虐めてみたい……ってな」


 ――そんな言葉をもって、ユウに答えた。


 ユウは思わず「ひ……ッ」と小さな悲鳴を漏らしてしまう。


 ユキノは男をいたぶることに快感を見出す異常性癖者だった。屈強な男を相手に卑屈になるまで痛めつける……それが楽しかった。

 だからこそギルドの試験官などになり、討伐者志望の男どもをいたぶる日々を送っていた。


 しかし、彼女の欲望は満たされなかった。それは今彼女が口にした通り、彼女の趣向が幼い少年に向いているというのが理由だった。


 いつか幼く可愛い……それでいてある程度の強さを持つ少年を痛ぶって屈服させたい――そんな想いに馳せていた時に現れたのがユウだった。


 嗜虐的な……そして妖艶な笑みを浮かべながら、ユキノは腰から剣を抜く。一応試験用に刃引きされたものではあるが……それでも当たればダメージはある。


 ダッ! と、ユキノが駆け出した。剣を片手で構えユウに猛スピードで迫ってくる。


「ア、【アロンダイト】ッ!」


 わずかに遅れてユウが魔素から四本の【アロンダイト】を錬成する。ユキノに合わせ、こちらも刃引きした状態のもので錬成した。


 突如とした宙に現れた白銀の剣に、ユキノは目を見開いてその場でピタリと足を止める。どうやらかなり驚いたようだ。


 それもそのはず、ユウは彼女が油断するように、あえて自分も模擬戦用の剣を用意してもらっていたのだから……。

 それにより、ユキノはユウが剣を使うタイプの戦闘者だと思い込んだ。だが、ユウは腰の剣を使うどころか宙に剣を呼び出した。驚くのも当然だ。


「いけッ!」


 ユウが鋭く叫んで【アロンダイト】を制御する。白銀の刃が、一斉にユキノに襲いかかる。


「速い! 魔法スキルか!? だが――」


 宙に浮いた剣が襲いかかってくる……突然の出来事に狼狽した様子を見せるユキノ。しかし、彼女は【アロンダイト】の動きを見切ってしまった。


 ギリギリのタイミングではあるが、襲いかかる四つの刃をステップで躱し、再びユウに接近を開始する。


「そんな!」

「ご主人様の攻撃を躱した……!?」


 アリスとリリスが驚きの声を上げる。そしてすぐに視線をユウへと移す。このままでは大切なご主人様が……! 二人ともそんな危機感を覚えてしまう。


「来い! 【グラム】……ッ!」


 接近するユキノを前に、ユウは慌てて次の錬成術を発動させるべく魔素の変換を始める。

 そして次の瞬間――「もらった!」と、剣を振り上げるユキノ…………の腹を、ドパンッッ! という炸裂音とともに衝撃が襲った。


「ぐっ……ぁッ!?」


 突然の激痛に、ユキノは剣を持つのとは反対の手で腹を押さえ、数歩後退する。そしてユウの手――その中に握られたモノを見て困惑した表情を浮かべる。


(〝錬成銃〟――練習してて正解だったな……)


 ユキノの動向に注視しながら、ユウは思う。


 彼の手の中には白銀に輝く〝銃〟が握られていた。錬成銃【グラム】――森でのサバイバル生活の中で、ユウが開発した新たな錬成武器だ。


 森の中には【アロンダイト】を避けてしまう魔物も存在した。そんな魔物に対応すべく、ユウは銃型の錬成武器の考案をした。


 魔素で特殊なギミックを搭載した銃を錬成し、大気に溢れる魔素をエネルギー弾として弾倉に装填し、引き金を引くことで発射するという武器だ。


 ちなみに、こちらも殺傷能力は下げてあり、衝撃だけがダメージとして伝わるようにしてあるので、ユキノは出血すらしていない。


「く……何を、した……っ!?」


 相当な激痛を受けたはずだというのに、ユキノは剣を振り上げ、ユウに攻撃を仕掛けてくる。


 鬼気迫るその様子に、ユウは冷や汗を流しながら、再び【グラム】の引き金を引き絞る。魔素でできたエネルギー弾――魔弾が、ユキノの額に炸裂音を立てて直撃し……その意識を奪い去った。


「ユ、ユキノさんに勝っちゃうなんて……」


 呆然とした様子で、受付嬢が言葉を漏らした。いつの間にか冒険者が集まっていたようだが、彼らも呆然とするか驚きを露わにしている。


 そんな中――


「すごい! すごいよ、ご主人様〜〜っ!」

「さすがです! まさか他にも戦う術を持っていたなんて……!」


 ――アリスとリリスが興奮した様子で、ユウの元に駆け寄ってくる。そして左右から彼の顔を、むにゅん! と豊満バストで挟み込んでしまった。身長差があるのがいけなかった。二人の胸の中に強制メロンダイブ状態である。


 柔らかさと甘い匂いの中で、ユウは「んむぅ〜!?」とくぐもった声を漏らすのだった。

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