航空機
学園から少し離れたところまでヴァランクスで移動する。今回は俺が運転なのですわ。
学園に来るのにも使ったこの車両だが、IEDと呼ばれる手造り爆弾に対抗するためにかなり堅牢な装甲をした4輪車だ、
ゴッテゴテに固めたSUVを想像してくれればいい。
俺とアデリーナ、そして寮から荷物を持ってきてくれたアンの三人が乗っている。
「お、オークだ。」
二体いますねー。
うん
「どーん。」
ドグチャッ!ドチュグチュっ。
ボンネットから凄まじい衝撃が来てフロントガラスに血糊が付着する。サスペンションが上下するのは、肉片ふんずけてるなこれ。
ロードキルは楽でいい。
柔らかいオークの肉じゃあ、時速50キロで走る6トンクラスの装甲車両は止められんよね。
あ、窓が見えねぇ。ワイパーオンっと。
窓に付いたオークの肉片とか血が掃除されて行く、くさったトマトをぶつけたかのようだ。
「マジェスティ、とんでもない笑顔をしてらっしゃいますが。」
え?マジでか?アン。
あ、たぶんほんとうだわこれ。ナビシートのアディがとんでもないものを見る目でこちらを見ているもの。
「細かいことは気にするな。OK?」
二人ともうなずいたので話しは終わりだ。いいね。
「とりあえず合流ポイントでC17が待ってるからそこまで行くぞ。」
イタリカまでは近くの基地から回してもらった輸送機で行って、そこで部隊と合流する予定です。
以降特に目だったこともなく、広目の草原に到達、600メートルくらい先に大型輸送機の巨体が見えてくる。
後部のタラップが展開しているのでそこからアプローチして機内へと車を滑り込ませた。
「入ったぞ、出してくれ。」
合図を出して発進を促す。
「こちら輸送軍所属C17。司令官、並びにお客人、ゆっくりと空の旅を楽しんでください。
では、離陸します。」
ジェットの心地よい音がケツから伝わってくる。
しばらくしたら体が浮くような感覚があり、窓を見ると地面が遠のくのがわかる。
ゆっくり、ねぇ。
そんなこと言われてもアデリーナちゃんは
「と、とんでる………わたしたち、とんでる。」
チワワ並みに震えてらっしゃいますが。
まぁ初飛行だからなぁ。吐いたりしないように酔い止め渡しとくか。
「一時間くらいの旅になる、着いたら起こしてやるから寝てていいぞ。」
リアーナさんの優しさスイッチon
寝てるときに吐いてチアノーゼになったら救命措置くらいはしてやる。
「え、えぇ。
……………え?一時間!?」
ん?どした?
「早すぎない?国を跨ぐのよ?」
ん、あぁ。
「こいつはドラゴンくらいの速度が出る。世界の裏側まで12時間ちょい、隣の国なんてすぐだよ。」
俺の説明に彼女は完全なる無表情となる。なにその不思議なリアクション。
「もう何があっても驚かな………」
そこまで言ったところで
ドゴォォォォ!!
と爆発的な音が外から聞こえてくる。
「ひっ!!なに、なに!!?」
アディ、さっき驚かないって言ったばっかなのに。早いよ。
護衛として合流したF16Eデザート・ファイティングファルコンの4機編隊。
コンフォーマル燃料タンクを搭載可能、最新鋭のフェーズドアレイレーダーを装備し、アビオニクスもF35クラスのものに換装してある。HMDと高機動ミサイルの組み合わせで真横にも攻撃可能だ。
最強のF16と言っても過言ではない、これからのうちの空軍の数的主力を担うことになる機体だ。
今一番多いのはこの数段階前のブロック40と呼ばれるファイティングファルコンだが、順次改修、更新している。
まぁ、アデリーナ氏に簡単に説明しとくか
「うちの軍の………竜騎士の代わりみたいなもんだ。
速度は音の二倍まで出て戦闘能力的にはあいつ一体でワイバーン8から10は楽勝で落とせる、今回の護衛だよ。」
おっ、無言になったぞ。
さきほどよりさらに表情がなくなった。
「こちら第18航空団E767、タイタン20からHQC。王都方面軍 空軍 第534戦闘飛行団より戦闘機部隊をエスコートに寄越した。コールサインはアリアス15から18、アリアス隊だ。」
戦闘機部隊を管制するE767から通信が飛んでくる。
第534飛行団戦闘郡“アリアス隊“は今俺たちの横を飛んでいるF16が所属する部隊だ。
「合流確認。十分な戦力だ。ありがとう。」
アリアス隊か…………前からファイティングファルコンに乗ってた戦闘機隊だな。頼りにしているよ。
「これで道中は安心だ。しばらくのんびりしようか。」
約一時間、ちょっとは眠れるかね。