マフィアのおしごと
俺は指定したポイントでタスマニアの重鎮たちが来るのをゆったりと待っていた。
「あ、この紅茶うまい。」
ホカホカと湯気を立てるダージリンティーを啜りながら、通信を行う。
「マジェスティ、アンでございます。あと数分で到着いたしますのでご用意ください。」
要人護衛のために迎えの使者に任命したアンからの報告だ。あと数分でこちらに到着するらしい。
「copy 頼むぞ、アン。アウト」
激励を残して通信機を切る。
直後、またもや着信がくる。んむ?連続だな。
「ローゼア帝国内秘匿拠点からHQC。
こちらの部隊が状況完了、荷物は目標地点に届けられた。繰り返す、荷物は目標地点に届けられた。」
おっ?帝国に潜ませてる特殊部隊からだ。
たしか彼らにはハンプティーダンプティーのUH60ヘリと共同作戦を頼んでたはずだ。
内容はアンが殺した帝国工作員の生首をそいつの所属部隊に届ける宅配便。
状況完了、つまりそれが成功したってことは
「こちら王国東部軍、ミネルヴァ《警戒監視部隊》より国境近くに帝国軍部隊の集結を確認したとの報告あり。」
東部、つまりは帝国側の国境を管轄に納める統合軍より帝国軍の集結が知らされてきた。
よし、ビンゴ。これで大義名分ありで大国足るローゼアをぶん殴れる。
タスマニアと、ローゼア。
この二国はこの大陸における双璧を成す大国である。
この二国に条約を飲ませることの影響は計り知れない。ましてやそれが軍事力で優越したと示した上での事であれば。
タスマニアはすでに陥落しているので、あとは帝国をぶちのめすことがたいせつです。
っと、そろそろ王様が着くな。
俺は空母の飛行甲板に設置したお茶のためのテーブルセットを撤収し始めた。
ここが、今日王様たちとの調印式の会場。
空母の、戦闘機が並んだ甲板の上で条約にサインをもらうのだ。
「なめられてはいけない。政治に関わる人間は社会に認められたマフィアだ。やることは同じさ。」
シマを抗争や取引きで守り、シノギで金を得る。
みかじめ料を取る代わりに秩序を担保する。
時には逆らう奴等との抗争で担保したはずの治安も吹っ飛ぶのはご愛敬。
掟に従わないやつには制裁を下す。
ね?同じでしょ?
だから、政治というのはマフィアの仕事と同じく、嘗められないことが肝要なのだ。
そのために威嚇し制裁しぶちのめし焦土にする。
すごくシンプル。
だから、まぁ俺はそれをやる。
今回の空母での調印式もそのためだ。この鋼鉄の巨艦を見せて箔を付ける、ナメられないために。
実力を示すための演出の仕込みもバッチリ。
さて………………王様はどれだけビビってくれるかね?
ヘリが見えてくる。もう少しで王の驚く顔が見れると思うと楽しみでたまらんね。