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帝国

王国で調印式が行われようとするまさにそのとき、その隣にあるローゼア帝国皇宮では二人の男が話し込んでいた。


「我が軍師が提案したタスマニアと新興勢力を仲違いさせる策はどうなっている?」


玉座に座る白髭を蓄えた老人はこの国の絶対的な権力者である皇帝、ウラジミル=バスコヴイッチ


「本日決行となっております。かの国の辺境伯が立ち上げたと言われる新興勢力はタスマニアから敵対されたと思い込み、厄介なあの王国に攻撃を加えてくれることでありましょう。」


応えるは、この国の摂政を勤める壮年の男。

ラーザリ=スマノフ


二人は軍師が計画した、リアーナと王国を決裂させる策について話し合っていた。もっとも、彼らの認識としては彼の軍勢をたかだか15の令嬢が率いているなど思ってもおらず、その父親足る辺境伯のものだと勘違いしているのだが。


ともかく、彼らは自らの謀略の成功を信じて疑わないといった風情である。


そこに現れる影がひとつ。

不自然さを感じさせずに現れたその者は、皇帝直属の諜報や工作を行う所謂“暗部“である。


「む?報告か。早いな。」


影は皇帝に耳打ちし、すぐさま姿を消す。

その内容は、皇帝の顔を真っ赤に染めた。


「失敗…………だとっ。」


報告によると、耳を破るかのような轟音の直後、彼らの拠点にあるものが届けられたと言う。

それは、大きな布(パラシュート)とロープで繋がれた箱。

入っていたものは、生首。


今日決行される策を成すため王国に潜ませていた精鋭工作員の生首であったのだ。


―――――ちなみにこれはアンから襲撃の報告を受けたリアーナの判断である。


これは、三つのことを示唆していた。


(生首)の所属していた国も部隊も完璧に割れているということ。

秘匿されているはずの皇帝直属の諜報工作部隊の存在も、それどころか所在まであちらに知られているということ。

そして…………新興勢力に王国を攻撃させる策は完全に失敗したということ。


なぜここまでリアーナたちにばれていたかと言えばそもそもはアンが工作員の正体に気付いたこと。

さらにはそれをもととして壁越しに囁き声を拾える集音センサーや屋内の動物の反応を察知できる1~10ギガヘルツクラス生体センサーを装備した偵察部隊と諜報部隊が裏を取ったこと。

高解像度カメラにより地表面の様子を余さず拾える偵察衛星や前述のセンサー類を備えた無人機によるデータ収集が行われたことなどの集積であり、わからないほうがおかしいのだが。



とはいえそんなことを知るよしもない帝国のほうからしてみれば、状況は最悪である。

ただ失敗したならまだしも、今回の件の黒幕が自分達であるということまで知られているなど。

報復が来る、そう判断した皇帝はすぐさま自国の将軍を呼びだし、国境近くの防備を固めさせた。


実はリアーナが生首を送りつけたのはこれが狙いであり、帝国が国境に兵力を集めたことについて

「王国への大規模進行を目論んでいるゆえのことである。防衛のために反攻する。」

と言い張り見せかけではあれど大義を得た上で帝国軍を潰すための謀略であったりするのだが、彼らはまんまとそれにはまった形である。









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